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転生しちゃったTS少女、『聖女の声』を手に入れる。  作者: 白桐
転移した少女、『聖女の声』を手に入れる
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第四十一話 戦闘!獣売り!

12月前には出したかった

ドアノブに手をかける。特に捻ったり下げたりせずとも開くような簡素な造りとなっており、簡単に外に出られるようなドアノブだ。外の世界を久しぶりに拝もうとしたが、手が震えている。何故だろうか。

(ああ、トラウマか)

正気を失い狂気に染まり、人々を皆殺しにしたあの感覚。人の悪意を一心に受け止めた、正直者の見た馬鹿と悲惨な末路。かすかに残ったその記憶は私をこうも苦しめる。だが、そんな恐怖で立ち止まってしまうほどの半端な覚悟は持参していない。なにせ今から凡そ人間だとは思えない、獣売りとの戦いが控えている。その立ち居振る舞いと奇っ怪な言葉遣い、あと身長。おそらく女性であること以外、全てと言えるほどにわかっていない。使用してくる魔法もわかってはいるが、他の私の知らない魔法を使ってくるだろう、そういうある種確証に近しいものがある。でも、

(だとしても、進むしかない)

ドアを開ける。光が射す。窓越しに感じていたものとはまた違う、焼けつくかのようなジリジリと体力を削られていく感覚。まだ大丈夫だが、そのうち汗が垂れる。

一歩踏み出す。土を踏む。震えていた脚は、思っていたよりかは素直に動いた。凹凸な地面が、大小様々な石ころが、ざりざりとした土の踏み心地を上げている。

眩しさからか目を背けていた正面。腕組み仁王立ちをして、逆光を全身に浴びる獣売りは待ち構えていたかのように目を細める。そして徐に手を横に突き出し、胸の前に持っていきながら頭を下げる。


「この戦いは模擬戦でありんす。。わっちに少しでも攻撃が当たれば主さんの勝ち。セイジョサマが気絶したならわっちの勝ち。そうしなんす。」

「分かった。つまり殴ればいいのね?」

「血の気の多い武左だこと。」


そう嘲笑まじりに苦笑する獣売り。頬を膨らませておく。

ひとしきり笑ったのか、目を閉じてこちらに姿勢を向けてくる。徐に顔を上げていき、目を開く。端の紅い口角は、チラリと八重歯を魅せて開く。


「さあセイジョサマ?わっちと一緒に遊んでおくんなんし。」


そう告げられ、瞬き一つ挟んだ時。


 身体強化 点火 狐火【玖火】


眼前に広がるは数多もの蒼炎。数えている間にも未だ増え続けている。それだけでない。それぞれが自由意志を持ち、獣売りに付き従っているかのようにゆうゆうと揺れている。

一瞬動きが止まった。

刹那、その火は私の眼前にまで迫る。手で顔を覆い、その場にしゃがみ込む。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。


『消火!』


火から着想を得たその言葉を皮切りに、火の玉は全て消えた。だが、それは一時的な気休めにしかならなかった。覆っていた手はそのままに、顔を上げて視界に獣売りを捉える。

背後には幾千もの炎が浮かんでいた。

(このまま当たれば、間違いなくやられる…!)

必死に回した頭、脳内演算算盤から弾き出された回答は。


絶対防御(アブソル・べタイデグ)!』


今までに経験したことのない程の脱力感と共に、全能感が脳を浸す。脱力感によりただでさえ鈍い動きはより鈍重さを増している。

だが、それ以上の全能感。そしてソレが錯覚でない事を証明するかの如く、温もりの一つも感じていないのだ。

(よし、コレならいける。戦える!)

一呼吸の後に、言の葉を繋ぐ。


『潜水檻』


突如湧き上がる水。統率され、一滴も零れず乱れずに獣売りへと直進する。

獣売りはすかさず大きくバックステップ。背後の森の中へと隠れようとする。だが、危機はそう簡単に去らず、より困難になり眼前へと。


「ほう。成程。」


水の中に閉じ込められた獣売り。大男さえも数人入りそうな大きさの水の筒は、中まで満たされている。


「よし、よしよしよし!」


少しよろめきながら立ち上がり、獣売りの元へと歩き出す。日焼けを知り尽くした肌は、少し青みを帯びている。その口は上がり、一歩一歩に力が入る。

(コレで勝ちだ)

慢心は、口に出さないからと言って災いの元たり得る。

獣売りの奇怪な手遊びを見落とした。たったそれだけ、されど攻守が入れ替わる程の重大な過ちを。


 影絵【狐】【化け狐】


木陰が消える。異様に明るい雑木林は、慢心無様聖女にも違和感を覚えさせることが出来た。

本来あるべく所に無い木陰。ではソレらは何処へ。

ぽす、という質量を感じる音に振り返る。そこにいたのは狐だった。たった何百もの狐が居た。黒い黒い体は毛では無いモノで覆われている。夜の闇の中では確実に見落とすだろう。

狐の大群は一度身震いをした後、目を開く。爛々と光るその眼は、私に向けられてきた。


……

………


「わっちの勝ちでござりんす。」


美人の獣売りは勝ち誇る。鳴らした指と共に狐たちが元来あるべき形を取る。


「心的外傷で気絶するとは、滑稽でありんす。」


屈託の無い笑みを浮かべて笑う。

ひとしきり嘲笑った獣売りは、未だ下がらぬ口角で話し出す。


「手印を用いる魔法は、手印さえ見つからなければ即刻発動することが強味でありんす。見落とせば痛い目を見しなんす。…好かねぇことをしたんは申し訳ないが、許しておくんなんし。」


完全に伸びた聖女を眺めながらの説明は、日暮れまで続いた。聖女は風邪を引いた。

いつもの


影絵

獣売りや、少し描写のあった兎人、猫人などの亞人族が使える魔法。基となった動物を影から呼び寄せるというもの。普通のは物理攻撃のみだが、化けさせることで簡単な魔法を使えるようになる。見分け方として、普通のは少し開き気味で、化ケモノは細目。

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