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夢現逃花 —ムゲントウカ—  作者: ふぁる
アルマゲドン編
96/169

還御

「おい、なんだ? 一体何があったってんだ?」


 無理矢理に引っ張られてマシンルームへと連れて来られたアダムに、ヴィベルは首を左右に振りながら「分かりません!」と答えた。

 唇が震え、今にも泣き出しそうな顔をし、縋る様にアダムを見つめた。


「アダム、お願いです。私にはどうすることも……どうか、ファメールを正気に戻してやってください」

「は? 何言って……」


アダムは怪訝な面持ちで瞳を細めた。

 あのプライドの高く揺るぎないファメールが、正気を失うはずがない。ヴィベルこそどうかしてしまったのだろうと、溜息を吐き、ヴィベルの指す方向へと瞳を向けた。


——そこには、小さく子供の様に震えるファメールの姿があった。


 夢現逃花の白い花が咲き乱れる中にひっそりと膝を落とし、たった一人で怯えるプラチナブロンドの髪の男を見て思わず言葉を失い、アダムは暫く呆然と見つめた後、やっとの思いで叫んだ。


「ミシェル!!」


アダムが灰色の瞳でファメールを見つめ、両手で肩を掴んだ。


「お、おい、どうしたってんだ!? しっかりしやがれ!」


いつものファメールならば「僕に触るな!」と、アダムの手を振り払った事だろう。しかしまるで魂が抜かれてしまったかの様に虚ろな瞳で、ファメールは力無く俯いたままだった。


「嘘だろ? おい、おめぇ、一体どうしちまったんだ? こんな、震えちまってよぉ。か、風邪でも引いちまったんじゃねぇのか? ここ、寒ぃからなぁ。ホラ、立てよ。温かいモンでも飲めって。な?」


 虚ろな金色の瞳をじっと見据え、アダムはゾッとして、居てもたってもいられずに叫んだ。


「お、おい! お前っ! カインの野郎を助けに行くんじゃねぇのかよ!! 俺を、救ってくれるんじゃねぇのか!! 一体どうしたってんだよっ!」


——嘘だ……あの自信に満ち溢れた強い男が、こんなにも弱弱しいはずがない!

 と、アダムは自分までも恐怖に飲み込まれていく思いで必死に叫んだ。ヴィベルは顔面蒼白のままその様子を見つめて、アダム相手にも反応しないファメールに絶望した。


——ああ、どうか。里桜を救ってください。ファメール、貴方が正気にならなければ、彼女はアルマゲドンの中に閉じ込められて、二度と会うことが叶わないかもしれない。それだけは何としても避けなければならないというのに!

 と、ヴィベルは祈る様にぎゅっと手を合わせた。


 何故このタイミングでファメールがああなってしまったのか、ヴィベルには全く見当もつかなかった。アダムならば何か分かるのではと(わら)にも(すが)る思いで連れて来たというのに、そのアダムにすらも反応しないとなると、レアンも抜け殻の様になってしまった今絶望するしかない。


「ミシェル!! おいっ!! 頼む、しっかりしろって!!」


アダムが乱暴にファメールの両肩を掴み、揺らした。


「……カイン、僕はダメだよ。僕では。僕なんかでは……触ったらいけない。キミが汚れるから」


無表情のままファメールが言葉を吐いた。アダムの額からタラリと汗が伝い、顎先から落ちた。


「何言ってやがんだっ!! このクソ野郎!! わけわかんねぇ事言ってんじゃねぇぞ!?」


「分からない? そうだろう、キミには分からないだろう。キミはアルカでは無いのだから」


……アルカじゃない。

 こいつが待っているのは俺じゃない……。


アダムはカッとして怒鳴り散らす様に叫んだ。


「ああ、俺はカインの野郎じゃねぇよ! だからしっかりしやがれ!! あいつに帰って来て欲しいんだろ!? お前は、ずっとあいつを探して藻掻(もが)いてたんだろう!!」


ファメールの襟首を掴み、アダムは乱暴に揺さぶった。


「おい、しっかりしろって!」

「僕に触れるとキミまでも汚れてしまう」

「何言ってんだよっ! てめぇの傷(えぐ)ってんのはてめぇじゃねぇか!」

「もういいんだ。永遠に抉り続ける。僕は消えなければならない。汚れ切った僕は汚い存在だから」


「なんだよ、こんなに腑抜けになっちまいやがって。どうしたってんだよっ!」


 焦り辺りを見回し、ヴィベルに「こんな時に、小娘とガブリエルはどこに行きやがった!?」と、怒鳴りつけるようにアダムが声を放った。


「里桜とレアンは、恐らくアルマゲドンにダイブしました。里桜に至っては、肉体ごと……」


ヴィベルの言葉にアダムは「なんだと!?」と、声を上げ、抜け殻の様に眠るレアンを見つめた。


「クソ!! なんてこった! まだカインの野郎のデータも見つかってねぇってのによっ!」


舌打ちをし、アダムは虚ろな瞳のままのファメールを見つめた。


「で、ミシェルはなんでこんなことになってんだ!?」

「分かりません。アルカであれば分かるのではと思い、貴方を呼んだのですが」

「んな事言ったって、俺はカインの野郎じゃねぇし……」


 アダムに遅れて駆けつけたアリエルは口を噤み、何か知っているかとアダムから向けられた視線にも首を左右に振った。


「おいミシェル、しっかりしてくれよ!」


 虚ろなままの金色の瞳を見て、アダムは不安で泣きそうになった。こんな状態のファメールを見たのは初めてだった。


「おめぇは、おめぇだけは絶対に揺るぎの無い確かな指標なんじゃねぇのか? 暗く星々の瞬く事を止めた日でさえ煌々と光を指し示し続けるのがお前なんだろう! カインの野郎も、エデンでずっとおめぇに頼りっきりだったじゃねぇか! なあ、しっかりしてくれよ!! 俺は、お前ならカインの野郎を連れ戻せるって、ずっと思ってたんだ。頼むよ、ミシェル!!」


 エデンでのファメールの様子をアダムは思い出していた。


 ずっと憧れていた。

 この男に兄弟と認められれば、それほどに心強いことはない、と。アルカの為に日々忙しくしながらも飄々(ひょうひょう)とするファメールの余裕に絶大なる信頼を寄せていたアルカの気持ちも、アダムは味わっていたのだ。

 そしてファメールの側で兄を支えるレアンの存在。揺るぎない信頼。

 いついかなる時も、兄弟三人で居ればどんな壁であろうとも乗り越えられる。アルカはそう思っていた。アダムにはそれが羨ましくて仕方が無かった。自分にはそんな気持ちを向けてくれる者は居ない。アルカの中に押し込まれた孤独を味わいながら、どれほどにこの兄弟の関係に心惹かれて、自分からそれを奪ったアルカを憎んだことか知れない。


 ファメールの光を失った金色の瞳は、まるで生きる事を放棄した様にも感じられ、アダムは悲しくなって眉を寄せた。


「ミシェル。おい、頼むよ。ガブリエルも居なくなっちまったんだろ? どうすればいいんだよ。おい……」


——カイン……助けてくれよ、カイン!! お前の大事な兄弟が壊れかかっちまってる。お前、それでいいのかよ!!


 アダムはボロボロと涙を零しながら、アルカに訴えずにはいられなかった。

 信頼は、お互いに思い合ってこそ生まれる。例えアルカとアダムが入れ替わったとしても、アダムが信頼を得られる様な人物でなければ、ファメールやレアンとの関係性は成り立たないのだ。どれほどにアルカより自分が劣るのかを突き付けられた気分だった。


「お願いよカイン!! ガブリエルが居ない今、ミシェルを正気に戻せるのは貴方しか居ないわ!」


アリエルがアダムへ悲鳴の様にそう叫び、両手で頭を押さえてしゃがみ込んだ。


「貴方が昏睡状態になったばかりの時も、ミシェルはこんな風に壊れてしまったわ。私は、何もできなかった! お願いよ、カイン。ミシェルを救ってあげて!! 貴方が帰って来て、やっと元の彼に戻ってくれたと思っていたのに!!」


俺はカインの野郎じゃねぇと言ってるだろう! と、言い返えそうとし、アダムは言葉を飲み込んだ。


……カインなら、あいつならこんな時こいつになんて声を掛けてやるだろうか……?


 放心状態のファメールを見つめ、取り乱したアリエルを見、そしてただただ困惑するヴィベルを見つめた後、アダムは瞳を閉じた。


——カイン。頼む。少しだけでいい。俺にてめぇの優しさってやつを分けてくれ。頼む。助けてやってくれ。お前なら、どうする? カイン。お前なら……


 記憶の閉じ込められた箱へと続く細い糸を、慎重に手繰り寄せる様に、アダムはアルカを思い出した。

——そうだ。あいつは、どんな時だって笑顔を絶やさなかった。悲しくても笑って見せて、周りに心配かけまいと明るく徹する強さ。俺は一番知っていたはずだ。あいつはいつも、心の中で泣いてばかりいたじゃねぇか。

 小娘と初めて洞窟で会ったあの時、お前は泣いていたよな? 寂しくてどうしようもなくて、現実世界に戻りたくて。でも、そこには自分の居場所がねぇって分かってて。あの洞窟なら、大声で泣き叫んでたって誰にもバレやしねぇから。それなのに、おめぇは小娘が現れた時に、へらへらと笑って見せやがったんだ。


 大馬鹿野郎め……。


 俺もお前の様に大馬鹿野郎になってやる……!


 アダムは唇を横に引き、ニッカリと笑い、灰色の瞳をファメールへと向けた。


「おいミシェル。まーた一人で抱えてやがんだろ?」

「……」

「ちょっとはオレにも頼れよ。肩貸してやっからサ! な?」

「……」

「頼りねぇかもしんねーけど、オレだって肩くらい貸せる。全部は無理でも、少し位役に立てるんだぜ?」


 それは不思議な光景だった。アダムの表情から鋭さが消え、穏やかな笑みを浮かべ、心からファメールを気遣い、元気づけようとしている本当の兄弟の様に感じられた。

 ヴィベルは唖然としてその様子を見つめた。


——これは、本当にアダムではなく、アルカがその身体に戻って来たのでは?

 と、思わずにはいられない程に、全くの別人の様に感じたのだ。

 別人? いや、違う。これはまさしく、エデンで出会ったアルカだ。いつも笑みを浮かべ、照れた様に視線を外し、砕けた口調には気遣いが込められている。明け透けで誰に対しても優しく思いやりのある、あのアルカだ。


「な? 頼ってくれよ。オレに、さぁ」

「……キミは、居なくなったじゃないか」


ファメールがか細い声で反論した。灰色の瞳を細め、「居なくなんかならねぇよ」と、返した言葉に、取り乱した様に首を左右に振った。


「僕達を置いて、全てを背負ってキミは行ってしまったじゃないか!! 二度と帰る事の無い旅路へと……!」


 罪悪感に苛まれ、アルカが旅立つ日に見送りに行く事ができなかった時の事を、ファメールは思い出していた。アルカは一人寂しくあの邸宅から出て行った。荷物の無くなったアルカの部屋を恐ろしくて開ける事すらファメールにはできなかった。


「アルカ。キミに全てを背負わせたのは、僕だ。キミが養父からあれからどれほどの酷い負荷を掛けられるのか、想像することすら悍ましい程だったというのに、その全てを請け負って出て行くとキミが言った時に止めるどころか、『勝手にしなよ』と突き放した! そして、その事をレアンに伝える事すらもしなかった。レアンは恐らく、キミを引き留めただろうから……」


 レアンに引き留められたとしても、アルカの事だから笑い飛ばして出て行っただろう。それでも……。


「僕は、自分の汚れをキミのあの瞳に見られてしまった事の屈辱を払拭したくて、それができないが故に、キミが僕達の目の前から姿を消してくれる事を望んだんだ!」


 けれど、アルカは喜んでその荷物を背負って旅立った。


「キミを……キミが悪い訳じゃないのに。僕は、キミをずっと怨んでいた」


『すまなかった、帰ってきてくれ、アルカ……!』


 ずっと言いたかったその言葉。キミが昏睡状態で眠り続ける様子を見つめながら、心の中で何度口にしたことか。

 けれど、そんな言葉を僕はキミに伝えてはいけない。そんな資格は無い。背負わせてしまったのは、僕なのだから。ああ、あの時に帰れたら。そしたら、去っていこうとするキミの手を掴み、「行くな。行く必要なんかない!」と、そう言えるのに……!

 僕は、ただただ後悔と自責の念に苛まれ、キミが戻るまで、この暗闇から抜け出す事等できやしない。それは、僕への罰なのか? キミが与えた、僕への……


「償いきれない罪を背負ってしまった僕は一体どうすればいい!! 赦してくれと今更言えた立場ですらない! 汚れたのは身体だけじゃなく僕の心だ。魂すらも汚れきっている!!」


泣き叫ぶ様に声を放ったファメールに、小さくため息をつきながら首を左右に振ると、「帰らねぇなんて、一言も言ってねぇだろ?」と、優しく返した。


「帰る場所があるから旅立てるんだ」

「……キミは、帰る場所を捨てたんじゃないのか?」

「いいや、違う。()()()()


()()()()』自分のあるべき場所に。家に。安らげる場所に。


「家族だって思ってる。お前も、ガブリエルも。ずっと欲しかった、オレの家族なんだ。帰りたくない訳がないだろ?」


——家族……?


「けれど、キミは僕達を見限ったんじゃないのか?」

「違う! そうじゃねぇよ、絶対に! オレは、バカだからサ。前に出て戦う事しかできねぇけど。でも、お前が必ずなんとかしてくれるって信じてんだ。オレが困った時、文句言いながらも必ず助けてくれた……だろ? だから、頼りにしてる」


——頼りにしている? 僕を?


「迎えに、来てくれよ。待ってるんだ」


——アルカは、僕達の許へ戻る事を望んでいる? 自分では帰る事ができないから。迎えに来てくれるのを待っている……?


「帰りたいんだ」


——帰りたい? そんなはずがあるものか! この世界に絶望し、捨て去る程の悲しみに暮れたのはキミだろう!? 



「あの頃は、楽しかったよなぁ。三人であの邸宅でさぁ。生きる術を失っちまったオレ達が身を寄せてるってのに、三人で居れば不思議と気持ちが楽だった。楽しく腹の底から笑う事だってできた」


 エルネストからの悍ましい負荷をかけられる前は、僕達は普通の子らとなんら変わりも無く、本当の兄弟の様に過ごしていたに違いない。『普通の子』というのがどんなものなのか詳しくなんか知らない。それでも、平和でそれなりに楽しく毎日を送っていたはずだ。


——いや、そうじゃない。


 アルカは、僕達の知らないところで、すでにエルネストからの実験に付き合わされていたのではないか? 身体に酷い傷を負って帰って来る事なんかしょっちゅうだったじゃないか。その度にレアンが手当をし、申し訳なさそうにアルカは笑っていた。


 アルカがあの邸宅を留守にしていたのは、遊びまわっていた訳じゃない。


 一人で必死に耐えていたのではないか? それでも、あの邸宅で僕達がアルカを迎え入れる事が彼にとっては最大の癒しとなっていた。


「帰りたい。本当の、お前らの居る場所に……」


その言葉に、ファメールは瞳を見開いた。


()()()、お前らの居る場所に』


アルカは……! そうか。そういう事か……。アルカが仮想世界に留まるのは、僕達がその世界に居るから……?

 帰りたくないわけでも、僕達に顔を合わせたく無いわけでもない。アルカは、本当の僕達が死んでしまっていると思っている。


 だから帰って来ない。偽物の僕達が仮想世界には存在しているから。


「帰ったらサ、里桜も入れて皆でどこかへ出かけようぜ? ゆっくり色んなことを語り合うんだ」


 あの凌辱を受けてから、僕はアルカの事を避ける様になった。僕の汚れを移してしまうようで、綺麗なアルカを汚してしまう様で耐え難かった。ゆっくり会話するような事などしなかった。

 現実世界の僕よりも、エデンで創成された僕の方が、そんな傷痕の無いままアルカと接する事ができたんだ。


アルカは、それを望んでいる。

 前の様に、(わだかま)りの無い僕達の関係を。払拭する事は難しい。けれど、それでも……。


「頼むよ、ミシェル。オレを一人にしないでくれ。助けてくれよ。寂しい。一人は寂しくて堪らねぇんだ」


アダムはアルカの寂しさを思い出しながら心を振り絞る様に言葉を放った。


「寂しいのは、嫌だ。一人は嫌だ。それなのに、オレは独りぼっちなんだ。助けてくれ、ミシェル」


『一人にしないでくれ』だって……?

 ふ……と、ファメールはため息を小さくついた。


 僕に、『助けてくれ』だって……?


「里桜を、助けてやってくれよ」


ファメールの脳裏にブルージルコンの瞳の女性が浮かび、叫んだ。


『ファメールさんは、私と一緒に居たくないってことなの?』


手を離したのは僕じゃないか。それなのに、何を今更……。

 けれど、たとえ彼女から軽蔑されたとしても構わない。僕にはアルカを救うという使命があるのだから。覚悟を決めて罰を甘んじて受け入れなければならない。


 そうだ。僕はまだ、自分の罪を償っていない。どれほどに自分が矮小な存在なのだとしても、この世に生まれたのならば犯してしまった罪を償う事は必要なのだ。


 アルカと里桜を救うことで、少しでも罪滅ぼしになのならば……。


 すぅーっと、金色の瞳で目の前で必死に叫ぶ灰色の瞳の男を見据えた。


「頼む、何とかしてくれよ。お前だけが頼りなんだからサ。な? ミシェル」

「……なにさ、結局僕に丸投げなんじゃないか」

「あー……ウン。そうとも言う、なぁ。助けてくれよ。この通り!」


鼻の下を擦るアダムに、ファメールはうんざりしたようにため息をついた。いつの間にか、灰色だったはずの世界に色が戻って来たかのように感じられた。


 夢現逃花の白い花からむせ返るような甘い香木の匂いが放たれて、部屋中を包み込んでいる。


 アダムの背後で不安そうに見つめるヴィベルの姿。マシンルームの入り口でペタリと床に座り込んでいるアリエルの様子が視界に入った。


「……分かったよ。頼られちゃしょうがない。行ってやるさ」

「そうこなくっちゃ!!」


嬉しそうに笑ったアダムの手をバシリと叩いて払いのけると、ファメールはフンと金色の瞳を細めて睨みつけた。


「汚い手で気安く僕に触るな。クズアダム」

「ん……な……!」

「あー、バカバカしい。クサイ演技に鳥肌が立っちゃったよ。どうしてくれるのさ!?」


ぷいと顔をアダムから背けたファメールに、アダムは寂しげに眉を寄せた。


「ちょっ!? おい!」

「ヴィベル、レアンの様子を端末から確認できないか至急調べてくれ。里桜はともかく、レアンはアルマゲドン内でも創成されているはずさ。新しくデータが更新されているだろうから、更新日付で分かるだろう? それとアリエル、ちょっと使いを頼まれてくれないか」


ヴィベルはホッとしてため息をつきながら頷き、泣き出していたアリエルも、ファメールに命じられて嬉しそうに頷いた。

 アダムはやれやれとため息をつきながら安堵し、また自分は邪魔だから大人しく一人で待ってろとでも言われるんだろうな、何か言われる前に退散しよう、とマシンルームから出て行こうとした。


「アダム」


ファメールに呼び止められ、叱られる! と、反射的にアダムはビクリと肩を尖らせた。


「レアンが居ない今、キミは僕の補佐役だ。ほら、戻って手伝ってくれ」

「え……?」

「さっさとしなよ。イラつくじゃないか」


 ツンと鼻先を立て、顔を背けたままそう言うファメールに、アダムは嬉しそうに笑い、頷いた。

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