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組織1

「全く、無茶するよね」


「面目ない」


 カジノでの一件から数時間。もう手の手当ても終えて、私はようやく動けるようになった。まだ痛みは残るが、活動には問題ない。なによりも、この程度の痛みなど気にしていられない状況なのだ。


 充分な光量と過ごし易い室温。清潔感のある白を基調とした内装と、複数の大きめなベッド。布団からはわずかに消毒の香りが感じられ、それ以外にもなんらかの薬品と思われる瓶なんかが戸棚に整列している。

 一見して、表層のそれと遜色ないほどの設備が、この場にはあった。

 現在、ラルフの手引きで組織の支部にいるのだ。もっといえば、私を治療するための医務室に、


 組織傘下のカジノで行われた失態は、ラルフを通じて組織内にすぐさま知れ渡ったらしい。その失態の是非を問われる形でラルフの上司がその力を失った反面、その失態を収めたとしてラルフの評価は上がった。

 そして、その後処理として、組織の支部で被害者である私の手当てをしたのだ。外聞を気にしてその誠実さをアピールするという名目は、訝しがられながらも反論される事もなかった。


「もう動いて問題なさそう?」


「動けはしますな、少なくとも」


 清潔な包帯でグルグル巻きにされた左手を見て、弱い力で握ってみせる。若干ぎこちないものの、日常生活に支障が出るほどではないだろう。


 ラルフは、今この場にいない。流石に忙しい身でもあるからか、私をこの医務室に連れてすぐに行ってしまった。私たちに気を遣って人払いまでするあたり、やはり優秀な男なのだろう。


 なにせ、ごく自然に私たちのサポートまでこなしてしまうのだから。


「じゃあ急ごうか。時間は早ければ早いほどいいんだから」


「ですな。誰も気がつかないうちに終わらせてしまいましょう」


 ラルフが私たちをこの支部に連れたのは、何も手当てのためだけではない。私が自らの身の危険も鑑みない策に出た事は咄嗟の出来事だったが、ラルフはその行動を受けて見事な対応をとった。

 私たちの目的は、確かにこの場所にあったのだ。


「忍び込む手間が省けましたな」


「これ以上にないね、この状況は。地図は必要?」


「すでに頭に入っています。現物は破棄しました」


「頼もしい」


 ラルフから渡された地図によると、まっすぐに行く事ができれば十分もかからないはずだ。


「手筈の確認は?」


「必要ない。ルートは問題ないな?」


「覚えていますな」


 記憶を頼りに、私たちは部屋を出る。若干の薄暗さを感じる廊下の、見える範囲には誰もいないようだった。


「行きましょう、迅速に」


「そうだ確実に」


「金庫に」


「あぁ、金庫に」


 私たちは、組織の内部は窃盗を働きに来た。

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