始まりの第三章
前回のあらすじ
ギレットは家から帰ると育ての親であるアドバンが
血を流して倒れている所なのだった!
「じ、じぃ?」
震えた声でアドバンを呼んだが、返事はない。
震える足でアドバンに近づいた。
「お、おい 何寝てるんだよ。こんな所で寝たら風邪ひくぞ。おい!」
やはり返事がない。だが俺はその現実を受け止めれない。
何故倒れているのか、何故このような出来事に発展したのか
俺には想像することすらできない。
だから、ただ呼ぶことしかできなかった。
「クソっ!なんでだよ!なんでこんなことに!」
「ギ、ギレ……か」
「じぃ!」
「そこにおるのか……? そこにおるんじゃな」
「じぃ……? ここに居るだろ俺は!?」
「血を流しすぎたのかのぅ……もう見えんのじゃ」
「う、嘘だろ……おい!」
そうアドバンは血を流しすぎた。もう遅かれ早かれ死ぬ。
これは避けられない運命だった。
「ギレ、儂はお前に言いたいことがある。済まなかったのぅ、このような目に合わせて」
「も、もう喋るな!今すぐ騎士団の人呼んでくるから!」
「無駄じゃよ。もう儂は治らん」
「な、なんでだよ。回復魔法使えば……」
「魔法はそんな便利なものじゃない……」
どんどんとアドバンの声が小さく掠れてゆく。
「娘を見殺しにした罰かのぅ。ギレットや、儂からの最後の頼みがある……」
「な、なんだよ」
「つ、強くい、き、ろ……」
そう言い残すとアドバンの生命の灯火が消えた。
「強くって 騎士団にでも入れってのかよ……クソっ」
俺は何も考えたくはなかった。ただ、じぃの横にいてやりたかった。だが時間はそう待ってはくれない。
どこの誰から知らないが教会から変な格好をしたやつらが出ていったとの通報があったらしく、騎士団が駆けつけてきた。
「君!大丈夫か!何があった!」
若い男の騎士がそう立て続けに質問するが、俺は答える気にならなかった。
「せ、先輩 まずはと医療部隊への応援要請と子供の手当から!」
弱々しそうな騎士がそう言うと俺に毛布を掛けた。
ーーそして二時間ほど経った頃ーー
俺は事情聴取などを受け一時的に騎士団が保護することとなった。
「お前、ギレットってのか!」
大声で俺に問いかける。
「おっと すまねぇ自己紹介が遅れた。俺の名前はガイル!しがない騎士だ。」
教会で俺に立て続けに質問したこの男の名はガイルと言うのだった。
その男はかなりの筋肉質で図体もでかく、ソフトモヒカン的な髪型に頬に傷があった。
正直怖い、これから拷問でも受けるんじゃないか と思った。
「あんた何しに来たんだよ……」
「あぁ?んなもん決まってんだろ。お前を迎えに来たんだよ。」
「む、迎え?」
「そう お前を俺が一時的に保護することになったからよ 今日から1ヶ月、俺との共同生活だな!」
笑いながら大声で言った。
「い、嫌だ………」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」
「もう俺に関わらないでくれ!もう見捨ててくれ!」
俺は叫んだ。受け入れたくなかった、両親には捨てられ、育ての親であるアドバンが死んだ現実を、もう俺の心は既にボロボロだった。