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転移、冒険

--------------------------------プロローグ--------------------------------

俺の名前は薄出うすで 遊真ゆうま

28歳、社畜まっしぐらの日々。

仕事と家の往復、休日も仕事のことを考え、気づけば一年が終わっている。

特にドラマチックなこともなく、俺の人生は淡々と続く……はずだった。


「申し訳ありませんが……余命は、もう長くありません。」


……は?眼の前の医者の言うことが理解出来ない。


「冗談……ですよね?」


いや、さすがにこれは笑えない。だって、俺、まだ何もしてないんだぞ? 会社に振り回され、気づけば死んでました——そんなのはイヤだ。



___数カ月後。

「ああ、俺の人生ってなんだったんだ……?」


視界がどんどん暗くなっていく。まるで舞台の幕が静かに降りるように。


あぁ……クソッ……。


--------------------------------神との対話--------------------------------


目を開けると、そこは一面真っ白な空間だった。


「おめでとうございまーす!あなたは転生の機会を得ましたー!」


賑やかに響く声。目の前には、神々しい雰囲気を漂わせる女性——いや、神様? そんなオーラを放っている。


「私はこの世界の管理者です。あなたは若くして亡くなりましたが、特別に転生の機会を与えましょう。」


いやいや、ちょっと待て。あまりにも唐突すぎないか? こんな都合のいい話があるか?


「そして!転生に際し、特別な能力を授けましょう。何か希望はありますか?」


これは……ついに俺にもチート能力ゲットのチャンス!? いや、でもここで焦って変なものを選ぶと——


「あ、すいません……諸事情で忙しなくて……できれば早めに選んでもらえると……あ」


突然、空間全体が振動し始めた。え、なになに? 俺、何もしてないぞ!?


「現在、あなたの時間感覚で五十万年に一度の上位存在のVISIT中でして……」


白い空間に亀裂が走り、向こう側から何かが覗いている。


圧倒的な存在感、そして神様の焦り具合……これ、やばいやつでは?


「あ…すいません!すぐ終わらせちゃいますー!」


上位存在に向けて神様が応答する。

神様が焦りながら、ものすごいスピードで手を動かす。


「……能力付与は……これで……」


その瞬間——


「……あ」


神様がフリーズした。


「えーと……行ってらっしゃい…!!」


不吉な予感しかしない。


「不自由はしないと思いますので(ニコッ」


ちょっ、待っ——


俺の意識は再び闇に飲まれた。


--------------------------------冒険者としての始まり--------------------------------


気がつくと、俺は見知らぬ街の路地に転がっていた。


「……ここは?」


透き通るような青空。人々の活気ある声。石畳の道。……おお!異世界ってこんな感じなのか。


「……本当に転生したのか?」


よくよく観察すると、縫製の甘い布の服、革製のサンダルのような物を履いている。


周りも、それっぽい見た目の人で溢れていた。


「あー、腹が減った。とりあえず何か食べないと。」


そういえば最近は点滴のみで何も食べていなかった。

市場を歩いていると、いい感じの屋台を見つけた。赤くて美味しそうな果実が並んでいる。


「りんごをください。」


「銅貨一枚な、金は持ってるのか?」


……。


「……ない。」


「じゃあ売れねぇよ。金を稼ぐ方法を考えな。」


くっ……異世界転生したのに、まず最初に現実を叩きつけられるとは……。


途方に暮れながら歩いていると、近くの男たちが話しているのが聞こえた。


「金がないなら冒険者ギルドへ行け。登録さえすれば簡単な仕事があるぞ。」


おおっ! ついに来たぞ、異世界定番の冒険者ギルド!


俺はさっそくギルドへ向かい、受付に並んだ。


「登録をお願いします!」


「はい、ではこちらの水晶に手をかざしてください。」


ドキドキしながら手を置く。おお、ついに俺のステータスが明らかになるのか……!


「ユーマさん、ですね。特に問題はないです。これで登録完了です。」


俺も水晶を覗き込む。そこに表示されたのは——


冒険者ユーマ Lv.1 HP.50 MP.不明


え……MP不明って、観測できないようなMPって事?うわっ…私のMP高すぎ……?


「あ、MPは魔法が使えるようにならないと観測できないんで、駆け出しの冒険者にはよくあるステータスです!」


がっかりだ。


--------------------------------スライム討伐!--------------------------------


受付嬢(リリィさんと言うらしい)に渡されたクエストの紙を確認する。


《初心者向け討伐依頼》

対象:スライム 5体

報酬:50銅貨


「初心者にはちょうどいい依頼ですよ!」


スライムなんて雑魚敵のイメージだし、これは楽勝か?


討伐区域に向かい、適当に落ちていた木の棒を振り下ろした——


バシュッ!!


一撃。


「……え、弱っ!?」


あっさり倒したスライムを眺める暇もなく、俺のステータスに変化が起きた。


Lv.1 → Lv.10


「おい待て、レベルの上がり方おかしくない!?」


ともかく、5体討伐を終えて指示されたスライムの核を持ってギルドに戻る。


報酬の50銅貨を受け取り、まずは宿屋を探すことにした。


「よう、新顔か? うちの宿なら一泊30銅貨で泊まれるぞ。」


宿屋の主人は無骨な男だったが、愛想は悪くない。ほかの選択肢もなさそうだし、ここにしよう。


「お願いします。」


「よし、じゃあ銅貨30枚な。」


財布を購入し、残りの銅貨を確認。手持ちは12枚。


「食事は?」


「え?」


「うちは食事も出してるぞ。スープとパンで8銅貨だ。」


ちょうどいい。スライム5体狩るだけで、寝床と飯には困らないらしい。


「じゃあ、それもお願いします。」


「はいよ。好きな席に座んな。」


木の椅子に腰掛けると、すぐに熱々のスープと硬めのパンが運ばれてきた。シンプルだが、空腹にはこれが何よりのご馳走だった。


「ふぅ……」


スープをすすりながら、俺は今後のことを考え始めた。


「一日くらいは生き延びられるな……でも、これじゃ先が思いやられる。」


--------------------------------翌朝、冒険者ギルドへ--------------------------------


朝日が昇る頃、俺は昨夜の宿を出て再び冒険者ギルドへ向かった。


昨日のスライム討伐は想像以上に簡単だったが、このままでは一日暮らすのが精一杯だ。

いや、冗談抜きであと一日スライム狩りを続けたら、パンとスープの生活に飽きてしまいそうだ。


「もうちょい効率のいい仕事、ないかな……」


とりあえずギルドの扉を押し開ける。朝だというのに中はすでに賑わっていた。受付カウンターの前には、すでに依頼を確認する冒険者たちが並んでいる。


カウンターには昨日と同じ受付嬢。せっかくなら顔なじみの方が話が早い。


「おはようございます。昨日はありがとうございました。えっと、もう少し効率のいい仕事ってありますか?」


「あ、おはようございます!……そうですね、初心者のソロ冒険者が受けられる依頼は限られていますね。」


「え、なんでです?」


リリィは苦笑しながら答える。


「このギルドでは、初心者の方は基本的にパーティを組んで依頼を受けるのが原則なんです。単独行動だと危険が大きすぎるので、ある程度の実力が認められないと、高額報酬の依頼は受けられません。」


「なるほど……」


つまり、俺みたいな駆け出しのソロ冒険者は、昨日みたいなスライム退治しかできないってことか。


「でも、冒険者って基本的にその日暮らしの人ばかりですよね? だったら、ソロでももっと稼げる仕事があっても良さそうなものですけど。」


「確かにそうですね。ただ、ギルドとしても冒険者の生存率を上げるために、ソロの方には制限を設けているんです。特に、駆け出しのうちは。」


なるほど、安全策ということか。


「じゃあ、どうすればいいんですか?」


「パーティを組むのが一番の近道ですね。こちらにパーティ募集の掲示板がありますので、ご案内しますね。」


リリィに案内され、ギルドの一角に設置された掲示板の前に立つ。


『初心者歓迎!』『戦士募集!』『回復職歓迎!』


——とまあ、いろんな募集が並んでいる。


「ここに連絡先が書かれていますので、気になる募集があれば申し込んでみるのが良いかと。」


うーん、確かに合理的な選択肢ではある。


と、その時。


「おっ、新入りか?」


掲示板を見ていた俺の背後から、快活な声が聞こえてきた。


振り向くと、そこには三人組の冒険者が立っていた——。


「お前、パーティ探してんのか?」


話しかけてきたのは、短髪で革の鎧を着た青年——**ガイ**。


「ええ、まあ。ソロだと仕事が限られるみたいなんで。」


「だったら、俺たちと組まねえか? ちょうどもう一人欲しかったんだよ。」


後ろには、槍を背負った男——オルフェ、が腕を組み、隣にはローブを羽織った少女——セレナ、が微笑んでいた。


「どんな依頼を受けるつもりです?」


「そりゃあ、基本は討伐系だな。今考えてんのは、ゴブリン討伐。」


「ゴブリン討伐……」


初心者向けモンスターの代表格。スライムよりは強いが、基本的には個々の力は大したことがない。しかし、集団で襲いかかってくるため、油断すると危険な相手だ。


「いいですね。ぜひお願いします。」


こうして、俺は初めてのパーティを組むことになった。


--------------------------------武器がない!? ギルドでレンタル--------------------------------


「……って、そういや俺、武器持ってないわ。」


ゴブリン討伐を受けたはいいものの、手元には昨日スライムをぶっ叩いた木の棒しかない。


「は? 何で武器なしで冒険者やってんだよ。」


「……金がないから。」


「お、おう……」


ギルドのリリィに相談すると、どうやら冒険者ギルドでは初心者向けに武器のレンタル制度があるらしい。


「こちらのショートソードなら、5銅貨で一日レンタルできますよ。」


「助かります!」


なんと良心的なシステムだろうか。俺はすぐに5銅貨を支払い、ショートソードを借りた。


--------------------------------ゴブリン討伐--------------------------------


「よし、いくぞ!」


俺たちは森の中へ入り、ゴブリンの群れを発見した。


「ゴブリン3体確認! 俺が正面を抑える! 後ろから攻撃頼む!」


ガイの指示で、それぞれの役割が決まる。


オルフェが槍でゴブリンの動きを封じ、セレナが魔法を詠唱する。そして俺は、正面からゴブリンの一体に向かって突っ込んだ。


「はあっ!」


ショートソードを振ると、ゴブリンは驚くほど簡単に斬り伏せられた。


「……え?」


気づけば、俺は既に2体目のゴブリンを倒していた。


しかし、周りを見ると、仲間たちは苦戦している。


「ちょ、硬え!」「魔法詠唱が間に合わない!」


どうやら彼らのレベルは4らしく、ゴブリン相手にも苦戦しているようだ。


「俺、こんなに強かったっけ……?」


違和感を覚える。昨日、スライムを倒した時も妙に楽だったが、まさか——


「これが……神が与えたチートなのか?」


戦いながら、俺は自分の異常な強さに気づき始めていた——。


「……仕方がない、残りも片付けるか。」


他の仲間が苦戦している間に、俺は淡々と残ったゴブリンを処理していく。


「お、お前強いな。本当に初心者か?」


戦闘が終わると、ガイが訝しげな表情で俺を見つめる。


「そのはずなんだけど……生まれがちょっと特殊で…クセになってんだ、音殺して動くの。」


適当な嘘をつく。異世界転生したばかりの新人が、ゴブリンを軽く斬り伏せるなんて普通はあり得ないだろう。


「まぁ、強いぶんには構わねえ。助かったぜ。」


ガイが笑って肩を叩く。まぁ、解ってくれるとははなから思ってない。


「それより、戦利品回収しねえと。ゴブリンの耳を採ってギルドに報告するぞ。」


俺たちはゴブリンの耳を採取し、袋に詰めてギルドへ戻った。


「お疲れ様です。討伐確認いたしました。」


リリィに報告すると、40銀貨が手渡された。


「おお、これでしばらくは飯と宿に困らねえな。」


ガイが満足そうに銀貨を手に取る。


俺も財布の中身を確認しながら、この世界での生き方を考え始めた——。



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