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第一話 転移、ときどき会合

私の処女作となります【転移しちゃったTS少女、『聖女の声』を手に入れる。】に興味を持ってもらって感謝感激の限りです。

自分でも只々描きたくなっただけですのでスローペースですがよろしくお願いします。


「………は?」


思わず出た声は面白いくらい間抜けで、なぜかいつもよりも高かった。


「えっ!?どこ、ここ!」


僕の眼中に広がっているのは見渡す限りの森、しかもその木は広葉樹とも針葉樹とも似つかない葉っぱをしている。

そして、僕はここに来た覚えも、この場所に着いての目星も着いていない。


「すぅーーつ、はぁーーっ、すぅーーっ、はぁーーっ…」


(…えーっと、この状況を整理しよう、うん。整理するほど情報はないけども…)

まず、自分の記憶を辿っていくと、いろいろなことが思い出せた。

(…まず、僕こと七全真野は母子家庭で育った普通の高校生。お母さんに楽して生活してもらうために勉強していい大学に行こうとしていた高一で、いつものように勉強し終えて就寝し、朝目が覚めたらここに来ていた…)


自分でも何を言っているのかと思わず笑ってしまう。

そしてこの場所、目の前の木からどうやら自分の常識、知識の通用しない場所の可能性がある。その木に近づいて葉っぱを一枚とってみたが、何やら変な形をしていた。一番この形に近しいものはカエデだが、私が知っている葉っぱの中ではカエデが一番似ているというだけであり、変な形をしているのには変わらない。

(…なんせ、カエデのように5つに分かれた先にちっちゃなカエデがある葉っぱだぞ、変に決まってるじゃん!)



「…ん?[私]…?」


私なんていう一人称は使っていない。一人称は一貫して[僕]を使っている。

そういえば、声が少し高い気がする。気のせいかもしれないので、確認をしてみる。


「あ、あーあー……あ!?」


なんと今までよりも一オクターブほど高くなっているのだ。なぜ、僕の声が高くなっているのか、自分でも全く覚えがない。そしてキンキンはってうるさい。


「…あーあ、思春期には声が低くなるって言ってたのに…全然なってないじゃんか…」


間抜けなほどに高い声で無気力にそう呟く。元々背が低く、声も高いので成長期に一気に男らしくなれると思っていたのにと俯き、ため息をついた。

クヨクヨしてても仕方ないので頬を叩いて喝をいれる。

自分の手が異様に小さいのが頬から感じ取れた。

違和感を感じた。

驚いて手を見る。そこにあるのは色白で、ほっそりとした筋肉のないいつもの手だった…サイズをのぞいて。

なんと手…というか腕が僕の記憶よりも小さく見える。また、自分の着ている服が寝る前に着替えたパジャマではなく、袖の短いピンク色の服であることがわかった。

ちょうど背後から風がなびく。自分の髪の毛も合わせてなびき、その長さに、色に、驚きを隠せない。

なんと腰あたりまではある長い髪の毛が、いつもの見慣れている黒ではなく、少し紺色がかった黒になっていた。長い髪の毛は毛先の一本一本まで手入れされているようにサラサラで艶があり、僕に嫌な現実を突きつけてくる。

(…いや、まだ、()を確認してないからなんとも…)

そう考えているが、いつもとは違うスースーとした感覚がある逃れられない事実を突きつけてくる。


「僕…女の子になったってこと!?なんでだよぉ!?」


つい大声で叫んでしまう。怒りも焦りも恐怖も、何もかも凝縮して叫んだため、心がふっと軽くなった。

心が軽くなったせいで、私はある事を忘れていた。

それは今私のいる場所は森であり、森の中には野生動物が生息していることを…

はっ、はっ、と小刻みに浅い呼吸が聞こえる…

真っ暗な塊が、森の中からこちらへと向かってくる。こちらへと走ってくる()()は、徐々にその全貌が明らかになっていく。大きさは目測4mの木と同じくらいか大きく、夜空のような紫色の毛で覆われており、夜空に見える一等星のようにらんらんと光る琥珀色の目はその残虐性を見せつけるが如く、こちらを睨みつけてくる。脚に着いた爪は、地面をえぐった跡からその威力が伺える。開いた口の中のよだれが垂れ、その口の中からはナイフなんて甘いと言わせるほどの大きな、そして鋭い牙を濡らす。唸り声を上げつつジリジリと獲物を捕まえるように近寄ってくる()()は、モンスターと言う言葉が一番似合う狼が佇んでいた。


「えーっと、どうしましょうかね、この状況」


とりあえず相手の目をしっかりと見て色々考える。

勿論、狼の対処法も野生動物はどうすればいいかわからない。

なので熊と同じ方式を試してみる。相手の目を見ながら、少しずつ、少しずつ下がっていく。

野生の動物からは、背を向けると生から背けることになるのですぐに逃げないようにする。

(あれ…狼も少しずつ近づいてきてない?)

この黒くて大きな狼は僕の逃げ道を塞ぐように近づいてくる。そのせいで、僕は一向に逃げられなくなってしまった。狼の方向が響く。空気が振動しているのが肌でわかる。鼓膜がビリビリと嫌な音をたて、私はその場に座り込み、耳をふさぐ。

それを見た狼がこちらへと一気に距離をつめ、その牙でこちらを噛み砕こうとして来た。


『嫌!』


今日聞いた中で一番の高音でそう叫ぶと、先程まで文字通りこちらに牙を向けた狼が牙を突き出した状態で立ち尽くす。一体何が見えたのだろうか、何か恐ろしいものを見たかのように目を見開く。

(…え!?え!?…え?)

何が起こったのか全くわからなかったが、助かったのか、と慌てて腰をあげ、狼から距離を取る。

距離を十分に取れたとき、狼がこちらを睨む。ビリビリとした視線に怯んで動けなくなり、その隙を見逃さない狼は瞬時に追い詰めてくる。

死を覚悟するのと同時に、生への執着が口を動かす。


『とまって!』


狼は止まった。文字の通りそのまま、止まった。目に生気はなく、口元はだらんと垂れている。


「…え?」


自分でも何が何だか全くわからなかった。ただ一つ分かったのは、この狼は死んでしまったということのみ。その証拠に近くに落ちていた棒でつついても、石を投げても反応はなかった。

とりあえず僕は狼から毛を引き抜き、たまたま近くに落ちていたポーチの中にしまう。狼は動かそうとしたが、元から筋肉のない女子にそんなことは無理だと諦め、放置している。

どうやら、僕の声には何かしらあるらしい。

こんな小説です。

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ではまた、次のお話で。

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