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転生しちゃったTS少女、『聖女の声』を手に入れる。  作者: 白桐
転移した少女、『聖女の声』を手に入れる
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第四十二話 トラウマ克服

新年、明けましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします

今年は更新を頑張りたいと思います


「セイジョサマ、稽古をしなんす。」


目が覚めてから初めて言われた言葉はコレだった。

まだ完全に冷め切っていない頭で話を聞いてみると、先日の…練習試合?での反省を基に稽古を行うそう。その反省というのは、


「主さん、目線に弱くござりんす。」

「目線?」

「あい。まだ心的外傷を背負いんし、そらをどうにかしなんといかなりんす。」

「…トラウマを克服しよう、ってことで良い?」

「左様。」


(左様でございますか)

その日はこの会話をしたっきりすぐに終わり。その後は珍しく獣売りが看病してくれた。…りんごみたいなものを目の前にドンと置かれたのは吃驚したけれど、何もしてくれないような時もあったからまだマシ。

翌日、頑張って治した。病み上がりのために、本調子と高らかに叫ぶにはいかないけれど、獣売りは


「トラウマコクフク、は身体を動かさりんせん。ようざんす?」


要は身体を動かすことが大事だ、ということ。なので外に出る。少し覚束ないけれどしっかりとした足取りで向かうと何やら服装が違う獣売りが。

今までは何者にも染まっていない純粋な白を基調とした明るめの色をしていて、灰色の髪の毛が目立っていた。が、今回の衣装は違う。全てを吸い込むかのような黒。所々に入る黄色い意匠はまるで光を吸い込んでいるかのように捻れている。袴が見えないこと、黒のコートが全てを覆い隠していることが吸い込まれる、という感覚をより引き立てている。


「あぁ、この服装でござりんす?なに、何でもありんせん。」

「ふーん?」


服装についてはこの際一旦スルーしておく。

さて。とひとつ咳払いを挟み、獣売りがこう喋る。


「主さんを目線に強くしなんす。」


影絵【狐】


次の瞬間、眼前には真っ黒で丸い物体が。ソレはひとつ大きく震えたと思ったら膨らみ始め、狐のような形をとった。


「これが、わっちの考える主さんを強くする方法でありんす。」


こちらをじっと見つめてくる黒い狐。その目は閉じられることのなく、少しくすんだ黄色い目を光らせている。ただの狐…と言うには些か黒いが、瞳に宿った生気は生き物であることを表している。

怖い。


「よく見なんし。」


そう言われた途端、体が動かなくなる。今まで動いていたのに、急に何も出来なくなってしまった。目の前にあるはこちらを見つめる狐。だがその目線は、いまや槍として動けない私の体を貫かんとしている。

唐突かつ不可避な展開は私の心にヒビを入れる。それはいとも簡単に、当然のように行われた。


「あ、あっ、ああ、あ、ぁ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


(嫌、嫌、嫌や、いや、やめて、とめて、おねがい、むりなの、はなして、)


……

………


「ありゃ、少しばかり強すぎでありんした。ほーんと、ヒトは弱くありんす。」


折角仕立てた着物が涙でぐしゃぐしゃ。綺麗な顔も醜く滴る。空っぽの瞳は地を這い、謝罪の言葉を只繰り返す。囈言を繰る口があるならと手を招く。狐は従順に此方へとやって来て、聖女の視界に映す。


「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ」


何と滑稽な姿か。人類の希望だとも魔王を倒す者だと持て囃され崇め奉られている聖女が何も出来ずに発狂している。一頻り観察は済んだため実験を終わる。狐は影へと溶け込み、その役目を果たす。

次に指を鳴らす。正気も生気も失った伽藍堂の聖女を回収。その軽さに驚愕しつつも寝床へと持っていく。


……

………

はっと目を覚ましたときには、ベットの上に寝かせられていた。いつものことだと割り切るには目覚めが悪く、それは身体にまで影響を及ぼした。

(……!?身体が、動かない……!?)

金縛りにでもあったのかと、錯覚してしまうほど動かない。全身の力を込めてようやく微振動を起こすことができた。そう長い間維持することもできず、息も絶え絶えになって寝汗はぐっしょり。

いや、違う。この震えは、汗は、私の意思に反している。

あたりを見渡す。なんということだ。この景色に見覚えがあってしまう。記憶の奥底に眠らせていたもの、輪郭のみかつ、あやふやに決定づけて初めて正気を取り戻すことのできた、あの記憶。

嫌だ、嫌だ、嫌だ。僕は(・・)ここに戻ってきたくない。

煩わしい、けれどどこか安堵する騒々しさ。酒気の漂う少し寂れた広場。ガコンガトンと鳴り響く鉄は、僕がそこにいた形跡をこれでもかと漂わせている。可愛げの少し見え隠れする新築の建物は、微笑ましい光景が広がっている。


僕は今、あのときに住んでいた町にいる。


……

………


「これはただの幻。幻覚でありんす。」


嘲笑うかのように、弾む声は静かに響く。


「何、何も危害を加えるつもりはござりんせん。唯…、唯主さんのその心的外傷を癒そうとの考えのもと、でござりんす。好かねえことではありんす。が、許しておくんなんし。」


今日も響くは一つの声。神々の単なる遊びに過ぎなかった。

あーかわいそう!

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