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賭博14

 私たちが余裕ぶっていたのも、全ては安全が保障されていたからに他ならない。

 何かまずい状況になった時、必ず助けに入るという保証がなされていた。


「な、なんだよお前は! 外野が口挟むんじゃねぇ!」


「外野か、外野、ねぇ……」


 ただ事でない雰囲気を感じ、アレクサンドルも声が震える。勘のいい男ではあるようだが、しかしその行動は賢明とは言えなかった。最善は、黙ってこうべを垂れる事だったのだ。言う事を聞いてさえいれば、せめて痛い目は見ずに済むというのに。


「聞いたかお前ら? どうやら俺は外野らしい。外野だ、俺が!」


 呼び掛けると、客の中の何人かがクスクスと笑った。そのまま前に出て、ラルフの脇に控える。ここまでくると、流石のアレクサンドルも自らの行為が過ちであったと気がついた。


「おい、お前ら! こ、コイツらを……」


 その続きは、話す事ができない。

 ラルフの後ろに立つ男が一人、口に指を当てたのだ。たったそれだけの事だが、それだけで呼吸すらままならなくなる。静かにしろというジェスチャーだけで、大の男が震え上がっているのだ。


 用心棒も、従業員も、アレクサンドルも、何を言う事もできない。言い返す事など、できるはずもない。


「たまに見に来りゃこれだ。負けるだけならいざ知らず、自分で言った約束まで反故にするんだからな。お客の前でみっともねぇぜ。これで失う信用を、お前はどうやって取り戻すつもりなんだ?」


「え……!?」


 ラルフの言葉に、ようやく自らの行為がどれほどの事なのかを理解したらしい。

 その行動がどれほど店の不利益となるか。そして、目の前の相手が誰なのか。


 私たちがこの辺りの店に絞って行動していたのは、ここがラルフの管轄だったからだ。もしもの際に、こうしてラルフが介入しやすい状況であると判断していた。

 アレクサンドルが何を言っても、誰が動くものだろうか。なにせ目の前にいるのは、オーナーの代理人なのである。店と繋がってはいても経営までは把握していないアレクサンドルは分からなかったのだろうが、しかし分からなかったで済まされるような不敬ではない。


「お、俺はこの店のもんじゃない。客同士のゲームだぜこれは……」


「冗談を言ってくれるな。面白くないぞ」


 全てを知っているラルフには、そんな嘘が通じるはずもなかった。ここまでの会話には何一つ駆け引きなどない。ただ、ラルフが状況を進めていくだけの作業だ。


「俺はもう行くが、お前らは示し付けとけ。お客が呆れて帰っちまう前にな」


「ならすぐに」


「頼むぞ」


 示しを付ける。

 その言葉の意味をわからない者は、その場にただの一人もいない。これから何をされるのかを想像し、アレクサンドルは今にも泣き出しそうな表情をしている。


「行くぞクソガキ。ジジイの手当てもしなきゃあな」


「は、はい」


「助かります……ありがとうございます……」


 私たちは、もう後ろを気にする必要がなかった。誰も私たちの行動に異を唱える事などできず、誰も私たちを妨げる事などできないのだから。

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