組織11
「ラルフ、流石に仕事が早い」
「しかし、アイツは支部長の顔に泥を……」
「それはもういいって」
俺がラルフを褒めるたびに、ギドは顔を歪める。ラルフの行動で、俺が本部から糾弾された事を気にしているのだ。
確かに、本部から俺の評価は落ちているし、その原因は間違いなくラルフだ。ただ、それを差し引いても優秀な人材である事に変わりはない。事実、今回も真っ先に侵入者を見つけたのはラルフだし、侵入者の拷問をしているのもラルフだ。
俺は、一時の気分で優秀な人材を手放すような無能ではない。
「あっちはラルフに任せて問題ないだろう。さっさと被害の確認だ」
重傷者数名、軽傷者多数。そして施設内の破壊状況深刻。
これらの詳細をつまびらかにしなくては、これからの活動への支障は深刻なものとなる。それこそ、本部から睨まれてしまうというものだ。
しかしそれでいて、監視の目は緩められない。面倒だが、もう一人もどこへ潜んでいるのかわからないからだ。
「人手が足りませんね。思ったよりも被害が大きい」
「それが狙いだったんだろう。実際ラルフがいなけりゃあ、もっと時間がかかったはずだ」
ギドが手際よく対応していなかったなら、逃げられていたかもしれない。アレやこれやと手間取った結果、大雑把すぎる警戒網の間を悠々と抜けられていた可能性は充分に考えられる。
「全ては支部長の采配のお陰です」
「よせよ、世辞はいらねえ」
正直のところ、幸運だったのだろう。ギドとラルフの立場が逆だったのなら、ほんの少し伝令が遅れていたならば、俺がすぐに戻れないような場所にいたならば、間違いなく被害は広がっていた。
だが、もう問題はない。あとは上手く事態を消化するだけだ。
「……しかし、ラルフにしては遅いな」
ラルフ。
恐ろしい男だ。この俺ですら、あいつの合理性には背筋が凍る。いつだってなんだって正しい判断をする。そこに、倫理観や良識などというものは存在しない。
およそ、人間的などという言葉からは程遠い男だ。
俺たちの仕事の多くは表層大地の良識からかけ離れたものではあるものの、それでもラルフほどのやつはそういない。
そのラルフが、直々に拷問をしている。とてもではないが、子供なんかに耐えられるものではないだろう。
だというのに、先程から声もしない。不自然だと、思わずにはいられなかった。
「様子を見てきますか?」
「そうだな。あいつは一人でやると言っていたが、俺の命で来たと言え」
それなら流石に、文句は言えまい。
「——必要ない」
不意に、かかった声。
足音もなく、ラルフは背後に立っていた。
「いきなり現れんなっていつも言ってんだろ」
「あぁ、すみません。ですが、情報は出ましたよ」
ガキには同情する。きっと、まともに言葉も話せなくなっている事だろう。
「もう一人は、区画長の屋敷に向かったようです」




