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千紫万紅  作者: リゾット
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僕と親友と剣道小町と

 この僕、雄漂木悠輔にも、親友と呼べるような友人はいる。

 もっとも、実際に口に出すことは決してないのだろうけど。

 親友。

 なるほど響きの良い言葉ではあるが、しかし口に出すと一気に軽くなりそうな言葉でもある。

 小学生の頃、互いに「わたしたち親友だよね!」とことあるごとに口癖のように言い合っていた女子二人組がいたことを、思い出す。二人はいつも仲良しでいつも一緒にいて、そしてあるとき喧嘩をしてあっさり『絶交』してしまった。

 当時の櫻井山桜桃いわく、

「自分たちの仲に自信が持てないから、『親友』っていう言葉でお互いをなぐさめあってるだけなのよ。本当に仲がよかったら、わざわざ口にするまでもないことでしょう」

 『仲良しな自分たち』に酔っているだけ――山桜桃はそう言った。

 世の中には、口にすればするほど軽くなるものもある。そういう話なのだろう。

 それ以前に、僕の感覚からいくと、仮に親友だと思う友人に対して、「僕たち親友だよな?」なんて言いたくない。

 気恥ずかしい。

 そういうわけなので、僕はそいつを親友だなどと口が滑っても言いはしないが、しかしそいつが僕にとっては親友と呼ぶに足る友人であることは、間違いないのだ。

 僕の中では、そうなっている。

 口に出しはしないけれど、友人の中でも特に親しい人間を『親友』と定義することは、誰にでもあるものだと僕は思っている。

 時を経て、変わってしまうこともあるだろうけれど。

 でも、僕はそいつのことを友として信頼していて、一緒にいて楽しいと、そう思える。だから、僕にとってそいつは親友なのだ。

 くどいようだが、そんなことは決して言葉にはしない。

 恥ずかしいからだ。

 山桜桃には『酔っている』と言われてしまいそうではあるが、口にしないが華、ということも世の中にはあるはずなのだ。

 暗黙の了解。

 無言の信頼。

 どこかのガキ大将は「心の友」という言葉を使っていたが、なるほどそれは的を射た表現だなと僕は感心したものだ。

 友人というのは、とにかく範囲が広い。『家族』や『恋人』と違って、その関係が始まる時期も終わる時期も、はっきりしないのだ。

 気付いたら友人になっていて。

 気付いたら友人じゃなくなっていて。

 流動的で、抽象的で、曖昧な関係性。それが『友人』だ。

 そんな不安定な関係が、『親友』と呼べるほどに強固になるのは、そう容易ではない。

 お互いに取り繕わない、打算の入る余地のないレベルまで達して、やっと親しい友達と呼べるのではないだろうか。

 自分を偽らず、ありのままの自分を受け容れてくれる存在。

 外面のみならず、内面のレベルで触れ合える存在。

 だから『心の』友だ。

 心友。

 親友。

 だから本来、親友の定義について記述しようという試みが、もはやナンセンスなのであろう。

 僕にとって、そいつは心の友だ。

 そう思えればそれでいい。

 それだけで、いい。 

お待たせしました、本編再開です。

今回は、杉村恭一にスポットを当てたお話となります。


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