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第五話、レベルの基準、三兄妹は常識知らず



 今回のあらすじ。

 詳細は省くが、あたし達になにかあるとなんだかんだ過保護なお父さんのせいで。

 世界がヤバイ。


 とっても真剣な問題なので。

 うん、リビングで、三兄妹が腕を組んで家族会議中。

 政府があたしの能力に気付いたっぽいのだ。


 その対策を検討しているのである。

 あれ?

 冷静になってみると、本当にやばいんじゃない?


 どんなテキトーな理由でもいいので、世界の終わりを想像して欲しい。

 やろうと思えばだが。

 父は、ほんとうにそれを実現できてしまう存在なのだ。


「お父さんのせいで世界が終わる……っ、あたし、そんなの困るんですけど! まだ配信業で成功してないし! ニャンターニャンターの連載が再開して完結するまでは、ぜぇええぇぇぇったいに、この世界から離れないんですからね!」


 長兄の炎兄がバンと書類を叩き。

 三白眼を尖らせギザ歯を動かす。


「いいか! 届いた書類を見る限り――てめえはまだ猫と話すとかいう、翻訳系の能力者だと勘違いされているだけだ。調査つっても害がないかをチェックされて、問題ないとなれば転校なんてされねえ……筈だ!」

「一般人って、ネコのやばさを知らないんだもんねえ」


 あたしは猫使いなので、ネコのポテンシャルをよく知っている。

 あいつらは、やばい。

 人類と全面戦争となったら、おそらくネコが勝つだろうってくらいなのだ。


 今度も想像してみてほしい。


 くわぁぁぁぁっとあくびをしている近所のネコちゃんが、全員突然、二足歩行になり。

 ギラーン!

 都市破壊の魔術を一斉に詠唱してくる場面を。


 まあ実は犬も結構やばいんだけど――。

 あっちは人類と友好関係を望んでいる。

 比較的、性格がまともな犬種も多いのでセーフ。


 でもネコは違う。

 あいつら……。

 人間なんて、グルメを献上する奉仕生物の一種だと思ってる節があるし。


 ともあれ、そんなネコを使えるあたしは本当なら危険視されるはずなのだが。

 この書類を見る限りは、うん。

 本当にただ、ネコと話す能力者ってレベルで危機感はゼロ。


 それはそれで問題があると思うが。


 黒豹っぽい物静かな月兄つきにいが、ゆったりと口を開く。


「そうだな……アカリ。提案がある」

「なになに! 教えて教えて!」


 月兄は未来を観察するような表情で、すぅっと瞳を細め。


「糞雑魚ナメクジ……だったか、ようするに、えーと、アカリは雑魚のフリをしてやり過ごす。その間に、ちゃんと調査員を洗脳……じゃない、意識改革……でもない。えーと、とにかく……異世界出向で忙しい母さんたちが気づかないうちに無理やりにでも解決させる」


 具体的な計画書を闇の中から召喚して、月兄は淡々と告げる。


「無事成功して――アカリが危険じゃないと証明されたらそのまま、証明できずに難癖をつけてきたら。まあ――世界平和のためだ。父さんにバレないうちに精神支配でどうにかする……。いっそ、日本をそのまま俺達の精神支配下領域に書き換える。どうだろうか?」

「それよそれ! それで解決間違いなしよ!」


 もしあたしの演技が失敗しても問題ないのだ!

 いざとなったら!

 異能力を調査している政府組織全員を、洗脳しちゃえばいいんだし!


 ……。

 ん?


 なんかこれって、悪役のセリフじゃない?

 あたしたちって危険かどうか調査されて、当然なような気もしてきたけど。

 気のせいだろう。


 ガシガシと、大きな手で揺れる炎の髪を掻き炎兄が言う。


「しゃあねえか、親父にバレたら世界がヤベエんだ。協力してやるよ」


 おう、さすがお兄ちゃんたち!

 頼りになる!

 さて、実際問題どうするか。


 全員が座り込んだまま腕を組んで、ネコのように眉間をぬーん!

 ここは全員で協力するべき。

 利害は一致している。


 常識知らず、と思われたくないのだが。

 仕方ない……あたしは探るように、チラっと兄たちを見上げ。


「ぶっちゃけ危険度がない一般人って、レベルいくつなのよ?」


 言われて兄たちは考える。

 全員が汗を浮かべて、じとじとじと。


 あたしたちは兄妹間でのレベルとか、基準とかは把握しているが。

 魔術やスキル。

 いわゆる異能をもっていない存在の基準を知らない。


「ああ、たしかに……ふつうの人間にもレベルは存在している。レベル一桁……とかに抑えてしまうと、逆に偽装を疑われる……」

「鑑定の能力者がいるかどうかにもよるがな」


 兄妹は考えて。

 考えて。

 ……。


 あ、知恵熱が出そう。


 拳に垂れる汗を感じつつ。

 あたしが言う。


「レベル二百ぐらいの子供ラインに偽装しておけば、大丈夫……よね?」


 再度、探りを入れるあたし。

 とっても賢いわね?


 家族を含め周囲の大人が、みーんな、高レベルおもしろ暴走集団の影響か。

 普通の基準がわからない――。

 それが実は、あたしたち兄妹共通のコンプレックスだったりするのだが。


 炎兄もまた、探るように言う。


「ちょっと低すぎるんじゃねえか?」

「そ、そうかしら?」

「だってよぉ。レベル二百つったら、おまえが使役してるネコの中でも、一番下の子猫ぐらいのレベルだろ? 低すぎたら、それはそれで偽装を疑われて面倒じゃねえか? その倍の四百ぐらいでも、いけるんじゃね?」


 まあ実際、低すぎてもダメだろう。

 月兄がぼそりと言う。


「……面談に来る調査員のレベルを、そのちょっと下でコピーすればいいんじゃないか?」

「あー、その手があったわね」


 ようするにだ。

 カンニングすればいいだけって話である。


「んじゃ相手のレベル前後に偽装するってことで決定~! 会議は終了!」


 あたしは、んーっと腕を上に伸ばして。

 ニヒヒっと兄たちを見る。


「さーて! せっかく三人いるんだし、今日はゲストにお兄ちゃんを加えてバランスクソで有名な格闘ゲーム配信でもしよっか」

「ざけんな、バカ妹! なんでそうなるんだよ!」

「だって、お兄ちゃんたちがゲストに来てる配信だと、評判が良いし」


 配信者的には彼氏持ちだと問題だけど、兄となれば話は別なのよね。


「そういう意味じゃねえよっ、てめえの過疎放送にでたくなんてねえっての!」


 ともあれ。

 同居しているお兄ちゃんたちは、もちろんあたしの趣味を知っている。

 ゲーム配信!

 リビングにパソコンを召喚して、配信機材をどーん!


 配信を手伝ってくれる眷属。

 いつもの黒白三毛の三匹ネコ達を召喚して、と。


「ちょっと配線手伝ってよ、クロ三毛シロ~。って、どうしたの? その顔。なんかニヤニヤしてるけど。あたしたちの会議内容に問題あった?」


 あたしのもふもふネコ達は、ぷぷぷぷ。

 まるっこい口のふくらみを、やはりニヤニヤと膨らませているのだが。


『いえ、にゃーにも問題などありませんよ』

『別に面白そうだから黙ってるとか、そういうのではありませんので。ぶにゃにゃにゃ、ご安心を』

「そう? ならいいけど」


 言いながらもあたしは黒白三毛の姿をトレースして、魔術で配信機材に入力。

 画面上では、かわいいネコの姿としてあたしたちが動いている。

 という演出ができるのだ。


 生配信でアニメっぽいイケメンや美少女がしゃべってる配信。

 いわゆるブイニャーバーを見たことのある人なら、ちょっとはピンとくるだろう。

 あれのネコバージョンである。


 ウッキウキで準備するあたしの髪を、炎の吐息が揺らす。


「オレはでねえって言ってるだろうっ」

「えぇぇぇ? でも、ウチの女性リスナーさんが、格好いい声のお兄さんをまた出演させて欲しいなって、言ってくれてるんだけどな~」


 長男様は、露骨にペカーっとキラキラ瞳を輝かせる。

 機材の中で、ネコの幻影もリンクして顔をキラキラさせている。


「しゃあねえなあ! 妹のためだもんな!」


 あたしと月兄はバカな兄を眺め。

 ちょろいなぁ……。

 と、ジト目で見ているのだが。


 まあ。こんな感じで、あたし達はなんだかんだで仲良し兄妹ではあるのだ!


 さーて!

 普通レベルのかよわい女子高生だってことにすれば、すぐに帰れそうだし?

 何も問題なく、あたしはのんびりとした生活を送れそうである。


 お父さんとお母さんにはバレずに解決~♪


 一週間後には、面談が始まるが。

 それはもうイベント戦。

 勝ちが確定している予定調和そのもの。


 これでこの騒動は終わるわね!

 あたしは絶対に、調査員の前でヘマなんてしないし!

 あの時は人助けで、うっかり力を見せちゃっただけだし!


 今度こそ!

 別にフラグとかそういうのじゃないわよ?


 ◇


 そして、面談当日。


 あたしは遠距離から調査員を鑑定し。

 レベルをコピー偽造して、指定された学校の応接室で待っていたのだが。


 背広姿の調査員のおっさんは、開口一番こういいました。


「へぇ、マジか! こんなガキんちょが、ワタシと同じレベルSS判定とはねえ」


 と。

 あたしがコピーしたのは、このおっさん調査員のレベル二百。

 あたし達のレベル判定と使っている単位が違うのかな。

 たぶんS一つで、レベル百という基準になっているのだとおもいます。


 どうやら、二百でも高かったようなのですが。

 問題はこれ。


 あたしの眷属魔猫達が、こっそりと言いました。


『そりゃあ、お嬢様。異能力者を調査に来る人間がふつうのレベルのわけないニャ?』

『この男、これでもエリート異能力者っぽいですニャ?』

『あ♪ お嬢様が♪ またやらかした♪』


 と、あたしにだけ聞こえる魔力音声で。

 ぶにゃははははは!


 そう。

 あたしはついうっかり。

 異能力者調査をしている”精鋭のレベル”をコピー偽装してしまった。

 というわけである。


 黒モフモフなあたしの眷属が、ポンとあたしの肩を叩き。


『アカリンお嬢様たちは少し、常識を学ぶべきですニャ?』


 ぎゃあああああぁぁっぁあ、しまったぁぁぁぁぁあ!

 こいつらがニヤニヤしてた理由。これだったのね!?



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― 新着の感想 ―
[良い点] あかりちゃんばかかわいい、ねこちゃんもかわいい癒やされますฅ^•ﻌ•^ฅฅ^•ﻌ•^ฅฅ^•ﻌ•^ฅにゃんにゃん☆5、猫ちゃんへののプレゼントです。 [気になる点] 魔猫の続きですか?まだ…
[良い点] …。桁が違い過ぎだよ(≧◇≦) [一言] 普通の子供が三桁はあり得んでしょがなあかりちゃん。( ´艸`)
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