勝負 3
完璧に、読まれている。
たった一だけ高い数字での敗北。これ以上にない悪手だ。これによって、私の不利は決定的なものになった。
手札でも、獲得した数字の上でも敗北している。さらには読みでも、完全敗北だ。
いつだって、私は弱者だった。
周りから見れば優秀な人間だったのかもしれないが、私はいつでも不安を抱えていた。優秀であったのはその不安を払拭するためであり、そのために必死だったのだ。
私は決して優秀などではない。
常に何かの陰に隠れて、身を守る事ばかりに終始していた。
この場所にいるのも、私の弱さゆえなのだ。
なまじ優秀に見えるがために権力者の側近などという地位に納まってしまい、最後には不正を被って切り捨てれれた。いわゆるトカゲの尻尾切り。私も不正を黙殺していたために無実でなどあるはずもないが、それでもその程度なら地下に送られるほどの大罪ではなかったはずだ。
私は全ての罪を背負い、私でない人物の代わりにここにいる。
きっと、私を切り落とした彼は、今頃地上で再び悪事に手を染めている事だろう。次の尻尾を用意を済ませて。
私は、そんな人間だ。
昔から弱く、頭が良いつもりになっているだけの愚か者だ。
あまりに非力、あまりに弱気。そんな事で何かをできるつもりでいたなど、思い上がりも甚だしい。
今選択した四の札も、本当ならば二の札を選ぶべきだった。相手が低い数字を出すと思っているのなら、それを狩る事のできる札の中で最弱を出すべきなのだ。つまりは、一を狩るために二を。さらにいえば、読み違えてシルビアが高い札を出した場合でも被害を二に抑える事ができる好手だ。
だというのに、出した札は四。間違いなく日和った結果であり、まさしく私の弱さの体現だった。
『三』
もはや勝利を望めないと諦めた私が選んだ札がそれだ。別に何か理由があるわけでなく、ちょうど立っている位置から正面だったというだけの選択であり、勝とうと負けようと構うものじゃない。
早くこの終わらせてしまおうという気持ちしかなく、勝とうという意思など消えてしまった。
負け犬の思考。
私はもはや、勝負すらできていない。この勝負は私の値踏みのために行われているわけだが、この諦める事すら判断材料なのだとすればこれ以上にない判別方法というほかない。
「選択はそれでよろしいですか?」
アルの声がする。私は、とうとう何の反応も返さなかった。言葉を発せられないにしても、首を振る事も手をあげる事もしなかった。しかし、それでも何か反応を促されるような事はなく、奴隷の男は先ほどまでと変わらずゲームを進行する。
『四』
最悪の連続。次で半分という転機に至るまで、私はたった一度の勝利もできない。




