組織4
「二人組だ! 片方はガキ!」
怒号が響く。まさか旧大地の中枢にも繋がりを持つ組織に、侵入を試みる愚か者がいるなどと思ってもみなかった。確かにこの場は支部であるものの、だからといって組織の対応が甘くなるような事があろうはずもない。
愚かなのだ、あまりにも。何があっても逃げられるはずがない。
「全員で捜索しろ! 飯食ってる奴も便所に行ってる奴も女とヤってる奴も全員ケツ叩いて連れて来い!」
男の名前はギド。姓はない。
この組織に所属するほとんどがそうだ。組織に入った時に、多くの者は名を捨てる。地下に落ちた事によって、名を地上においてきたという理屈である。ギドという名前は、組織に入る際に自分で付けた。
別にそのような規則があるわけではないが、一種のしきたり。あるいは恒例行事。事実、ギドの同輩たるラルフも、そのようにして名を捨てているのだった。
「荒れてるな、ギド」
背後から、声がかかる。ここしばらく顔を見せていなかったラルフである。部下を何人か伴って、この一大事に悠々と表れたのだ。
「区画長のところに行っていたんだが、帰ってみれば何の騒ぎだ」
「ケッ! 侵入者だ。今日は寝つきが悪いに違いないぜ」
ギドは、忌々しげに下っ端を睨みつける。何故金庫室に入られるまでその存在を察知できなかったのか不思議でならないのだ。下っ端は気圧され、逃げるように部屋を出て行く。ギドの怒りは、侵入者を捕らえる事でしか収まらないだろうと思ったのだ。
しかし、ラルフはほくそ笑む。分からぬように、バレぬように。事が上手く運ばれている事を喜んでいる。
ラルフは、二人の事を報告していなかった。
支部内に老人と子供がいるなどと、知らされてもいなかった。
やはり、強行は正解だった。本来ならば折りを見るはずだったが、ラルフは今が好機であると判断した。
こちら側の不手際によって怪我をさせでしまった。そう言えば、格好をつける事を義を重んじると取り繕って生きているような人間を騙すのは簡単だろうと考えたのだ。
事実、疑われる事もなく二人を引き入れる事ができた。
「支部長には連絡を入れたか?」
「はん! そんなものが必要か? たかだか二人。たかだかガキだろうが。見てろ。水滴が凍るよりもあっという間に解決されるぜ」
「あぁ、そうだろうとも」
水滴が凍るよりも。この旧大地の極寒の中では、水滴などたちまち凍り付いてしまう事の例えだ。それほどの短い期間よりも早く、この事態は解決する。
実のところ、ラルフも概ねそう思っていた。この支部から二人が逃げる事はできないだろう。しかし、それでいて信用してもいた。
アイツらは必ず完遂するだろう、と。




