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議論と迷い(ルーグ視点②&クレア視点①)

クレア視点の話がちょこっとありますが、次回はクレア視点のお話になります。


ルーグの葛藤と決議は後ほど

「ハァハァ……道が長い……」


 俺は王宮まで全力で走ってきた。馬車などが走っていない今、どれだけ苦労するか今更身に染みた。


「さて、入るか」


 そして、城門へ向かい入ろうとすると2人の門番に話しかけられた。


「王子!」

「王子!」


 2人は俺に敬礼をして幾つか尋ねてきた。


「王子、どうされたのですか?」

「現在は貴族もほぼ居ないため王宮は機能していませんよ」


 そう、現在は王家を住んでいない王宮はもはや、もぬけの殻でメイドすら居ない。だけど、俺がここに来た理由はただ一つだ。


「これより、私『ルーグ=ジェラルド=バルファナ』が第54代目国王に即位し、王国の復権を目指す」


「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」


 俺が、そう言うと2人の門番は街に響き渡るような大声をあげた。


「本当ですか!?」

「皇国にすら援助して貰えなくなったんですよ!?」


「あぁ、だから我々、王国国民で王国を建て直す」


 俺の意志は誰に言われようとも変わらない。アリアの為なら幾らでもやってやる。


 すると、


「王子、なんか目変わりましたね。もうやると言ったらやるんですね」


 2人の内の1人の門番が何かを納得した様な顔して質問してきた。


「あぁ」


 俺は、ただそう答えた。


「分かりました。では、メイド達に連絡してきます。おい!」


 そう、合図するともう1人の門番が急いで馬に乗り南へと向かった。


(宮殿の南方向には、確かメイド寮があったな……ミレーナ達も今あそこにいるのだろうか)


 ミレーナとは、俺に幼い頃から従えている優しい笑顔をするメイドだ。あの事件以来、連絡が取れていなかったが元気にしているだろうか……


「王子、私は今王国内にいる貴族全員に声をかけてきます」


「今、どれくらい貴族がいる?成人含めてだ」


「私の知ってる限りだと、今回の件襲撃事件で貴族の4割なら5割が死亡又は行方不明になりました。加えて、今回の責任から逃れてるために残った貴族の4割程度が逃亡か自殺を図ったため、成人に達している貴族は現王国内には数える程しか居ないかと……」


「なるほど……では、学園に通っていた貴族を中心に政権を建てるというのはどうだ?」


「結論から申し上げますと不可能に近いかと……」


 門番が、顔を下に向かせながら悔しそうに言う。


 だが、その通りだ。政治に少しでも関わったことがない者達で構成すると余計混乱を導くだろう……俺が即位しても俺もまだまだひよっこ。確かに政権復興は難しいかもしれないな……


「では、どうするのが最適なんだ……」


 俺が、悩んでいると聞き覚えのある声が俺に罵声を浴びせる。


「あら、王子とあろうお方が無様ですこと……」


「ミレーナ!」


「ご無沙汰です。ルーグ様」


 この、俺を罵るかのようなドスの効いた声に白髪のターコイズブルー色の目をした美人。正しく俺に幼い頃から付き添ってくれたミレーナな本人だった。


「ミレーナ!良かった……生きてて……」


「勝手に死なせないでください、バカ王子」


 俺が、泣きながらミレーナ抱きつくと頭を撫でてくれはするが、罵ることは忘れない。やはり、ミレーナだった。


「で、ルーグ様、これからどうするおつもりで?」


 ミレーナはすぐに真面目モードに切り替えて俺に聞いてきた。


「正直、どうすればいいかも分からない。王都の図書館を爆発させられたおかげで王国が保有する書物は全て塵になった。次に、半数もの貴族が襲撃中に殺されたため、各部門すら機能していないこと。これらをまず最優先事項として考えた方がいいだろう……」


 あのテロ組織が、初めに図書館を爆発されたのは『これ』を見越しての事だろう。図書館というあらゆる面で学べる所を破壊されては王国の識字率も学力も低下する一方だ。


(一体何者なんだ……あの組織は)


 だが、今はそのようなことを考えてる暇はなかった。


「皇国と商国に連絡して書物の輸入と再度援助してもらえることが可能か聞いてみてくれ」


 俺は、即座に門番にそう伝えると門番は急いで連絡塔の方に向かっていった。


「ルーグ様、まずは王宮に入られては……」


 するとミレーナが、俺を呆れた顔で見ながら言ってきた。


 (そういえば、俺はまだ王宮にまだ入ってなかったな。門前で議論をしていたことを忘れていた)


「ふふっ、そういうところはファデル様とよく似ていらっしゃいますね」


 ミレーナは急に笑いながら、俺を見た言った。その表情は、どこか懐かしいあの日を見るかのような悲しくも嬉しいそうな表情だった。


「父上と?」


 俺は、父上の話題が出て気になりミレーナに不思議そうに聞いた。


「はい、ファデル様はよくお忍びで街に出掛けて観察してたり、バレたらバレたで民の不満などを聞き回ったり、と色々大変なお方でしたよ。ふふっ」


 確かに父上は酒癖も悪かったし、母上にはいつもドヤされていたが街中で議論するなんてものあったのか……


「父上……それは母上もストレスが溜まるわけだ……」


 そんな話をしていると複数人のメイドが出てきてミレーナに報告する。


「ミレーナ様、王宮の大方の見回りと掃除完了致しまた」


(えっ、もう!?はや……)


 この時、1番驚いたのは俺かもしれない。


「ご苦労。では、これからルーグ様に用意する菓子や茶の準備に取り掛かります。アナン班は菓子作りを、シェリー班は茶作りを、アンナ班は再度掃除をお願いします。私の班はこれよりルーグ様の案内に同行を」


「「御意!」」


 そう言うと、メイド達は一斉に取り掛かった。


(ん?暗殺部隊か何かなのか、うちのメイド達は……)


 即座に、あんな俊敏な動きできるのか……メイドって。


「さっ、ルーグ様。王宮に入りましょう」


「あぁ」


 俺は、ミレーナに背中を押されて王宮の中に入っていく。

 そう、王宮に入るということは、それは俺への試練でもあったのだ……


「皆待ってろよ……」


 俺は、そう呟き前に歩み出した。

 そんな俺を見てミレーナが笑っていたことを俺は知る由もなかった。





 ・・・・・・・・・・・・・・





 クレア=アラローゼは、学園の花園があった場所で蒼い空を見ながら、一人で佇んでいた。


「スキルもない、魔力も少ない、才能がほとんどない私に今何ができるのかしら……」


 私は何も出来ない。誰の役にも立てない。無能な公爵令嬢だ。


「ねぇ……お母様。私に何ができるのか教えてくれないかしら……」


 私は、泣きながら愛情を注いでくれた優しき母を思い浮かべ途方に暮れていた。

 すると、1人の女性口調の男性がわたしに声を掛けてきた。


「あらあら〜可愛い顔したお嬢さんが、こんなところで泣いちゃダメよ〜〜」


「あ、貴方は?」


 私は、驚きながらも何者かを女性?男性?どちらか分からないが問うた。


「私も、しがないオネェさんよ。うっふ♡♡♡」


 どえらい人が、私に声を掛けてきたのだった。








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