区画長8
まさか、まさか、こここまでとは。
どうせ何かしらの新しい手を打ってくるだろうとは思っていたものの、ここまで完膚なきまでに打ちのめされてしまうとは。
再び、カードが開かれる。再び、私が敗北する。
何がいけないのか。何が悪いのか。このままでは負けるという状況で、何一つわかっていない。
どうやって、私の出すカードを見極めているのか。完全無作為の判断すらも完璧に読んでいるのだから、まず間違いなく不正によるものなのはわかるというのに。
私の方の奴隷がカードを出す時に、シルビアの方の奴隷はいつも笑っている。私のカードを見て、その勝利を喜んでいるのだ。主人に忠実なでよろしい事だ。
そう思えば、彼はいち早く勝敗を知る事ができるのだ。私が相手のカードを知るよりも早く私のカードを目撃するのだから、その時点で勝敗を知る。
そうして勝敗を知った彼の笑顔を見る事によって、私はカード開示の一瞬前に敗北を確信するのだ。
言ってしまえば、結構うざい。
できれば無表情ですませて欲しいところだというのに、毎回毎回録画映像のように同じ表情をする。それが、あまりに苛立たしくて仕方がない。
そう、毎回、毎回……
「…………?」
毎回?
そう、あの奴隷は毎回私よりも一瞬早く勝敗を知る。それはつまり、カードを出す順番が同時ではないという事だ。それこそ毎回、私のカードが先に出されている。
一体、何のために……?
……なるほど、そういう事か。
道理で勝てないわけだ。それならば、勝てるはずもない。
相手の手の内が、ようやく理解できた。私の目線で分からないのも無理からぬ事だ。なにせ、私目線では先ほどまでと違いなどないのだから。
奴隷の男は、シルビアの手札を全て持っているのだ。
あたかも一枚ずつとっているようなふりをして、実はその手のうちに全てのカードを隠している。そして、私のカードを確認してから最善のカードを出すのだ。さもそれが選ばれたカードであるかのような顔をして。
本来フェアでなくてはならない進行役だが、そもそも彼らがシルビアの手の者である事を失念していた。そもそも、わざわざ奴隷を二人用意しているので安心していたのだ。奴隷が相手の手札を知らないのなら、奴隷に選ばせる事によって必ず勝てる不正はなくなると油断していた。
何ともブサイクで、それでいて覆し難い不正。常に自分側の奴隷が後出しするという不自然さを孕みながらも、それでいて避けられない敗北。
私と彼らの間にある隔たりによって、私は彼らに干渉ができない。
私にはもう、この状況を覆す手段が残されていなかった。
避けられぬ、敗北である。




