ちょっと一息 成り上がった落ちこぼれ
スプラとエアライダーとプロセカと艦これと雀魂にハマってましたすみません
クリスマスプレゼントなのです!
息苦しい。
僕のやりたいことが出来ないのは、ここまでの苦痛を伴うのか。ため息を吐きたいけれど、このパーティーが終わらないといけない。疲れる。
にこにこ作り笑いを浮かべながら、太った豚みたいにふがふがしてる大人たちを見つめる。
「今夜は月がとても美しく見られ、このような場に集まってくださり、心より感謝申し上げます」
吐きそう。心にも思っていないことをべらべらと喋りたくない。もっと心の底から話したい。
「本日はわたくしの成人のお祝いに来てくださり、あろがとうございます。また、国王陛下より公爵位を賜りました。ひとえに、わたくしを支えてくださった皆々様のご指導ご鞭撻の賜物でございます」
息が詰まる。一息置いて唇を濡らし、笑みは崩さずに再び話し始める。
「皆さまへ少しでもお返しできればと、このような場を設けた次第です。どうぞ、楽しんでくださいまし」
喋り終えたとたん、あちこちでグラスが鳴り響く。
地獄の始まり、始まり。
最初に来たのは昔からの付き合いらしい男爵のおっさん。豚みたい。
「デグファイナ嬢、御機嫌いかがかな?」
「御機嫌よう、ヘルツ男爵。ええ、調子はとてもよろしくって」
「それは良かった。君の父君は、君が失踪したと聞いたとき、どうなってしまったのかと心を病まれていたよ」
嫌味。青筋が立つ。
「その件に関しましては、わたくしから父へ直接お話しいたしました。ヘルツ男爵にも多少なりともご迷惑をおかけしたようで、申し訳ございません」
「ハッハッハ!いや、何。嫌がらせに来たのではない。両親は大事にしろておけ、とだけ言いたかっただけだ」
「そうでしたの。わかりましたわ。ご警告、感謝いたします」
「ハハ、それでは」
ケッ。お前なんかに何がわかるものか。この皮の下も知らずに好きかって言いやがって。
悪態が顔に出ていたのか、そばに付いている側近に叩かれる。
「ここではそのような顔をしてはいけませんよ、お嬢様」
「わかっているつもりです」
僕も側近もどちらもため息を付く。幸せになれない。あーあ、早く終わればいいのに。
次にやってきたのは…誰?知らないおばさん。太ってはいないけど、三角形の目をしている。疲れないのかな。
「ご機嫌麗しゅう、デグファイナ嬢」
「ええ、ご機嫌よう。ところで、お名前はなんだったかしら?」
「知らないのも無理は無いですわ。デグファイナ嬢とはお話ししたことがなかったもの」
「あら、そうでしたの。では、お名前を教えてくださる?」
こんなお遊びしないで外で魔物を倒したい。
「わたくしはファリントワ・メイリン。貴女の失踪先にて息子がお世話になったそうな」
「あら、ご子息は大変素晴らしかったそうですわ。先生もそう仰っていましたし…」
表面上はしっかりと受け答えしながら、僕は焦る。
ファリントワという名前が出たからには、恐らく聖女…メイに触れられるということ。
「ところで、その先生は、一体、何処に行かれたのでしょう?わたくし、息子のためにご挨拶をと思っているのですが?」
ほらきた。
「それが…わたくしにも分からないのです。できる限りのことはしておりますが、煙に巻かれているようで、何も掴めないのですわ」
「あら、そうなんですの。仕方がないです。わたくし達の、ファリントワ家一同その先生探しに尽力致しますわ」
やめて。メイは、少し調子がおかしかったの。それに、何もメイだけが悪いわけではないの。だからその眼をやめて。その言葉をやめて。ねぇ、お願い。
だけど、この言葉はどこにも届くわけがない。
「ふふ、ご協力感謝いたします。ただ、現在国王陛下のお力をお借りしながらでの捜索が行われているそうです。あまりお力をお借りすることはないかと」
「それでもいいのです。だから、捜索に協力しますわ、先生のためですもの」
高笑いに似た笑いを上げながら、去っていくその背中にあっかんべー。ふん、お前なんかに、僕の気持ちが分かるものか。
べしっ
「…むう、痛い。」
「こちらのお腹の調子も考えてください、お嬢様」
知らない、知らない、僕は何も知らない。
メイの居場所も、僕の存在意義も。
ただ繰り上げられただけの落ちこぼれが、こんなところにいていいのかな。
ああどうか、僕を、こんな僕を救ってください、神様、聖女様。
「見て。みんな僕を避けているね」
「…今まで平民の元で生活していたので、彼らの目には穢らわしく見えているかもしれません」
「どっちが穢らわしいのだか」
諦めたかのようなため息をつかれる。つられて僕もやりそうになったが、人の目線に気づいて止める。
他人の目線なんか気にせず、ギルドで楽しくやっていたかったなぁ…
結局、このパーティはすぐに終わりになり、会話を交わしたのはあの二人だけだった。
ヘルツ男爵:男爵位についている40半ばのおっさん
腹が出ているが、まだマシな方。
使用魔法【木】で、若い頃は勇猛果敢に戦地へ飛び込み武勲を上げていたため、一代にして男爵位にまで上り詰めた。
木属性
五大元素のうちのの一つ。基本的に碧色の髪であり、夜目が効く。木を始めとした植物の成長にのみ作用すると長年思われていたが、3代目聖女の発見によりなんと生物ならば何にでも効くことが判明。よって筋肉をつけて自分に魔法を掛ければ超人的なパワーを発揮することができ、それが主流に。また近年の研究によれば無生物にも反応したため、魔法そのものに魔法を掛けるという芸当で理論上無限に火力を伸ばせることができるかも。




