第十四話 スタンピード④
先ほどまで棍棒を振り下ろし、殺そうとしてきた極大小鬼はその姿勢のまま動きを止め、周りでタンクやヒーラーが戦っていた小鬼もそのまま動きを止めていきます。その様子をヒーラーやタンクはただただぽかんとしている。
…あ?何であいつらも止まったんだ?
あたしは残っている些細な疑問を持ちながらそのまま立ち上がり、周りを見渡す。
王都の様な盛り上がりを見せているところではない。要は辺境の町だ。辺境といえば、あたしは死んでしまったはずだが…?
そんな考え事は今するもんじゃねぇ、と頭を振り払い、目の前の、その馬鹿でかい図体のゴブリンに向き合う。
「あたしはあなたを殺す聖女…ですわ。」
『死ね!』
手をかざし、そう唱えると極大小鬼は体に入っている力が抜かれ、後続のゴブリンどもに背中から倒れる。
「…また一つ、迷える魂が救われました…」
確かあたしは聖女だ。こういうことをやれってアイツに言われ続けてたから体に染み込んでるな…
『とりあえずお前らも死ね』
今だに動きを止めているゴブリン共を殺し、聖女のふりをする。
…ああ!もう!めんどくせぇぇえええ!!
そんな言葉を口に出すわけにもいかず、にっこりと微笑んだ顔の裏で悪態をつく。
…ありゃ、そういや髪生えてるな
今更ながらあたしの体の違和感を感じる。頭が重いというのもあるが、今までよりも発言の重みがない!
「…こちらにも迷える魂がいらっしゃいましたか…皆様、一斉に殺して差し上げましょう。」
『死ね』
一旦周りのゴブリン共を全て殺した後、視線の先を睨む。
「「「「…」」」」
「…あら、どうかされましたか?」
「「「…」」」
「別に、あたしはあたしのできる精いっぱいの事をしただけです。あなた方がいらっしゃらなければ、この町は守りぬくことができませんでした。」
「そ、そんな事…」
あたしが聖女の真似事をしつつ、頭の上にある髪の毛の重さにイライラしていたら、
「あたしは…」
そのとき、違和感をまた覚える。いや、気づく。まずは頭の重さ。頭の上の毛髪は10万本、さりとて6μm。そんなに重さを感じる道理は無い。次に目線。下がっている。いや、骨格から変わっている?腕を見ると細い。細すぎる。筋肉と骨が無い。
そして最後に…
あたしは、すでに、死んでいる。
突如襲いかかる慢性的で圧倒的な力。体に感じる重さは変わらないが心にかかる負荷がえげつない。
「う…ぐ…がぁ…」
あまりの負荷に悲鳴をあげる。だがその声は掠れて誰にも届かない。あしに力が入らず、膝から崩れ落ちる。体がまえよりも重くかんじ、たおれそうな体をてで支える。あたまも回らなくなる。からだを支えられない。もうだめだ。
…
……
………
聖女は倒れた。
聖女様です。今後も忘れなければ出てきます
やったね!たえちゃん!