僕と会計と新歓期間と
諸事情によりタイトルをちょっとだけ変更しました!
この僕、雄漂木悠輔は、このたび高校二年生になった。
思えば高校一年生として過ごした一年間、あっという間に過ぎ去ったものだ。
岩千鳥携生徒会長のもと、生徒会役員として色々なことにチャレンジした一年だった。
そして、新しい家族も増えた。
生まれて初めて、母親と、妹ができた。
まだまだこなれない部分もあるけれど、順調に馴染んできていると思う。
妹(義理)の凛々恵は、僕の一つ年下で、このたび高校一年生。
僕と同じ高校に入学することになっており、僕の後輩にもなるわけだ。
凛々恵にとっては、小さい頃から住んだ家を離れ、知らない街へ来ての新生活だ。不安もかなりあることだろう。
しかも凛々恵は小学校、中学校と一貫の女子校に通っていたらしく、共学の学校が初めてということだった。
その辺りの不安も大きいはず。この間聞いたら、『学校に教師以外の男性がいるという状況が全く想像できません……』と真顔で言っていた。
そういうわけだから兄として、先輩として、僕は彼女を支えていかなければならないのである。
それに、五月には生徒会選挙があり、生徒会メンバーが入れ替わる。会長の岩千鳥先輩と書記の松風先輩は三年生だから今年で引退だ。
色々なことが変わっていく時期。
何もかも、変わらずにはいられない。
それに応じて、僕も変わっていくべきなのか。
否、周りが変わるからこそ、僕自身は変わらずにいるべきなのか。
どちらにせよ、変わっていく環境への適応が求められることになる。
僕も、凛々恵も。
ところで。
全く話は変わってしまうのだが、僕の幼馴染であるところの櫻井山桜桃は、部活動に所属している。弓道部と茶道部だ。
あの協調性皆無、生まれながらに天上天下唯我独尊体質の女が、部活動などという一つの社会に適合できることに驚きを隠せないのだが、これが意外と上手くやっているらしい。しかも掛け持ちと来たものだ。
基本的に山桜桃は運動は何でもできるのだが、激しく動くスポーツは嫌らしい。本人が言うには「おっぱいが揺れて邪魔だし、下手するとブラ壊れるし」だそうで、なるほど納得である。
じゃあ茶道部は何なのかといえば、実は山桜桃の祖父母はこれがまた大変厳しい人物で、古きよき日本の伝統を受け継ぐというか、良くも悪くも古風な人なのだ。で、山桜桃は幼い頃から茶道や華道、書道を叩き込まれていた。普段の振る舞いからは想像もつかないが、実は山桜桃は大和撫子として英才教育を受けてきているのである。
ちなみにあいつが本気を出すと、本当に雅やかな和風美人になる。一度だけその『大和撫子モード』(無論命名は僕だ)を見たことがあるが、その時はガチで見蕩れた。
まあ。
櫻井山桜桃の秘めたるポテンシャルについて語るのは別の機会にするとして、何が言いたいのかというと、部活動の話だ。
部活動。
僕らの通う学校は、部活動もそこそこ盛んで、数も多い。それゆえか、各部活が少ない予算を少しでも増やすためにしのぎを削っている。
その影響は、毎年新年度初めに行われる勧誘にも現れてくる。頭数の少ない部活は部の存続のために、数の多い部活は少しでも優秀な人材を得るために、血眼になって勧誘を行うのだ。
そういうわけで、そうした部活動の勧誘が行き過ぎないよう監視するのも、僕ら生徒会の役目なわけなのだが。
一筋縄では行かないのだ、これが。
うちの学校は部活動が運動系・文化系を問わず多いのも特徴であり、毎年の新入生勧誘に熱が入りまくっているのも大きな特色となっている。中には目覚しい実績を挙げる部もあり、全国大会まで行くことだってある。
そういう実績を挙げた部に対しては潤沢な予算が与えられ、学校からの支援も厚くなる。しかし予算には限りがあるわけで、当然、予算があまり割り振られない部というのも出てくる。
各部へ割り振る予算は、クラブ評議会の会議で決定される。クラブ評議会というのは、全ての部が集まって作る議決機関であり、部活動に関するあれこれを決定するわけだ。まあほとんどが予算関係だけど。
予算案については、生徒会執行部の会計が評議会と連帯して作っていく。この際、それぞれの部活の活動記録や実績を参考に、予算の割り振りを行っていくことになる。これは、毎年五月の生徒総会までに作成され、全校生徒の承認を得て正式に予算として認められることになるわけだ。
予算が欲しいのはどこの部も同じ。そして部の規模が大きくなれば、予算も増える。
だから毎年、新入生を引き入れるのに必死になる。この学校の伝統だ。
様々な改革を行ってきた我らがたずにゃん会長は、この伝統について、何ら変更を加えるつもりはないらしい。部活動が盛んなのはこの学校の長所なのだから、と。
但し、今までは評議会主導で作成されていた予算案を、生徒会主導に変更した。クラブ評議会は各部の部長から構成されるのだが、予算を巡って部と部の間で小競り合いが起きたりしていたのである。評議会の議長は結局、どこかの部長が就任する。そうなるとどこか特定の部が利を得ることにもなりかねない。そういった不平等を是正するため、生徒会会計が評議会の予算案については常にチェックを入れることになった。また、それぞれの部活動を定期的にチェックし、ちゃんと活動しているかを監査。これで、予算を食いつぶすだけの有名無実な部は消せる。
まあ、そういう制度があるお陰で、部活動に所属する連中にとっては、生徒会会計――七竈香子の存在は大きいわけだ。
予算を獲得するために、彼女のご機嫌を取ろうとする連中もいるくらい。




