第二十五話 ヘリウム問題点
公立の小学校はまず子供を座らせるところから教育するらしいですよ
「…疲れた」
僕の口から漏れ出したのは、今日一日中教師としてやった感想だ。何故こうなったのか、理由は幾つかある。
一つ、躾だ。この世界では決して幼いとは言えない子供を躾けることがほぼないのだ。貴族の子は例外として、残りの三人は話を聞けていなかったり、席に座ることができなかったり、僕の背後に回ってきたり…どんちゃん騒ぎになっていたため言う事を聞かせることが難しかった。
(でもシャウンちゃんはどちらかと言えば緊張から来ているものだからなぁ)
二つ、授業の構成だ。基本的に五時間も座って勉強の話を聞けるとは端から思っていない。そのため、体を動かす授業を取り入れてみたが、こっちもこっちで話は全く聞かなくなるため見通しが甘かった。構成自体はよかったが、想定のハードルが低かったのだ。
三つ、昼食。ご飯を持ってきたのは一人のみ。他の三人は持ってきていなかった。近くに屋台があったので購入することで済ませることができたが、これ以上多くなってしまうと僕の懐からは出すことが難しくなるだろう。だから、これからは昼食各自持参してくるように頼んだが、しっかりと持ってきてくれるとは思えない。
(幾つかある理由だけど、これが大まかなやつかな)
この他にも廊下を走るなとかご飯を口に入れている間は黙って食べろとかマナー的なものもあるけども、そっちはこれから教え込めばいいなら除外する。
「まぁ、そうだよね」
これらは全て最初から想定できたであろうが、すぎたことは仕方ないのでこれからのことについて考える。
まず躾。これは取り敢えず色々と教えてみようと思うけど、ただ一方的に教えるのでは覚えられないので、頑張って体を使ったり、質問に答えたりしてもらいながら授業していこう。
次に構成。これはそこまで悪くなかったため、このまま続けようと思う。改善案としては五時間ではなく三時間にしてみたりするのが手っ取り早いか?
(いや、それだと昼食を用意してくれた意味が薄いか?しかし、それでは学校で食べる事を想定して作ったのだろう昼食が最高の状態で食べられないので、少し良くないな…アイツみたいな子は居ないとは言い切れない。それに、ご飯を一緒に食べているところから話の幅を広げていくことが出来そうだしな…)
「………さ…」
(それに三時間にした場合は、躾の時間も取られるから実際に授業をして教えられるのは出来て一時間だろう。三十分もいけば良い方になるかもしれない。だから、やはり五時間にして…いや駄目だ、集中力が持たない。では、十分休憩でも入れるか?それが一番良い方法な可能性はあるな)
「メ……ん」
(そうなるとメリハリもつくだろうし授業が延々と続くよりもこちらの負担も軽い。いや、しかし五時間もあるのはキツイだろうし四時間とかにしてみるか?それなら昼食の時間も取れるし集中力を保つことができるもしれない。)
「メイさん、おーい」
「うわ!?」
「こんばんは、メイさん。お久しぶりですね」
そこに居たのはチェガーさんだ。そう言えば、と僕は思い出す。ここは一応僕が作った学校となっているが、全面協力をギルドがしているため、しっかりと成果を上げないといけないのだ。元は廃屋とは言えリフォームしてこちらの要望にもかなり応えてくれたのでこちらからもそれ相応のものをしなければいけない。
「ここに私が来た理由、もうお分かりですね?」
「はい」
「そういう事です。報告をお願いします。」
そう言って細い手をこちらに伸ばして催促する。それ相応のもの、それは学校についての随時報告だ。学校を作ることのメリットがデメリットを上回ることになれば、ギルドが国に学校を紹介し、国で管理してもらう事になるからだ。ギルドも一応国の一部ではあるが、どちらかと言えば役所に近しい。そのため、三権は国にあると言える。つまり、僕の功績次第で僕が過労で斃れることが無くなるだろう。そうならないためにも、僕は結果を出さないといけない。子供と情勢という不確定要素蔓延る中で。
「えっと…あ、これですね。はい、今日の分です。」
「……はい、確認しました。」
「お疲れ様です」
「はい、お疲れ様です。…あそうそう、次回からは私ではなく別の人にお願いしてもらっております。お気をつけて。」
「分かりました、お疲れ様です」
チェガーさんが職員室兼自室を出ていき、学校の玄関の閉まる音を響かせる。僕はふうと息を吐き、緊張を解す。やっぱりなれない。僕はあんな感じよりももう少しラフだったりフレンドリーに話しかけて欲しい。ビジネスライクな感じは息が詰まる。
「…よし、明日の準備をしよう。」
…明日がこの世界での休みの日である事に気づくまで、あと十二時間。
聖女の持ち込んだもののうちの一つ、太陽暦。
というか異世界というよりかはifに近いので物理法則なんかは大体同じです
ある一点を除いて