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賭博5

 場所は、カジノスペースへと移された。


 彼は、いつも客の前で見せしめをするのだ。それを知っている客たちも、こちらに好奇の目を向けている。これから行われるのは、この辺りのカジノでも有名なギャンブルだ。


「オラ下がってろぉ! 邪魔だ!」


 その掛け声に、客の波はスッと引く。勝っていた客も、負けていた客も、先ほどまで物言いをして怒鳴り散らしていた客も、ゲームそっちのけでナンパをしていた客も、全員が一様に静まり返った。

 中にはキョトンとしていて何が起こるのかわからない者もいるようだが、少なくともただ事でないというくらいは感じている。


 そんな中。

 私はカジノの中央の、一番立派な席に通された。余り広いとはいえないこの建物の中にあって、私たちの周りには充分なスペースが確保されていた。必然、他の客はぎゅうぎゅう詰め状態となるが、それでも苦情の声は上がらない。それほどに、我々は近寄りがたいという事だ。


「座れ、楽にはしなくていい」


 アレクサンドルがそう言うと、私が何をするまでもなく力尽くで椅子に座らされた。背後に立つ屈強な男は、その肉体が見せかけなどではないと言う事実を存分に証明してくれたのだ。

 イチは、私斜め後ろあたりで控えている。全く、一言も話していない。


「手荒いですな、私たちが何をしたというんです」


 肩をすくめてみせる。長髪のつもりだったが、大した反応を見せる事もない。見た目よりもはるかに落ち着いた男のようだ。しかし代わりに、周りの屈強な男たちはこめかみの辺りをヒクヒクと動かしていた。


「落ち着け単細胞ども」


 呆れ混じりに、アレクサンドルがたしなめる。

 しかし、その場で何も言い返さないのは収まりが悪い。ため息とともに私に向き直り、彼はゆっくりとこう言った。


「何をした、か。何でもねえよな。ちょっと演技して、ちょっとだけ勝っただけだ。おお、困ったぞ。何も悪い事してねえじゃねえか。しかもわざとやったっていう証拠もない。こりゃお前たちを拘束する理由がねえぞ」


 おどけて見せる。ふざけて見せる。

 当然、そんな訳があるはずもない。

 本心からそんな事を思うようなお人好しは、この旧大地にたった一人も存在しないのだ。


「あまり戯れますな。であれば私たちは逃がしていただけるので?」


「それこそ戯れるな。理由なんているもんかよ、カジノの中に裁判所は建ってねえ」


 もはや演技をやめたアレクサンドルは、なかなか獰猛な表情をする男だった。もしも表層大地の子供が見たなら、たちまち気を失ってしまうだろうというような笑みだ。ライオンもトラもジャッカルもハイエナも、顔の怖さでは彼に遠く及ばないだろう。


「アレックス、持ってきたぜ」


「おっと、気が効くな」


 先ほどまで私たちを見張っていた用心棒の男が、店の奥から何か器具のような物を運んできた。それは一見してただの金属の棒と、爪のような部品のついたよくわからない機械だ。棒の棒は私の指先から手首までよりも僅かに長いくらいの長さがあり、太さは親指ほど。 爪の機械は、手の平でちょうど握れるくらいだろうか。

 そのどちらも、()()()()()である。


「これからお前は俺とゲームをする。勝ったら命は助けてやるぜ」


 これが、この辺り一帯のカジノの恒例。

 粛清ですら、ゲームで決まるのだ。


「ゲームの名前はチキン・ヒート。ビビって漏らしちまわねえようにな」

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