プラコン
プラコン
宇宙のどこかにあるその星は、年々気温が上昇し、人々は滅亡の危機に瀕していた。「暑い」なんてものではない。「熱い」のだ。地面に卵を落としたら、一瞬で目玉焼きになってしまうほどだ。星全体が発熱しているのだ。このままでは人類はおろか、動植物までもが絶滅してしまう。どうにかしてこの星の人類は、この危機から脱さねばならない。各国を代表する技術者が結集し、星を寒冷化させるプロジェクトがここに発足した。
技術者達は、星全体を冷やす為にはどうすればいいかと、頭をひねった。まずは原因の解明から取り掛かろう。なぜこんなにも気温が上昇してしまったのか。その答えは、人類が積み重ねてきた過ちで、大量の廃棄物が熱を発していたからだ。この星では、産業廃棄物を火山に投棄していた。その影響で様々な悪性物質が、マグマの流れに乗って、星全体へと行き渡り、大地へと染み込んでいった結果、異様な地熱を持つようになってしまったのだ。
そして技術者達が出した結論は、マグマや大地に溶けた悪性物質は、取り除きようがない、ということだった。そして議論は最初へと戻る。さて、星全体を冷やす為にはどうすればいいだろう。原因そのものを排除出来ないのなら、やはり星そのものを冷やす事しか、解決方法は無い。プラスにマイナスをぶつける。熱した地面に、冷たい空気をぶつけ、無理矢理冷やす以外に方法は無いと、結論が出た。
では具体的に、どうすれば冷たい空気を発生させ、それを星全体に送り込めるのか。技術者達はその為に、超大型のマシーンを設計し、それを「プラコン」と名付けた。原理はエアコンとほぼ同じである。熱い大気を冷やして循環させ、排熱は宇宙に向けて行う。室内を冷やすのが、エア・コンディショナー(空気調節装置)つまりエアコン。これは星を冷やすので、プラネット・コンディショナー(惑星調節装置)プラコンなのだ。
人類のあらゆる技術、人員、資源を費やし、なんとか人間が滅亡するまでに、プラコンは完成した。その外見は、宇宙まで伸びる巨大な塔。直径数百キロにもなる、巨大な円筒である。それが世界各国に設置され、冷風を四方八方へと送り出し、まるで煙突から煙を吐き出すように、大気圏外へと排熱を行う。気温は少しずつ低下していき、ついに裸足でも歩き回れるくらいに、星の温度を下げることに成功した。人類は手を取り合って喜んだ。このプロジェクトをきっかけに、人間は初めて一つになった。国家間のくだらない争いを止め、協力することの素晴らしさに目覚めたのだ。
それから数年後、その星から少し離れたところにある別の惑星は、年々上昇する気温に悩まされていた。なぜかと原因を調べたところ、とんでもない熱を、宇宙に向けて放出している星があることを突き止めた。その熱が惑星まで届き、気温を上昇させていたのだ。当然被害者である惑星の人々は、熱を放出する星を非難し、排熱を止めろと抗議した。しかし加害者である星の人々は、我々に滅亡しろと主張しているのかと、惑星の人々を非難し返した。
これをきっかけに、惑星間の戦争が発生し、二つの星の人類は争いを始めた。その戦争は後の世で、プラネット・コンデムウォー(惑星非難戦争)。通称「プラコン」と呼ばれた。
おわり