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千紫万紅  作者: リゾット
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私と部活と学校生活と ~巨乳系茶道部~

「というわけで、tea partyなのデス!」

 何事もなかったかのように始まる部活動。

 自由です。

 折角なので、山吹さんと一緒に私も着物に着替えました。着付けの時に山桜桃さんに胸を揉まれましたが、まあ想定範囲内です。

「茶道部はやはり茶を点ててナンボよ。茶を立てない茶道部など茶道部に非ず。娯楽部とでも名乗っておけばいいのよ」

 危うく全裸系茶道部という前人未到のジャンルを開拓するところでしたけれど。

 ともかく、茶道部らしい活動ができるようです。

「なので、野点をやるわよ」

 野点。

 野外で茶を楽しむ茶会のことですね。

 茶室でするより堅苦しい作法を気にせず済むので、気軽に参加してもらえます。

 学校で野点をして、生徒に茶や菓子を振る舞うのは、茶道部の恒例行事だそうで。

「毎年5月に開くデス! 1年生のお茶会debutも兼ねてるのデス!」

 と、フリージア先輩が説明してくださいます。

「私たちも、お茶を点てるってことですか?」

「ええ。大丈夫よ、そんなに難しいものでもないし。堅苦しい作法に気を使わずに済むから、気楽にやればいいのよ。

 それに、多少味がアレでも分かりはしないから平気よ」

 問題発言な気もしますが……。

 しかし、私と山吹さんは初心者もいいところですからね。いきなり茶会で茶を点てるというのも簡単ではありません。

「放課後に、庭園でやる予定よ。友達には是非声をかけておいてちょうだい」

 山桜桃さんは茶室の隅っこに置かれているホワイトボードを持ってきて、開催日時などを書き始めました。

 学年的に部長は3年生のフリージア先輩ですが、この茶道部の実質的リーダーは山桜桃さんです。最も茶道の経験が豊富なのに加えて、人間を引っ張っていくリーダー気質みたいなものに恵まれているからでしょう。

 私は山桜桃さんのそういう、人を引っ張っていく力に憧れます。……ノーパンノーブラにミニスカ着物という破廉恥極まりない格好はマイナスになっている気がしなくもありませんが……。

 私は、格好いい女性が好きなのです。

「それで、今年は別の学校と合同でやることが決まったわ」

「Oh,really?」

 そこでフリージア先輩が驚くのは、部長としてどうなんでしょうか……。

 山桜桃さんは頷いて、それから一瞬私のほうに視線を向けました。

 なんでしょう。

 偶然、でしょうか?

「どこの学校とやるデス?」

「……私立姫百合女学院、よ」

「ええっ、あの名門女子校ですか!」

 隣で山吹さんが驚きの声を上げました。

 無理もありません。姫百合女学院といえば日本有数のお嬢様学校。全国からそれはもうやんごとなき身分のお嬢様ばかりが集い、偏差値も全国トップクラスの超エリート学校なのです。

 しかし、まあ、姫百合とは。

「知り合いが向こうの茶道部にいるのだけれど、折角だから一緒にどうか、とお誘いを受けたの。そういうわけで、5月の野点は姫百合女学院と合同でやるわよ。まあ、何も気を張る必要はないから気楽にしていて頂戴」

「でも、姫百合女学院の茶道部って、凄そうですね……」

「茶道に凄いも凄くないもないわ。そもそも競うものではないのだし」

 山桜桃さんはばっさりと言いますが、未経験の山吹さんが気後れするのも無理はないと言えます。

 姫百合女学院というネームバリューは、それくらい大きな力を持っているのです。

 『日本有数のお嬢様学校』というイメージが多分に先行しているせいでしょうし、実際あの学校にいるのは本物の『お嬢様』ばかりですからね……。

「お嬢様が何するものぞ。恐れることは何もないわ。1年生の2人はただ、楽しんでくれればそれでいいのよ」

 そういうものなのでしょうか。

 山桜桃さんがそう言うのならばそうなのかもしれません。山桜桃さんの言葉にはいつだって自信が溢れていて、説得力に満ちているように感じます。

「わが木花高校茶道部は日本有数の巨乳率を誇るのよ。箱入りお嬢様に負ける要素が見当たらないわ」

 豊満な胸をぴんと張る山桜桃さん。その振る舞いも自信に溢れています。

 溢れすぎです。

 オーバーフローしそうです。あ、いえ、胸がポロリしそうという意味ではないです。

「なにせ生粋のアメリカ産のリア・フリージア先輩と、『G線上のアリア』ことこの私に加え、今年は凛々恵ちゃんと聖ちゃんがいるのだから。……あ、すみません擬宝珠先輩」

「…………」

 擬宝珠先輩が隅っこで体育座りを始めていました。

 残念ながら擬宝珠先輩は胸が大きくないのです。俗に言う「貧乳」と言われるタイプです。

 胸の大きさが全てではないと、私は思うのですが……。

「ベニー、女性の魅力はBustだけじゃないデス!」

「先輩、貧乳はステータスで希少価値ですよ」

 フリージア先輩と山桜桃先輩が慰めていますが、擬宝珠先輩の心に響くのかどうか。

「む、胸が大きくてもいいことなんてない……よね」

 溜息混じりに山吹さんが言います。

 まあ、肩は凝りますし、夏とか汗が溜まって気持ち悪いですし、男性からの視線も煩わしいですしね。

「可愛いブラを選べないのも痛いわよね」

 サイズが大きくなればなるほど、選択の幅が狭くなるのは衣類全般に言えることです。

 私くらいのサイズだと、まだ色々あるのですが。

「最近は、色々種類が増えてるデスし、通販で色々買えるから便利デス!」

 お母さん曰く「昔は日本だと大きいサイズのものが中々なくて苦労した」そうですが。

「聖ちゃんは、自分の大きい胸が嫌なのかしら?」

 山桜桃さんの問いに、山吹さんは頷きを以て答えました。

「…………」

「ベニーが言うに、『持てる者には持てる者なりの悩みがある』ということデスネ?

 でも、聖のバストはとても魅力的だと思いマス! もっと自信を持つべきデス!」

「そうでしょうか……」

 色々と苦労もしてきたのでしょう、山吹さんはぱっとしない表情です。

 この間まで中学生だったとは思えない大きさですからね……無理もないかもしれません。

「私も、フリージア先輩や櫻井先輩みたいに、自信満々になれればいいんですけど」

「ヒジリもヌーディストビーチで1日過ごしたら多分嫌なこと全部どうでもよくなるデス!」

 荒療治すぎます。何故この先輩はすぐ全裸の方向に持っていこうとしますか。

 アメリカだからですか。いえこれは偏見ですね。

「でもまあ、生まれ持った自分の身体だし、受け入れて、上手に付き合っていくほかないと私は思うけれど」

「……そうですね。私も小さい頃この髪の色で色々と嫌な思いをしたことがあるので、わかります」

 小学生の頃は、片親だったこともあって、結構いじめられました。

 一時はお母さんを恨んだほどでした。「どうして私の髪の色だけみんなと違うの」と。

「凛々恵ちゃんは……どうやって受け入れたの?」

「そうですね……特にきっかけらしいきっかけがあった訳ではありませんが、この髪はお母さんから受け継いだ大切なものだと、そう思えたことが大きいと思います」

 異国の地でたった1人、私を育ててくれた母。

 大好きなお母さん。

 私は娘として、この髪の色を誇りに思うのです。

「私も、そういう風に思えるかな」

「今は無理でも、いずれきっと。……すみません、気休めにしかならないかもしれませんが」

 ううん、と山吹さんは頭を振ります。

「ありがとう。私、頑張ってみるね」

 そう言って山吹さんははにかんだのでした。

「うんうん。とてもいい話だわ。では聖ちゃん、自らのプロポーションに自信を持つためのステップとして、この着物を着てみるというのはどうかしら!」

 目を輝かせながらミニスカート着物を広げてくる山桜桃さんに、私と山吹さんは顔を見合わせるのでした。


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