表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/76

惑う事に慣れる年頃

 灯りが、頭上からかけられる。容赦なく、私の姿が照らされる。


「ヤッホーお爺さん」


「……っ!」


 ラルフに続いてイチが、ニコニコと笑って私に手を振っていた。


 何故、こんな事が。

 私は、確かに来た道を正しく戻っていたはずなのだ。気が付かないうちに道を外れてしまうなど、私に限って起こりえないはずなのだ。


 踵を返し、一心に駆け出す。


 何故、私は戻ってしまったのか。

 何かされただろうか。例えば、無理やり座らされた時に。あるいは、イチと暮らしていた何日かの間に。

 ならば、初めからこの状況を想定していたというのだろうか。まさか、そんな事があるはずもない。


 ——そのはず、なのだが。


「おっ帰り〜」


「ハッハ! クソガキめ、煽る煽るぅ」


 不可解、そして不愉快。楽しげに、愉快げに、笑いながら私を見下す。

 いつの間に、道を外れているのだろうか。いや、外れているどころではない。真逆なのだ。いつの間にか、百八十度真逆の方向へと歩いているのだ。

 納得がいかない。やはり、何かがおかしい。


 振り向けば、二人は灯りを消してしまっているようだった。

 これだ、これがまた厄介。遠くから見て目印にできないよう、二人は必ず灯りを消す。私は二人を見失ってしまうので、戻っていても気がつけないのだ。

 そして、私が戻れば灯りを点けて笑うのだ。


「お帰り〜」


「遊んでいる暇があるのか? 明日の仕事に差し支えるぞ」


 何がどうなっているのか、全く分からない。

 あまり長く手間取ってはいられない。灯りをつける余裕すらない私は、当然長時間の活動に耐えられないからだ。あまり長く活動していると、そのための熱がかさんでしまう。これを全て使い切ってしまった時、一時間もしないうちに凍えてしまう。

 つまり、私に残された時間はそう長くない。


 真っ直ぐに、真っ直ぐに、決して振り返る事なく。

 しかしそれでも、元の場所に戻ってしまうのだ。


 何か、何か、トリックがあるはずなのだ。

 私の方向感覚を狂わせる何か。それを悟らせない何か。現在位置を誤認させる何か。

 私は何かをされていて、それに気が付いていないのだ。


 例えば、なんらかの薬品によって感覚を狂わされている可能性。二人が私に近づいたいずれかのタイミングで、薬品か何かを吸引させられた。

 当然、まるで現実的ではない。


 ならば、足場そのものが可動式である可能性。私が気が付かないうちに、私は移動してしまっている。

 これは、あまりに大掛かりすぎる。


 どちらも、ほとんど考えられない。あり得ないと言って相違ない。だが、何かをされている事は間違いのない事実だ。そうでなくては、現状に説明ができない。


 ……いや。

 いや、待てよ。ともすれば、もしかすれば、そうではないのか。

 あるいは私は、何もされていないのか。何もされていないにもかかわらず、このよう状況になっているのか。


 あり得る。これは、確かにあり得る事だ。


 それならば、この状況は充分に打破できる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ