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区画長4

 ワンウェイ・ミラーというガラス質の物体に聞き覚えはあるだろうか。

 通称マジックミラー。ガラスと鏡の中間のような存在で、その物体を通る光は半分が透過して半分が反射される。

 この物体を暗い場所と明るい場所の中間に置いた時、暗い側からは問題なく向こう側が透過されている。暗い側からも光は反射されているが、明るい側から入り込む光に負けて見え辛くなっているためだ。

 そして、明るい側からは、あたかも鏡であるかのように見えるのだ。暗い側からも光は透過しているが、反射する光が強くて見え辛くなっているためである。


 この部屋は、そのようにして隔たれている。


 だからだ。私の方からは向こう側が見えるのに、向こう側に立っている奴隷の男からは私が見えなかった。鏡面だからだ。精々が、反射した自分の顔が見える程度だろう。


 そして、シルビアからも私は見えない。


 鏡、なのだ。

 シルビアからならば、鏡に映る私の手札が見えるはずだ。私がこちら側から当てるレーザーポインタの光も、きっとはっきりと見える。

 あとは奇を衒う事なく、ごく当たり前に最善のカードを選択すればいい。大した事など何もなく、当然の事ながら必勝の手だ。


 前回の勝負では、奴隷が私の札を取る直前で選択を変えたため、シルビアにたった一回だけ勝つ事ができた。あるいはと思い至ってとっさに講じた策ではあったが、どうにかこうにか成功はした。

 あれにより、私の仮説は証明されたのだ。それまでは、間違いなく不正を働いているという確信はありながら、それでもそれがどんなものなのか全く分からなかった。あの成功により、少なくとも私の手札を盗み見ているのだという確信が持てたのだ。

 そして、奴隷の男の視線。これによって、私の中での答えはほとんど出揃っていた。


「灯り、自分で用意しましたが構いませんね?」


「…………」


 文句など、言えるはずもない。それでは、不正があったと暴露してしまうようなものだからだ。


 マジックミラーは一定の方向からのみ鏡になるような物であると勘違いされる事も多いが、実際には説明した通り明るさによって振る舞いが変化する。つまり、私の方に充分な明るさがあれば、それは単なるガラスとなんら変わらない代物とする事もできるのだ。


「続けましょう、このまま。前回と違い、とてもやり易くなりました」


 これでようやくフェアな勝負。ここからが、本当の正念場だ。何せ私は、瞬く間に勝敗を決しなくてはならないのだから。

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