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ちょっと一息 前代聖女の日常

Q:誰の一人称視点でしょうか?


「ああ!もう!ウンザリ!」

「聖女様、その様な言葉は聖女様らしくありません!」


今日も今日とて聖女様の声が響く。いつものことだが、これがいつも続くとなると痛い頭は比喩ではないだろう。


「何よ!あたしはあんたたちの言う聖女様よ!あたしが!聖女様!!なの!!!らしくって何よ!」

「それは…」


言い淀んでしまう騎士。それもそうだ。現在の聖女様は1人だけ。聖女らしくするとなると、今の聖女様が伸び伸びといること。それが聖女らしいふるまいである。だが、その前に聖女様は彼女ただ1人だけでなく、歴史上何人かの存在がある。記録はいまの王国になってからとり始めたそうだが、それでも6人いたそうだ。


「言いたいことは分かるわ。今までにいた聖女、これから出るかもしれない聖女のために、顔をつぶすわけにはいかないのでしょう?」

「分かってくださいますか…っ!」

「いいえ?言葉として理解はしているけど、あたしはそれに従わないわ。」


そういって聖女様は騎士を一笑し、部屋に戻ろうとする。貴族の女性のたしなみの1つであるロングスカートをワガママで履いていない聖女様は、おてんば、と言う言葉がよく似合う普通の女性だったのだろう。しかし、その異質な声が、不可思議な思考が、彼女の人生を変え、聖女にしてしまった。聖女は王国の中心部に送られ、われわれ騎士団に所属された。本人は今の生活をどう思っているのだろうか。心配になり、たずねるも

『あたしは今の生活に満足だ。それに、ここなら人を殴っても怒られないのだろう?』

と何かひっかかる言葉ばかりがその口から出てくる。


「聖女様、申し訳ありませんがもう少し、もう少しだけ礼儀をわきまえてください。」

「これでもけっこうやってる方よ?」


言葉に詰まる。送られてきた時では、考えられないほどに自然な言葉使いと品位のある動き。自然に動き、言葉を話せるようになるまでには、どれほどの努力があったのか。飲み込みが早くても、その味を忘れないでいることは難しい。それを何年も。


「…わかりました、聖女様。これ以上は何も言いません。」

「!?しかし…」

「口を閉じろ。」

「…」


権力というものは忌々しい。同い年でも親友と断言できる人でも上下関係があると途端に態度が変わる。がしかし、今のように振りかざすことでだまらせることもできる。

(あるものは全て活用する…教訓だ)


「あら、珍しく物分かりがいいのね。」

「これ以上を求めるのは聖女様にとってあまりよろしくないものと思っただけです」


教訓その2。聖女様はこういった挑発に弱く、また負けず嫌いである。今までも同じような手を使ってばかりだったため、もう通用しないと思っていたが、しっかりと通用するようだ。余裕があるかのようにほほえんでいた顔から、笑いが消えている。


「そんなこと言われたら、あたしはできるまでやってしまうわ。で、何をしたらいいの?」

「…それは、コレです。」

「これは…ウィッグ?なんでこんなもの…って、ああなるほど。あたしのこの頭が悪いのね」


そう意地悪そうに呟いた顔は、どうしようもなく笑っていた。


「ところでコレ、どうやって付けたらいいの?あたしは頭の上に覆い被さるような帽子を被ってからコレを付けていたけれども?」

「では、そうしましょう。聖女様、もう少し具体的な情報をいただけますか?」

「そうね、では__」


そうしてはじまったいつもの聖女様との情報共有。今までのように抽象的だったりある一点にのみ異様に具体的でないため、すぐに終わる。書きとめた情報を元に作ることになったため、図面を作るよう上に報告する。そのために席を外そうとするも、声がかかる。


「ねぇ、もしあたしがソレをつけたら、あんたのトコの人たちと一緒に行動してもいいか?」

「ええ、そうですね。考えておきます」

「そうじゃねぇ、あんたと一緒にいたいんだよ…」

「?」


聖女様がそんなふうにものを言うなんて珍しい。だが上に報告し、相談する他ない。

(が、聖女様を戦場に送ることで、士気を上げることができるだろうし、聖女様のお声で遠征が楽になるだろう。できるだけやってみるとするか)

席を外し、上…王に報告する。


「失礼します」

「入れ」

「失礼します。本日はお日柄もよく、このように王にあいまみえたこと、誇りに思います。」

「して、本題はなんだ。」

「はい。本日、聖女様にかつらを付けさせるために必要なものがあるそうで、そちらを報告に参ったしだいです。」

「成る程、コレくらいのものなら裁縫係に作らせるか」

「ありがとうございます。そして、本日はもう一つ、報告がございます。」

「?なんだ、言ってみろ」

「はい。聖女様を戦場に送るということです。なぜなら、聖女様のお声は魔物をしりぞけ、その存在はわれらの士気をあげてくださるだろう。そう感じた次第です。」


王は黙りこみ、考えるようにあごを撫でる。影が少し短くなった時、王はこう口を開いた。


「成る程。いいだろう、その案を認可する。だが、管理はそちらでするのだぞ。」

「はい。ありがとうございます。」


頭を深々と下げ、感謝の意を示す。そしてその部屋から自分の所属部署へ帰り、今回のことを報告する。

聖女様は、頬を紅に染めていた。

A:______。一応本編に名前が出ている。

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