第三十七話 心機何転
猟奇エンドを強引に回避+リアル+何故か変わったプロット=難産
なお、猟奇エンドルートは可能性が低くなっただけで今後のプロット変更次第でいつでも行けることに。(いわゆる所のバッドエンドルート)
書いてもいいのよ?
「知らない天井だ…」
ベッドに寝かせられた状態で、もう何度目かの台詞を吐く。白い。だが病院よりは暗く、落ち着いた色。所々が飛び出ているのは梁というものがついているのだろう。
(というか今までの部屋には梁が無かったのか?)
建築についての知識は余り多くは無いが、それでもその事が良い事であると楽観視出来る程要領が悪く無い。些細な事では無いが、今の段階では些細と片付けてしまおう。
それよりも、この状況だ。梁が無い、と今までの建築の欠陥に驚くよりも先に今自分の置かれている状況の方が大変だ。今までの経験からして恐らく死にかけたのだろう、そう結論付けるのに時間は余り必要無かった。一度目は城壁の医務室、二度目は病院。三度目となる今回は一体何処にいるのだろうか。
この場所が何処なのかを大雑把にでも把握したい。上半身を起き上がらせ、視点を高くする。
チクッ
「痛っ」
首筋に何か痛みを覚え、反射的に顔を顰める。恐る恐る首筋に手を伸ばすと、何か針のような、細長い物の形が触覚から想起される。手を触れ続けていると、ジワリ。人肌程度の温もりを感じてきたので恐らく金属であろう。
(にしても、何で首筋に針?)
頭に浮かぶは一つの疑問。針を扱った療法がある事は知識として持っているが、それだとしてもたった一つの針で出来るのだろうか。
「お、起きんした。」
男性とも女性とも、若いとも老いているとも言えない声。落ち着いた口調で、いかにもな余裕を持ち合わせている雰囲気を醸し出している。誰だろうか。
「正常に…戻りてありんす。大丈夫ですか、セイジョサマ?」
その声の元は女性…それも私と同じような背格好をしている。灰色の髪の毛は、腰まであるポニーテールで纏められており、その大きさからかなり目を引かれる。少し吊り目で目尻に…赤いアイシャドウ?をつけているので、少し怖れの感情が湧き出てきてしまう。
「あなたは…?」
「ああ、わっちかい?わっちは…ふむ、しがない獣売りでありんす。」
「ケモノウリ」
「そう、獣売り。」
自分に言い聞かせるかのように呟くその姿は、そこはかとなく胡散臭さを感じる。橙に近しい色の刺繍が入っている白い小袖と赤い袴も、拍車がかかっているように思えてしまう。
(というか小袖と袴って何?ここにそんなのがあるのか?)
一度抱いた思考は、そう簡単に消えない。明らかに日本風の衣装は、今のところ日本から来た人が多いのであろう聖女と何かしらの関連が考えられる。
(確か4代目辺りの聖女はサブカルチャーをやっていたんだっけ?だとしたらその辺から広まったのか、若しくはそれ以前以後…恐らく以前は無さそう、とすると以後?となると5、6辺りになるのかな)
唐突に服装に目を凝らしながら思考の海へと沈んでいる姿を見ているのであれば、何かしらの声をかける人が多いだろう。そのケモノウリ…ああ、獣売り…は少なくとも多数派の人間のようだ。
「主さんはすぐそう思考を始めんし、よくないことでありんす。」
唐突に、されど適切に。獣売りはそう指摘する。何処かで会った事があるのだろうか。信号からの答えを待つ。
(あ、もしかして、あの時の?)
思い起こされる情景は畏怖の視線。一人の信者…狂信者?の誕生の瞬間、一般の人が目にした初めての聖女の姿。声をかけられただけで自身の行動を阻害された。雄弁にその怖れを、畏れを、恐れを語った顔。最高に気分がいい。
「ああ、そう。セイジョサマ、ココはわっちの家でござりんす。狭いと思いんし、くつろぎしんす。」
「そう、ありがとう」
「うぬ。」
互いに軽く会釈をし、獣売りはこちらに背を向け歩き出す。ポニーテールが付随するように弧を描き、髪留めとして白い布を筒状にしたモノを使っているのが見えた。
さて、と辺りを見渡す。キョロキョロと首を動かし、網膜に焼き付けようとする。
先ず目に入ったのはかなり太い大黒柱。今いる場所からそこそこ離れているだろうに、それでも異様な程大きく見えるその柱は中身がくり抜かれており、そこにランプが埋め込まれている。
柱から目を離し、左に視線を寄せる。そこで初めて、今いるこの家は八角形の形をしている事がわかった。何故なら、壁が柱を中心にぐるりと八方向に囲まれていたから。その壁一つ一つは多分かなり大きいのだろう。柱の左側には包丁やまな板のある、キッチンと形容するより調理場、若しくは板場の方がしっくりくるような場所。その奥、調理場の左には扉。場所から考えて恐らく冷蔵庫。
(いや、オールどころか一部分でも電化になっていないのにそれはないだろう。氷室みたいなやつだろうか)
視点を動かし右手に向ける。扉だ、それも先程のモノより豪華。玄関扉なのだろう。よく見ると一段低くなっている。その奥、またもや扉。恐らく扉。柱に隠れて絶妙に見えず、確証はもてないが、取っ手が見えるので十中六七位はあるだろう。
手前に目をやる。私がいるのはベッドの上。そのベットは横、右手にある。目測で測ると私の今いるこのベッドと規格が同じ。どちらもしっかりとした造りをしていてそう簡単には壊れ無さそうな事が素人目にもよく分かる。視点を少し上に向ける。玄関扉の左側、私から見て右側のこの壁には窓が。それもかなり大きい。現代建築と大差無い程大きい。
(あ、でも確か昔もガラス窓は結構大きかったのかな)
如何なのだろう、と思考を巡らすも、何も得られない。勉強が足りない。その事実を痛感しつつ、勉強が出来ない、或いは途方も無く難しいだろうこの世界では無理な話である事を妄想する。
その妄想は、須臾の時を永遠に変えた。
デザイナーズハウスに本当に住む人っているのかな、少なくともこの巫女もどきはそうらしい




