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第三十二話 驚きと発見と大男

この本の内容だけで多分3話くらい書ける


「崩されすぎ…掠れて読めない…これいつの時代のものだ…?」


ドキドキしながら読み進めた文は、そのほとんどが掠れていたり、崩して書かれていた為、読む事が出来ない。仮に読めたとしてもできる解釈の択が多く、真に読めたと言えない。

(保存状態が悪い…と言うわけでもなさそうだ)

本文は綺麗で整っている活字で作られており、日本語では無く異世界語で書かれている。又、あちらとは筆跡から書き方も違っており、同じ人が書いた本とは思えない。つまり、これで合っているという事になる。

これからを変えるという確信を持つには早計過ぎた。心の底からガッカリして本文…記録に目を通してみる。書かれているのは日時内容体調と言ったその日のデータ。あまり面白味がない。

(まあでも、[記録]だろうからそんなものか)

とは言え久し振りの活字だ。存分に味わう為に読み進めてみる。するとこの記録、言葉を選んで言うと狂っていた。まず、一日の内容が一秒単位で書かれているのだ。タイムスケジュールが細かく分かれているのかというとその様なものではなさそうだ。次に、トイレに行った回数から咀嚼回数の平均、一分間でした瞬きの回数、抜けた髪の毛の本数まで。取り敢えず一日でありとあらゆるデータを集めました、みたいなことも書かれている。コレに記録された聖女は何代目か知らないが、扱いが悪かったのか。いや、寧ろ良過ぎた(・・・・)のかもしれない。

(ん、なんだコレ)

目に留まり、疑問を持ったのは二つ。一つは23:45〜4:10という表記。二つはこの[夜]と書かれている何かの行動内容。一体コレは何なのだろうか。夜の時間帯であることは分かるけどそれじゃあ夜って態々書く必要あるのだろう。では、夜を表すのでは無く、夜にした何かという事になる。

(まあいいか、それよりも気になるのはこっちだ)

この二十四時間表記。少なくともこの本が書かれていた場所では時計があり、その時計はかなり正確に時間を測っているという事だ。

(時計…)

ふと受付のカウンターを眺める。いつの間にか影は縮み、照らしてくる日光は僕の目を細めるのに十分な光量だ。細めた瞳に入る情報はごく僅かだが、僕の虹彩はしっかりとソレを映し出す。


「…と、時計…?」


カウンター奥にある為か細かいところは見えない。だがあそこにあるのは間違い無く時計、振り子時計だ。一体何故。その疑問は一つの脳内情報が回答する。

(そういやココ、国が建てた建物だっけ)

断片的な情報から推し量るに、多分聖女は国の中心付近。特に王に会う事が難く無いような場所に住んでいたのだろう。そうなると、この国には時計がある。私はあまり他人の家に上がり込んでいない為に一般家庭に普及していないのかどうかが判断出来ないものの、少なくとも存在している。

(流石に時代が時代だろうし、時計くらいはあるか)

そう思ってまた本に目を戻す。そこそこのペースで読み進めていたけれども、まだ結構なページがあるので、今日のうちに出来る限り読み進めておこう。そうも思ってページを捲る。が、すぐに飽きる。飽きてしまう。

(同じ様な内容がずーっとあると滅入っちゃうな)

本を閉じ、元あった位置に戻す。時計があった場所を目で探し、時刻を確認してみる。


「…5:26。午前か午後かは…分からないのか」


文字盤に書かれているのは十二個の数字のみ。午前か午後かを判断出来るのは空を見るしか無い。この振り子時計には午前と午後の区別はつかない種類のようだ。

(判別付くヤツがあるかは知らないけど…)

それよりも五時だ。まだ時間はある為、もう少し本を読もうと本棚に向き直る。

(さぁ、何を読もうか。コレは英雄譚かな?コレは…天動説と地動説のお話?いや、学術論争っぽいかな。おっ!コレ知ってる。タイトルは…魔物図解。チェガーさんがそういや言ってたな。コレがそれか)

本棚を物色してウッヒョーと声を漏らしていると、突如夜が来る。否。釣瓶落としは今の季節には早いはず。つまりは、後ろに誰かいる。


「…」


何も話さない。僕がしゃがんでいる為か後ろの人が巨躯なのか。或いはそのどちらもか。それでも音速を超えるほどのナニカをする可能性は低いだろう。ならば、ナニカされる前にこちらから行動できる。

大きく息を吸い込み、吐き出す。深呼吸を幾度か繰り返し、ついた決心が揺らぐ前に振り向く。


「ああ、メイか。あんた体ちっちゃいし、本棚の前にいるから子供の泥棒かと思ったよ。」

「ギ、ギルド長…驚かさないでくださいよ…」


振り向いた先に立っていたのはギルド長だ。今までと変わらずこのギルドの大半を占める暑苦しい屈強な男達のリーダー格として相応しい体躯と貫禄、実践経験を持つこのギルドの長だ。


「どうしたんですか、ギルド長。何かお話があるのでしょうか?」

「ああ、そうだ。学校の件なんだが…」


ギルド長の声が詰まる。僕の顔つきが変わったからだろう。自分の顔の無意識下の動きを意識した僕には分かる。


「それで、お話とは?」

「…ここでは人が多いな。よしギルド長室に来い。そこで話す。」


依頼を達成した会員がゾロゾロと帰って来ている。それを見て判断したギルド長は奥に消えていく。


「学校…何があったの…?」


…クヨクヨしていても仕方がない、と足を一歩踏み出すのにどれほどの時間を要したのかは言わないでおこう。

はいッ!毎日投稿終わり!

お疲れ様でしたッッ!!!

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