表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/41

第二十八話 聖女の声の活用方法


「それでは、これにて二時間目の授業を終わります、礼。」

「「「ありがとうごさいました」」」


実験的な二時間目の授業が終了した。実験的という皮を被った見切り発車だったが、かなりうまくいけたと思う。


「それでは、今から私の合図があるまで休憩です」


さっきの事からしっかりと学びを得ているからか、ムンドボーデンくんは学校の外にでて行くような事は無かった。それでもウズウズソワソワしている為、リタと少し話をする。


「リタ、あそこにいるムンドボーデンくんに少し付き合ってくれない?」

「ん、承知。」


そう簡潔に伝えられた。本来ならば僕が教師という立場にいる為、自分自身がするべき事なのだろうが、生憎、今の僕には構えるだけの体力が無い。なのでリタを使った。

(…ごめん、だけど理解があるのは君だけなんだ)

心の中で謝りつつ、職員室に足を進める。引き戸を開け、机に向かって二時間目の授業と忘れていた一時間目の授業の報告書を書く。

暫く紙を汚す音に耳を傾けていると大体十分ほどが経過したと思ったので、職員室を後にする。


「はい、休憩はおしまいです、席に着いて下さい。」


お貴族様はしっかりと座っている。シャウンちゃんも席に座っているが、ムンドボーデンくんを少し心配しているようだ。ムンドボーデンくんの顔色を覗くと、少し心配になるくらいの青さをしていた。


「ムンドボーデンくん、大丈夫?」

「あ、ああ…大丈夫…大丈夫だ…」


(ん?本当に大丈夫そうだ…)

しかし顔色が悪い、ムンドボーデンくんについての記憶している限りの脳内記録を探る。

リタだ。アイツがなんかしたのだろう。それに、リタ…他人に対しての恐怖や恐れなんかならば顔色の悪さに反比例している様子を説明できる。

たが、それはそれとして具合が悪そうなのでムンドボーデンくんを別の部屋に移す。


「私はムンドボーデンくんを保健室に連れていきます。皆は教科書のp10〜p15を読んでおいて下さいね」

「ん、」

「ふん、コレだから平民は」


(その思考がいけないんですよ貴族様?)

心の中で威圧をしつつムンドボーデンくんの肩に手を掛けて歩かせていると、意を決したようなシャウンちゃんがこちらに声を掛ける。


「あ、あの…せんせい?」

「ん、何でしょう?」


不安そうに揺らぐ瞳。駆り立てるような焦燥が口を強張らせ、無意識のうちに手を後ろ手で繋ぐ。

息を吸い込み、未だ残る不安と、それを上回る何か別の感情を瞳に乗せ、僕の方を見る。ゆっくりと、振り絞った勇気で緊張を解して口を開く。


「モンド君は、大丈夫ですか?」


()はゆっくりと微笑み、こう返す。


「大丈夫ですよ、」


絶対に。

……

………

さて、歌舞伎役者並みに切った見得は、ハードルを高く上げて行くだろう。しかし、これから行う事は治療と言えばそうだが、治療は治療でも精神に関する方だ。まず、リラックスさせる。前に本で読んだ事だが、アロマセラピーなんかがリラックスに良いらしい。がしかし、生憎なにを使っていたのか知らない。もし仮に知っていたとしても、この世界にあるかどうかは別だ。今のところ、魔法という僕が居た世界には存在し得なかったモノが、この世界にはある。つまり、その逆…今までいた世界にはあるが、こちらの世界には無い、という物があるかもしれない。若しくは、存在し得るが手が届かない程の高級品か、物理的に手の届かない位置のやもしれない。

(しかし今はどうでもいい。今できることをやるのだ)


「ムンドボーデンくん、息を吸って…吐いて…吸って…吐いて…」


僕の合図に合わせて深呼吸をしてもらう。僕の力でリラックス状態にしても良いが、先日のあの人達の反応からして強制的に矯正されるらしいので、今やるとさらにパニックになる。それは避けるべく、なるべく自分自身も落ち着かせる為に、僕も深呼吸をする。


「吸って…吐いて…吸って…吐いて…吸って…吐いて…どう、落ち着いてきた?」

「…あ、ああ…落ち着いてきたぞ…」


確かに落ち着いている。しかし、まだの様だ。軽いトラウマの様に記憶にこびりついている可能性が出てきた。トラウマは良く無い。何故か。それは思考が制限されてしまうからだ。トラウマにより思考が硬くなったり、今日の学校での出来事がフラッシュバックする事で学校を恐怖の場所としてしまう可能性があるからだ。


「先生?顔怖いぞ?」

「え?」


気づいていなかった。これではいけない。子供に不安感を与えてしまう。慌てて笑顔を作って接しようとする。が、ムンドボーデンくんの心の不安は消えていない。自分の至らぬ点を悔やんでいると、ムンドボーデンくんは僕にこんな事を言った。


「先生。俺に魔法をかけ…かけて下さい。」

「魔法?」

「あの、えぇと…俺を学校に引き戻したやつです!それで、落ち着けーって…」

「…良いの?」

「やってくれ、下さい。先生。

授業、楽しかったから…もっかい、やりたいです」


分かった、と。短く紡いだ言葉の後にこう繋げる。


『先程のことを忘れて、お眠り。』


十分休みにあったこと

モンド「遊びてぇナァ〜」

リタ「やる?」

モンド「やる!」

リタ「ほい(銀級のトレーニングという名の過酷な修行)(銀級との全力模擬戦)」

モンド「あああああああああああああああああああああああああああああ」

リタ「遊ぶ、とは一言も話してない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ