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千紫万紅  作者: リゾット
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僕と義妹とパエリアと

0.

この僕、雄漂木悠輔おひるぎゆうすけは、父子家庭で育った。

父曰く、僕を産んですぐに、母は亡くなってしまったらしい。だから、僕は母の顔を写真でしか見たことがない。

僕にとって、家族と呼べる人間は父一人である。

だから僕は、母親がどういうものなのか、知らない。

だから僕は、兄弟がどういうものなのか、知らない。

他の家族は、父と母、もしかしたら加えて兄か姉か弟か妹かがいるのだろう。

そういう家族というものを、僕は知らないのだ。

僕と父の、二人暮らし。父は仕事で忙しいから、家にいる時間はそう長くない。

寂しい、という感情を覚える前に、一人で家にいることは僕にとって当然のこととなっていた。

だから、不満は無かった。

けど、時々、ほんの少しだけ羨ましくなることがあるのだ。家族というものが。

僕にとってのではない、多くの人にとっての『当然』である家族――母親と父親がいて兄弟か姉妹がいるような家族が、時々羨ましい。

とは言え。

別段、母親が欲しいとか家族が増えたらいいなあとか、そういうことを思っているわけでもなく。

僕は現状を受け入れていた。

そんな僕の家庭に変化があったのは、高校一年生の春休みのことだった。

分かりやすい言い方をしよう。


僕は義理の妹を手に入れた。


いや、『手に入れた』という言い方は全く不適切だけど。RPG風に表現すると多分こうなるのだろう。

発生率が超低いレアイベントの果てに手に入る激レアアイテム、みたいな扱いだ。

義理の妹などという存在は二次元世界の偶像存在だと信じて疑わなかった僕にとっては、本当に信じられない話だったのだ。父の悪い冗談だと本気で思ったくらいに。

妹だけではない。義理の母親も出来た。

まあ、要するに父が再婚したのだった。

驚きの事実である。

いい年して未だにエロゲに興じたり美少女のあられもない姿がプリントされた抱き枕を買って部屋に飾ったりしている独身中年男性が、よもや美人の外国人女性と再婚することになろうとは。

確かに見てくれは結構良いのだ、うちの父は。だから再婚しようと思えば相手はいるだろうと思っていた。

しかし、その相手がまさかドイツ人だとは。

つまり僕の継母は日本人ではなくドイツ人なのである。まあ随分前に日本国籍を取得していて日本暮らしは結構長いらしく、日本語ペラペラなんだけど。

で、義理の妹。

要するに僕の継母の、連れ子。

日本人とドイツ人のハーフ。金色の髪、青色の眼。

日本人の血が混じっているのにも関わらず、髪も眼も見事に日本人離れした鮮やかな色をしていて、すごく驚いたのも記憶に新しい。

そんな子が突然僕の妹になるというのだから、もう期待せざるを得ないという話だ。

義理の妹。

血の繋がらない妹。

僕の新しい――家族。

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