第十一話 スタンピード①
葬式行ってました。
すみません
「…えーっと、騎士…さんで、いいのかな?」
そう言っておじぎをしている相手は自分よりも一回りほど大きく、でも成人よりは小さいくらいの小さな子だ。
金髪のおかっぱに切れ目の碧眼。体の後ろに背負っている大剣は銀色に鈍く光っている。体はまだ未発達らしいが、体力は多く、こちらはまだ息切れしているが、向こうは全くしていないのだ。傭兵さんのように甲冑は着ていないが、肩や胸部、膝あたりなど、様々な部位にアーマーをつけている。
「ん、名前ある」
声が高い。女の子なのかな?と思いつつ、名前を尋ねる。
「なんていうの?」
「……リタ」
「へえ、リタちゃんか、いい名前だね」
「違う」
「? なにが?」
「リタ、男の子」
へ?
おとこの…こ?
言われてみれば、男の子にも見え…ないね
とは言え、そうは見えなかった。傭兵さんでさえ女の子だと思ったようだ。
「…男の子、なんだ…」
「ん、みんな最初はそういう」
少し悲しそうにリタくんは言う。
飼い主が仕事に行って寂しい、そんな感じの小動物みたいな顔をしている、
「…んで、いつまでここにいるつもりだ?いくら銀級だからといって長々と居られると困るのだが」
口を開いたのは傭兵さんだ。仕事をしっかりとこなしているかつ、こちらの気持ちを読んでのことだろう、気遣いもできるのか、と素直に感心する。
「わかりました。では、私が預かりますね。」
「ん、僕もついてく」
「そうか、気をつけろよー」
そう言って傭兵さんに別れを告げ、ギルドまでの道のりで話を聞く。
そんな事を考えて、ふと、疑問に思った。
「あそこで何をしていたの?」
「…山に登った。異変があったから。何もなかったから帰ろうとした。そしたら何かこっちにきたから怖くて逃げてきた。」
私の顔は今、どの青よりも蒼く染まっているのだろう、血の気がサアーッと引いていくのを感じる。
(なにけろっとしてんだ!)
何かわからないものがこっちに向かってくる以上、ギルドに報告せねばならない。私はリタの手を引くと、駆け出した。
「…大丈夫?」
「………」
息切れで何も話せない。頭が痛い。呼吸をひとまず整えて、ギルドのドアを開ける。
すると、そこにはギルド会員が大勢集まっていた。剣を持っている人、杖を持っている人、大きな盾を構えている人。何か議論をしている人たちに、本で何かを調べている人、受付嬢と話している人、色々いるがかなりの量がいる。そこの中心で取り仕切っているのはむさ苦しい大男…そう、ギルド長だ。
「会員の諸君!よくぞ集まってくれた。ここにいるのは純金級以上の精鋭たちだ。先ほど、山の方から何かしらの反応が魔道具によって確認された。なので、今からその山に向かおうと思う。剣士、魔術師などの攻撃職は私の方に来い。付与術式を専門で扱っている人がいれば、彼らにつけて欲しい。タンク、ヒーラー、罠師は町に残って傭兵と一緒にこの町を守り抜け。魔物の大量出没の可能性はかなり高い。万一に備えろ!」
穏やかだが、熱情がある、そんな話し声に
(こりゃギルド長みたいな上にいたほうがいいな)
と思いつつも、場違いにもほどがあるのでさっさと受付に行って薬草を渡す。合計で20本ほどなので銅貨300枚…銀貨30枚を受け取る。
「リタ、ギルドカード作るよ。手、出して」
「ん、もう持ってる。」
やれやれと首を振り、ギルドカードを見せてきた。そのカードは純金に光り輝いており、私以上の強さで驚いた。かなりの上澄みだ、そりゃ、偵察にもいくわな。
「で、リタ。…行く?山」
「ん、僕が撒いた種。自分で回収する。」
「じゃあ、行きましょうか、山へ」
そう言ってギルド長のところへ歩いていく。ギルド長は私たちに気付くなり、ムッと眉をひそめ、その後瞬時に割り振った。私は、タンクとともに魔物たちの町に入らせないようにするための足止め、リタは前線で戦うらしい。ああ見えてギルド長と渡り合えるそうだ、しかもまだまだ成長期なので、そのうちギルド長を抜くかもしれないと、あるタンクが言っていた。
各々で昼食という名の作戦会議をして、ギルド長の元へと向かう。
「諸君!それではいざ、出陣!」
そう言って戦闘職が門から外に飛び出し、道なりに進む。見えなくなるのにさほど時間はかからなかった。
「さて、私たちも守りましょう。この町を」
「「「「「はい!」」」」」
全員やる気はかなりある、門の前でタンクは盾を構え、ヒーラーは前線に。それよりも前には罠師が仕掛けた罠がある。
ちなみに魔物には回復魔法がよく効くらしい。私も使いたい。
なお、ギルド長は私は大型の魔物が出た際のストッパーとするらしい。
(え?僕、実質初戦闘ですよ?)
でも、ギルド長からの直々の願いだ、大人しく受け入れよう。怖いし。
そして全員が持ち場についた刹那、足音が聞こえる。
魔物の大量発生の開催だ。