第十五話 戦いの後
更新遅れてすみません
「…知らない天井だ…」
真っ白い、まるでこの町に最初にやってきたときに見た門の内部のようだ。なんだか懐かしい想いがしたが、それとともにあることも思い出した。
あの戦いを。
あの後どうなった?なぜ生きている?どうやってここまできた?極大小鬼はどうなった?
いろいろな思いがぐるぐると駆け巡る。動悸は激しくなり、息が浅くなる。吐き気がしておもわず吐いたが、唾液も出なかった。
そんな騒がしい音で気がついたのか、誰かが近寄ってきた。
「あらあらまあまあ、起きたんですか?」
そう言ってパタパタと近寄ってきたのは、白衣を身に纏った女医がいた。黒い髪の毛を頭の上の方でまとめていて、琥珀のように鮮やかな目はこちらの様子を見つめていた。
「大丈夫ですかー?お話しできますかー」
「…」
喉が乾燥して声を出せない。無理矢理にでも出そうとすると掠れた咳がでた。唾液も出なかったのはそのせいか。
その事を見透かしたように女医さんはよれた白衣をパタパタと靡かせながら奥のスタッフルームに水をとりに戻り、持ってくる。
「あら、あんまり一気に飲むと…」
「ゴブッゴハッゴボッ!」
「あらあら、口の中が乾いているのでしょう?あんまり一気に飲むと、吐いてしまいますよー」
「ゆっくり飲みましょう?ね?ゆーっくりゆーっくり」
「は゛い゛…゛」
そう言ってまた持ってきた水をゆっくり飲む。じんわりと喉が潤っていくのがわかる。ぷは、と息を吐いて落ち着いたのを確認してから、女医さんはゆっくりと話し始めた。
「あなた、倒れたようなのよ。魔法の使いすぎによる魔力不足で、ってタンクの方が教えてくれたわ。でも、魔力不足で倒れることは前例がなくて、直前まで別人のように振る舞っていたことから、そっちに問題があるのかもしれないのよ。なにか、心当たりはありますー?」
ゆったりとした、それでいてしっかりと私を見据えた口調で問いかけてくる。琥珀色の目の中の細い瞳孔はしっかりとこちらを見つめていた。
しかし、僕はそんなところに目は行かず、別のところで固まっていた。
…別人のような?え、そんなのあった?
その言葉で僕の頭の中は真っ白に染まる。その白色を頑張って洗い落とすと、先の戦いの記憶が途切れ途切れに出てくる。
それも、私が知らない光景を。
「そういえば…」
「心当たりがあるのかしら?」
「はい、そういえば、私は極大小鬼と戦っていたのですが、途中で気を失ってしまって。ですが、気を失う直前、自分の口から『誰が動いて良いと言った?』という言葉が出てきたのです。」
自分でも何を言っているのかわからないが、実際にそうだったのだ。信じてはくれないだろうけど。
「…なるほど、つまりその…その言葉が咄嗟に口から出てきたのですね?」
「はい、そうです」
「ふむ…では、その言葉に覚えがありますか?」
「いえ…特には…無いです」
「…」
そう言って女医さんは考え込んでしまった。名前も聞いてないけど、気軽に聞ける雰囲気でもないので、黙っておく。
数秒考えて、女医さんが出した結論は
「では、聖女症候群ですね」
「……はぁ?」