区画長6
さて、このまま私は勝ってしまうのだろうか。
見たところ、地力では私の方が優位に思う。シルビアは決して愚かしい人物ではないのだろうが、それでも特別勝負弱く感じる。
このままならあっけなく勝ってしまうが、どうにもそうなる気は全くしなかった。まず間違いなく一悶着あるだろうという予感が、ハッキリと感じられたのだ。
そして、その予感は実際正しかった。
『5』
『6』
最悪のカードが、目の前に開かれる。カードの数が多い前半でさっさとリードしてしまおうと5の札を出したところを、見事に狩り取られてしまった。7を温存しておこうという思惑まで完璧に読まれた。
初めの一回だけだ。私が優位に立てたのは。
明らかに、何かをされている。それだけは間違いがない。
私にはそう長く時間があるわけではないというのに、その中でさらに頭まで使わなくてはならない。およそ簡単な作業などではない。面倒で、辛く、できればやりたくないような事だ。
「どうした? 怖気たか?」
あまりに安い挑発。しかし図星だ。ともすれば、私たちの計画はすべて水の泡なのだから。
その思いが無意識下に判断を鈍らせ、相手に気取られる事態となってしまった。
「まさか、まさか、まだまだ勝負はこれからでしょう」
自分で言っておいてなんだが、むしろ今すぐ終わらせたい。これからなどと悠長な事を言っている間に、私の居場所は組織に知られてしまっているだろうからだ。
さて、次のカードはどうするべきか。
現状では勝ち目など万に一つもないのだから、正直考えるのは無駄だ。
『3』
『5』
当然の最善手。4の札はすでに使われてしまっている事を思えば、間違いなく最善。なんの思惑を持ったわけでもないカードにすら、最善を違えない。
……いや。
今、何かしているのはシルビアではないのか?
奴隷の動きに、不自然なものがあった。何か、アルの方を気にしている。アルは上手く取り繕っているようだが、奴隷の方はそうもいかないらしい。
例えば、私に聞こえないように会話をする事は可能だろう。顔を見合わせないようにして、口をなるべく動かさないように、あるいは見られないようにしていれば、指示を出す事くらいは不可能ではない。
私と彼らの間には一枚板の隔たりがあるのだ。会話をする分に不自由はないとはいえ、その環境は内緒話に絶好と言えるだろう。
しかし、私の目からは何をしているのか分からない。
奴隷の男がアルの顔色を伺った事以外に、おかしなところなどないように思えた。
私のカードを担当する奴隷から合図を受けているわけでも、私のカードを担当する奴隷が選択とは違うカードを取っているわけでもない。
一見して、今までの勝負となにも違わない行動にしか思えない。
ならば、彼らは何をしているのか。
この勝負、このままなら私は負けるだろう。




