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偽りでも強くあろうという意志

「なるほど、確かに木っ端じゃねぇらしい」


 ラルフが肩をすくめる。そして、笑う。先ほどまでの小馬鹿にしたものではない。その感情がどのようなものなのか正確に推し量る事はできないが、悪感情によるものではないように思えた。


「特技を持つのは、君たちばかりではないという事です」


 音もなく歩き、暗闇でも活動できる。なるほど、この世界でこれ以上の能力はないだろう。

 しかし、それ以上がないと言っても万能であるはずがない。


「ある程度、あたりを付ける必要がありました。相当手間と時間がかかりましたが、ようやく背後を取れました」


 幾度も、見当違いな場所に出た。ここにいるはずだという場所を何度も歩き、何度も空振った。それでようやく、背後を取る事ができたのだ。


「お爺ちゃんすごぉい。でもさ、帰んなくてよかったの?」


「おぉ、それもそうだ。意外に勝気な性格か?」


 今度こそ、二人の反応は好意的なものだ。座って話をと言いながら見下していた今までとはわけが違う。私は力を示し、二人はそれを認めた。遥か高みから私を眺め、値踏むような時間はもう終わったのだ。

 この瞬間から、私たちは対等に話す事ができる。


 ——と、カッコつけたものの。


「バッテリーがもうなくて……」


「あぁ……」


 帰るだけの余力がないと判断し、仕方なしに二人と接触したのだ。

 ただ助けを求めるのみでは足元を見られると警戒し、できる限りやり手のよう演出をした。本来必要のない背後への移動も、挑発的に声をかけたのも、全てはそのためだ。


「私の負けです」


 たった一言、これだけを言うために。

 相手に言われるよりも、はるかにマシだ。


「もう、私には戻るだけの余力がありません。結局は、お二人の掌の上だったと言う事です」


「いや、いや、お爺さんは期待通りの実力を見せてくれたよ。凄いよ」


「そうだな。正直言って、その辺のガキと何が違ぇとも思ってなかった。まぁ、そうでもなんでも使い潰してやるつもりだったわけだが」


「それは……おっかないですな」


 抵抗してよかった。もう少し気が付くのが遅かったなら、バッテリーが少なかったなら、二人の場所を見つけられなかったなら、私はどこかで震えていたに違いない。

 二人は私を面倒そうに探し回り、凍りそうになっている私を見てため息をつくのだ。別に使い潰すのだからこんなのでもいいかなんて言いながら、仕方なしにまた私の看病をする。

 これから行われるだろうなんらかの思惑への参加を強要された上で、なんの意見を出す事も叶わない。


 何が行われるのかなど見当もつかないが、そんな事は御免だった。うまく行こうと行くまいと、私の扱いは底辺を這うに違いないからだ。

 だから、せめてそうでない状況にまで私の評価を上げたかった。


「俺たちのバッテリーを分ける事は構わないが、当然タダでとはいかねぇな」


 こう言われた時。


「仕方ありませんね」


 こう返す事ができるように。

 地面に頭を擦り付けず、涙を流さず、肩を震わさず、過度に下手に出ないために。


「私は、何をすればよろしいのですかな?」


 二人は笑う。嘲笑などではない。恐らくは、仲間として受け入れられた笑顔。


「なぁに、太陽を昇らせるよりは簡単な事だ」

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