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第三十三話 ギルド長の今まで

ここ一週間の間ギルド長室に来なかっただけで、目に映るもの全てが新鮮に思える。木目からして違う机、縦も横も分厚い本の詰まった本棚、書類仕事をする道具と年季の入った棚。ギルドのものであろう紋様の刻まれた窓枠は西陽を受け、ソレを背に佇むギルド長の尊厳を見せている。


「さて、メイくんに来てもらったのは他でもない。キミが一任している学校なのだが…人手、足りていないのだろう?」


前置きも何も無く、ポンと内容だけを直接聴いてくる。これは憶測になるが、人手が足りていないことを何処かから聞き出し、根回しをしようとしているのだろうか。ギルド長の優しさに癒されつつも、半ば確認のように聞いてくる質問に答える。


「はい。足りていません。」

「そうか、ではどこが足りていないのか教えてくれないか。」

「はい。まず、学校の仕事は大きく分けて二つの仕事から成るので、その二つの仕事に別れたいです。書類を作ったりする仕事と授業をして何かを教える仕事。この二つです。」

「なるほど、つまりキミは授業をする仕事を誰かにやらせたいということか?」

「…よく分かりましたね」

「そうに決まっているだろう。そういやメイくんは、自分の体を労っているか?」

「いえ、特には…」

「それは良くない。今までに何度も見てきた。自分の事を顧みず、誰かのために尽くし、体を壊して尽くすこともできなくなったやつを。特にメイくんは体が弱いんだ。頼れよ。」


昔を懐かしむような口調で、苦虫を噛み潰したような、ギルド長がしなさそうな表情を浮かべて私に語りかける。ギルド長の今までは分からないが、その[今まで]に起こったことが僕への心配に拍車をかけているのかもしれない。


「おっと、すまないな。こんな柄じゃ無いのに、説教くさくなってしまった。」

「いえ、私の心配をしてくれているのでしょう?十分に伝わりましたよ」

「そうか、それは良かった。では、休んでくれ」


先ほどとは打って変わって優しげな、それでいて憂いを帯びた表情でいつものように振る舞う。沈みつつある西陽を背に小さくなっているその姿は、僕の頭に焼きつくには十分な光景だった。


「それで本題は授業をだれかにやってもらうということだな?」

「はい。それでお願いします。」

「わかった。それで、だ。希望はあるか?」

「希望?」

「そうだ。俺が来たとしても何もできないだろ?こういうことができる人がいいとかあるなら、しっかり言っておけ。」

「そうですか…そうですね…」


(最低限文字の読み書きはできて欲しい、それでいて書く字は綺麗に…コレはまあそこまで重要視しなくてもいいかもしれない。黒板は今のところそんなに使わないし、丁寧に書けばなんとかなる。異性か同性か…はまあいいかな。性別で能力に差があるとしてもここではそんなにだし…あ、でも声は大きめの方がいいな…魔法で代用できるのかな?できるならいいけど、多分魔法使うと何かしらの代償があるからなぁ…それを踏まえて考えると声大きい方がいいな)

そんなこんなで悶々と唸ること数分。捻り、動かした上で弾き出した結論は


「読み書きができて、声を張れる人でお願いします。」

「…読み書きができて、声を張れる。メイくん、コレだけでいいのか?同性の方がいいとかは無いのかないのか?」

「はい、そこは特にいいかなって…」

「ああ、まあそうだな。…そういうことには至らなそうだし」


こちらの全身をまじまじと見つめるギルド長に、何故か無性に怒りが湧いた。なんだその視線は。

何故か湧き出てきた怒りが収まらないままギルド長室を後にして宿の自室と化した部屋に向かう。鍵を開け、中に入る。ご飯を食べて、久しぶりにシャワーを浴びて、今日は早めに寝よう。そう考えていたが、ご飯を買ってきていなかったので買いに出かける。ちょうど近くにあのイモモチみたいなやつがあったのでそれを買う。


「お嬢ちゃん!毎度ありがとうな!ほらこれ、サービスだよ!」

「ん?ありがとうございます!」

「いいっていいって!オレにゃ似合わないからさ」

「コレは…アクセサリーですかね?」

「ああそうなんだ!オレの友達がさ、鍛冶屋なんだよな。それでアクセサリー作りテェってなって作ったのがコレなんだよ」

「鍛冶屋さんがですか?」

「ああ!まあ詳しいことは分からんな、オレは鍛治を専門にやってんじゃないしな!」


ガハハと豪快に笑う黒髪のおじさんとの軽い会話を経て宿に戻る。

(いつ食べても美味しいなぁコレ)

イモモチみたいなヤツを食べてお腹を満たし、体から何かが抜ける感覚にも慣れてきたシャワータイムを済ませて、ベットに早めに潜る。魔法を使っているのであろう光を消し、目を閉じる。

ぼんやりと脳裏に浮かぶは、日中目に映したあの本。こちらの世界の言語ではない日本語を用いて書かれたあの文章。あの謎を解くには聖女について詳しく知っている人に会う必要がある。それは王様、若しくはそれに近しい立場の人。この本の出版者も知っているかもしれない。明日になったら、ギルドちょうにきいてみ…よ……う

疲れが溜まっていたのかすぐに眠りについた。

案の定熱を出した。ごめんギルド長。

ここまでがテンプレ

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