賭博9
現在、この場所にはいくつもの端末がある。
俺が所持している物、客が所持している物、用心棒が所持している物、そして爺さんとガキが所持している物。
それぞれの端末には、それぞれに決まった持ち主がいる。旧大地の住人は、一人残らず一つの端末を所持しているのだから。しかし、どうやら例外がいたようだ。一人で二つの端末を持つ異端。如何様にかして、二つ目の端末を手に入れた者。
「お前が使ってる端末を確認する」
この言葉に、拒否権はない。当然だ。あまりにも怪しいこの状況下で、まさか断る事などできるはずもない。断る事と白状する事はほぼ同義だ。ならば彼らは、下手な抵抗をしないほうが賢明であると判断したらしい。
「細工されてます」
爺さんから端末を取り上げた男が、俺をまっすぐ見て報告する。俺はその端末を受け取り、今度は自分で確認した。自分の端末を小脇に置き、じっくりと念入りに。
確かに、機能していないようだ。どこをいじっても、正しい反応を返さない。間違いなく、細工されている。普段から使い慣れた機械である。思い違いなどあるはずもない。
「つまり、お前は熱を出さない端末でゲームをしてた。そういう事だな? 道理で目盛りを上げても平然としているわけだ。なにせ平気なんだからな。どれだけ高くしても気になんてする事ないって思ってたわけだ」
「……その通りです」
「お爺さん!!」
ガキが抗議の声を上げるが、爺さんは無視する。賢明だ。もしも口答えするようだったなら、その時点で指を詰めさせていた。
「違う! お爺さんは嘘を言ってる! 相手に合わせた方がいいとか思って、本当は何もしてないのにやったって言ってるんだ!!」
うるさいガキだ。抱きすくめようとする爺さんを突き飛ばし、ガキは俺を指差した。賢明な爺さんから離れて俺に失礼を働くガキなんてすぐに始末できるという事が分からないのだろうか。
「待て! まだ勝負の途中だ! 私とこの子の命は、この勝負にかかっているはずだろう!」
「チッ……確かにそうだよ。何にもしねぇって」
俺に詰め寄る爺さんを煩わしく思いながら、言っている事は確かに正論なので反論はしない。どちらにせよ、このゲームが終わる頃にはどちらの命も頂くのだから。
「よくもまあこんな物を用意できたもんだな。素人に簡単な細工じゃあねえだろ」
「ゴミ山に行けば、壊れた端末くらい沢山あります。そこから拾い上げれば、完全無料で細工完成です」
「はぁん、なるほどね」
つまり、コイツらは下手を打って捕まったわけではないという事だ。初めからこのゲームをするための用意をしていて、わざと捕まるような事をしていた。
こちらの実情をよく知っている者の行動だ。何か怪しい者に対して、俺たちがどのような行為に出るかを知っている。それがどこから得た情報なのか、知る必要が出てきた。
「ゲームは続行だ。当然、正常な端末でな」
今度こそ端末が正常である事を確認し、爺さんには触れさせもせずに機器をセットする。すでに一度イカサマをしようとした身としては、文句など言えるはずもない。
これで、もう負けない。
俺の勝ちだ。




