彼と彼女の出逢い
この旧大地には、区画長の他に大きな組織がある。
いつの時代、どの場所にも存在する、権力と共癒着した地下組織。場所によってヤクザ、マフィア、ギャングなどと様々な呼ばれ方をするそれは、やはりこの旧大地においても例外なく存在するのだ。
時に暴力で、時に財力で、時に権力で旧大地の平穏を維持し、それによって生まれる利益を甘受する。
酷く悪魔的でありながら、しかしそれでいて平和的ですらあった。
必要悪とは、彼らの事だ。彼らなくして、この不安定な旧大地の文明など維持する事は叶わない。
ラルフは、その一員なのだ。
現在、この十四区を納めるのはシルビア・オードクスだが、組織の担当はラルフの直属の上司にあたる。
しかし、組織の幹部は多忙であるため、ごくわずかな範囲に限り部下に管理を任せるのだ。
ラルフは、このゴミ山の一帯を任されている。この辺り一帯の取引を任されているため、オヤジの取引は主にラルフが行っている。
そんな日々の最中、見つけたのがイチだ。
わざと仕事の手を抜いて、その日のノルマだけしかこなしていなかった。しかし、その一方で向こう一ヶ月分のゴミを収集してあったのだ。日々のノルマは、その“タメ”の分から小出しにしていたのだ。
あまりにも、もったいない。それはつまり、向こう一ヶ月分の利益がその場に滞っているという事に他ならないのだ。愚かしいオヤジが働き手のモチベーションを維持できないがために、そのような機会損失が生まれるのだ。
ラルフはすぐさま、イチをオヤジには内密に雇った。
働きに対しては、相応の報酬が支払われるべきだからだ。そうする事が、結局は最も大きな利益を生むのだと、ラルフは知っていたからだ。
ラルフは、これを上司に報告した。このままではせっかくの利益を食いつぶすと、報告書にまとめて。
結果は、黙殺。
返った言葉は、正す労力と期待できる利益が釣り合わないという、たったそれだけだった。正すためにかかるだろう労力も、期待できる利益も、何一つ具体的な数字を出さない上での決定だった。
つまるところ、面倒だったのだ。
このような些事に面倒をかけたくないと、遠回しにそう言っているのだ。
ラルフは、反論を飲み込んだ。
それが意味のない事であると知っていたからだ。
しかし、代わりとして一つ思い至った事がある。この不精な上司は、組織に利益をもたらす事はない。こんな事なら、自分がその椅子に座ったほうがはるかにマシだと。
そうしてラルフは、とある計画を練る事となる。
イチと自分と、これから引き入れる、もう一人を加えて。




