ちょっと一息 リタの戦闘
番外編です
リタ回ですよリタ回!
「…ふぅ」
山までの道のりは長く、それになんと言ってもむさ苦しい奴しかいない。息が詰まりそうになる。
よかったのは、もう少しで山に着くことだけ。
「ん、着いた」
「リタ!」
ギルド長に呼ばれた。僕が見てきたから呼ばれた?
「何か反応があったところはわかるか?」
そう言って地図を見せる。僕が記憶をたどっていくと、すぐに思い出して
「ん、ここ!」
と指差す。ギルド長はそうかそうか、と頷き指差したところにバツをつける。
「ここからは、一緒に来てくれるか?」
「…ん、いいよ」
むさ苦しいところにいたくないので二つ返事で答える。
しばらく歩いていくと、魔物が現れる。大小鬼が十数匹ほど。
「ん、僕がやる。下がって。」
そう言ってギルド長らを下がらせ、僕は背中の大剣を手に取る。
「…身体強化、加速、付与【炎】」
身体中から力がみなぎる。その力は胴体から手足、指、爪の先まで行き渡り、僕は飛び出す。
大小鬼の間合いに入り込み、
「切断。」
身体中から力が湧き出る。湧き出てきた力が剣身に集まり、だんだんと剣身が真紅に染まる。染まりあげたそれを相手に向かって渾身の振り下ろしをする。
大小鬼は消えた。
「はっ、あいも変わらずいい火力だこと、」
「ん、ギルド長、まだいる。」
「おっ、来たか…今度はやらせろよ?」
「ん、早い者勝ち」
そう言い終わると僕は全力で走り、魔物を全て断ち切る勢いで倒していく。ギルド長も負けじと殴り飛ばす。
それを見ていた別の会員も各々の武器で消し去る。
そんな感じなので小鬼らは全く見かけなくなってしまった。ガッカリしながら道中を駆けていくと、反応があったところに着く。
そこには……
「おいおいおい、」
「デカすぎんだろ…」
「ん、やばい。これ」
何か巨大なものがいた気配がしたので、皆に指示を出してすぐに隠れる。そして、陰から覗いてみる。
すると、そこにいたのは極大小鬼が数匹、しかも武器持ち。こいつらは本来一匹ずつしか湧かないし、湧くにしても武器は持たない。
つまり、
「スタンピード確定だな、」
こういうこと。
「剣士、二手に別れて巣穴探しとあいつの討伐をしろ。魔法使い、これもまた二手にわかれて巣穴があったらそんなかに魔法をぶっこむのと、剣士の補助だ。俺はリタと突撃する。」
「わかったな!?」
「「「「「応!!!!!」」」」」
基本的にここに集まっているのは屈強な男どもなので、あっつ苦しいなぁ…、そう感じる。でも、そんなここが好き。
巣穴を捜索すると、先に極大小鬼がやられる。一人一人の力は弱いけど、結束力がとても高い。いいな。その後しばらくすると、バタバタと他のも倒れる。巣穴はそいつら全員倒さないと出てこなかった。おそらく魔法使いの小鬼がいるのかな。
魔法使いに頼んで魔法を色々投げ込んで貰う。赤、青、黄色の虹色に燃え盛る巣穴からは無様な断末魔が聞こえる。
断末魔が響いている間に身体強化、加速、付与【炎】の魔法を使っていつでも突撃できるようにしておく。
断末魔が聞こえなくなった、そう思うよりも早く巣穴に突撃する。ギルド長もきた。
「ん、目の前、大小鬼、…19」
「あいよぉ!粉砕!!」
そう言うと拳がカッと光り、その後燃えるように光がゆらめく。光の色が変化していき、変色した光る拳を打ち付ける。大小鬼どもが消え失せる。骨も残らないし、断末魔も聞こえない。さすがギルド長。さすギル。
「次!極大小鬼1!」
「ん!」
僕が今できる中で魔物への最大火力を叩き出す。剣を頭上に振り上げると、ホワホワと光が集う。振り上げた剣がだんだんと光り輝く。剣の真ん中が少し窪み、丸みを帯びる。剣の形と色が変化し、淡い光を発する。最近覚えた新技…
「聖なる剣!」
そう言って振り下ろす。対魔物最終奥義の『聖なる力』であるため、驚くほどスルッと斬れる。
逆に地面に刺さってしまうのかハラハラしたが、そんなことはない。極大小鬼は簡単に倒せた。
そんな事を繰り返していると、最奥につく。
「まだ行けるか?」
「ん!いける」
「はっはっはっ!そうかそうか!頑張るぞ、」
目の前の扉を見てギルド長は言う。その扉は人のようなものが描かれているが、どれもこれも悪趣味なものばかり。この先は間違いなく王の間と言うことになる。僕らは迷うことなくその扉を開ける。
開けた先に待っているのは、だだっ広いだけの空間とその奥でとんでもなく煌びやかな玉座に踏ん反り返る王と背後の文明が感じられないような壁画は絶妙にあっていなくて狂っているよう。
あまり大きくはない身体から伸びる顔には、曲がりに曲がった鼻があまりにもアンバランスで気持ち悪い。着ている服はボロボロの高級品。おおかたどこかからの盗品だろうを手には僕のと同じくらいの大きさの剣と杖。
そんな王は僕たちに気がつくと雄叫びをあげる。
「穿突!」
「百連撃!」
雄叫びに怖気ずに攻撃する。相手に動かれる前に一撃をぶつけた。でも、王は見た目に反して意外とタフ。その程度ではやられない。小鬼を次々と出していき、邪魔をする。
「ん、ギルド長、僕が小鬼の相手する。」
「わかった!王は任せろ!」
そう言ってにっ、と歯を見せながら笑う。うざい。
でも、ギルド長の方が相性はいいし、相手が小鬼だけならば対処は簡単。そのことは嬉しい。剣を水平に、そして後ろに構えて少し待つ。小鬼達が僕を殺そうと飛びかかる。そのとき、
「回転斬り!」
そう言って剣を振り回す。高速に振り回された剣は全てを吹き飛ばす勢いがあり、実際に小鬼は吹き飛ばされ、消える。ざまぁ。
でも、どんどんと出てくる。
僕は回転斬りでどんどんと倒す。息が上がり、腕が上がらない。そんな体に鞭を打ち、根性で立ち上がる。
どれくらい経っただろう。もう何回も倒しても現れるそれらの数を数えるのをとっくの前に辞めたとき、ギルド長が
「正拳ぉぉぉ!!!」
と叫ぶ。見ると、王がぶっ飛んで消えていた。さすギル。僕は残った小鬼をこれまた残った根性で全員ぶっ飛ばして一息つく。
「…終わったな」
「ん、終わらせた。」
「ははっそうかそうか、そうだな!」
かっこよかったけど、やっぱりむさ苦しい。