勝負 4
ここから先は、消化試合だ。
もはやまともに戦うつもりなどなく、何も考える事もできない。
私は、諦めてしまった。奴隷として一生を終える事に抵抗する意思が、もう存在しないのだ。
もういいやって言う事が、こんなにも簡単だなんて思わなかった。
まあ良いかって思う事が、こんなにも楽な事だとは知らなかった。
こんな事なら、もっと早く諦めておけばよかった。なまじ努力してしまったがために生半可な権力を得てしまい、半端に権力など持ってしまうからより強い人間に利用されるのだ。
あの時一度折れた心は、いとも容易くもう一度折れてしまった。きっとヒビが入ったままだったのだ。ずっとヒビを抱えたまま、いつ折れてしまってもおかしくなかったのだ。
次に選んだのは二の札だ。これもまた、残った札の中で一番左にあったというだけの理由で選んだ。何を考えるまでもなく出したその札は、シルビアの出した三の札にあっけなく狩り取られた。
勝負も半分を越えて、勝利は一つもなし。この続きをする事が、面倒で面倒で仕方がなかった。
あと、たった三回の勝負。適当に終わらせれば十分もかからない。私の目の前のプレートには五、六、七の札が行儀よく並んでいる。私が思い切る事ができずに、最後まで残った高い札だ。しかし、シルビアの手札は一、六、七。一の札はより高い札に合わせたい事を思えば、この状況は圧倒的に私が不利だ。
いや、改めて言うまでもない。最初から最後まで、私はずっと不利な結果を出してきた。勝利など唯の一度もなく、巻き返しなど望むべくもない。
『五』
この状況で、私が選んだふ札がそれだ。少ない札から使っていっていたので、同じように少ない札を使ってしまおうという程度の考えに過ぎない。思惑など何もなく、考える時間すら惜しいと考えた結果だ。自分で自分を鼻で笑いたくなる。もうそろそろ目眩がしてきそうなほど衰弱した体で、まさか笑うだけの余裕があるとは思わなかった。
『六』
シルビアの札はそれだ。
やはり最善手。これによって、得点の過半も抑えられてしまった。
「……ぅ!」
あまりにもの自分の不甲斐なさに、気が抜けてしまったのだろうか。視界が回り、体の自由が効かなくなった。
おそらく1秒にも満たない時間が何十倍にも引き延ばされ、床に頭をぶつけるまで随分と長くかかったように思う。
バタン、と。本当にそんな音がした。奴隷の男たちがビクリと驚き、視線を私がいる部屋の中に漂わせる。
もう少しで頭を打ち付けるところだった。そうなれば、もう意識は保つ事ができなかった事だろう。
「大丈夫ですか?」
アルの声がかかる。
私はどうにか壁にもたれかかり、ゆっくりと首を縦に振った。声を出してはならないというルールはもとより、声を出す事すら辛かった。
だが、この勝負は続けようと思う。
このゲームの違和感に、ようやく気がつく事ができたのだから。




