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5:冒険者は武装を外す

「あの、すいません。依頼の途中だったので、湯を使うことなど数日できておらず、しかも逃げるために走った後だったもので」

 エリザが真っ赤になりながら小さな声で謝罪する。レンとアイがこそこそとお互いの匂いを嗅いでいたりするので、なんとなく察したB2の方が申し訳ない気持ちになってしまった。だが、それをフォローできる、空気を読んでいるのかよく分からない男もいたのだった。

「どこに謝る必要が? 自分の仕事をやりきった結果でしょう? しかも、最後は耐え忍んでの逃走で、その状態の方を労うことはあっても見下すようなことはしませんよ?」

 先ほどまでの交渉用の笑顔とは違う、心の底から相手を思いやっての笑顔に4人は内心感激してしまった。

 護衛の依頼を果たしても返り血などで汚れた自分たちを心配するような依頼主はいなかったし、目の前で傷付いたら罵声が向けられることもあった。自分達を冒険者という格下の相手としてではなく、対等の人間として扱ってくれるというのはそれほど大きな意味を持つことだった。エリザにとっては、急なことであったとしてもかつての自分の目の前に薄汚れた相手が現れたら目の前の人物のような反応ができたか分からないという自責の思いも含んでいたのだったけれど。

「では、装備だけはずしてもよろしいでしょうか?」

「いちいち確認しなくてもいいって。置き場が必要なら準備するけど?」

「私たちにはマジックバッグがありますから。装備は自分たちで管理できます」

 エリザが口を開くより早く、ハナが答えを述べていた。どこかエリザを咎めるような視線であったけれど、ハナにはアイからの冷たい視線が刺さっていた。

 口を挟むとまずい奴だと直感したショウは、気付かない振りをして話を進めることにした。

「じゃあ、更衣室を……って、ここで?」

 着替えられる場所に案内しようとする前にエリザ達は装備を外し始めていた。鎧のような大きい装備のないアイとレンはアクセサリーのようなものをしまうくらいであったが、ハナは弓を引くための小手を外して匂いを嗅ぐということをしていた。両手に小手をしていたエリザはてきぱきと小手を外すと、それを小さい袋に押しこんだ。

「じゃあ、いつもと同じくレンが私で、アイはハナの方にお願いね」

「うん。わかった」

 エリザの指示にレンが頷くと、エリザの胸鎧の脱ぎ方を手伝いに入った。同じような胸鎧をしていたハナもアイの手伝いでなんとか外せているようだった。

「……そっか。鎧って一人で脱ぎ着する物じゃないんだ」

 茫然と見ていたショウが新しい発見に感心している間にも鎧の外し方は着々と進んでいき、後は体から離すだけというところまで進んでいた。少女二人でやっているにしてはとても速いものである。そして、エリザの鎧が外された時、鎧の中に納まっていたとは思えない質量がゆさりと現れた。

 たゆんなどではなく、ゆさりである。しかも、鎧の下に着ていたのは胸元から首回りが大きめにあいた服一枚だけだったらしく、下着の線も見えずに服からこぼれ落ちそうな具合であった。艦内の弱い重力にさえ負けるような状態であったそれに、ショウは一瞬だけ目を奪われたが慌てて声を上げた。

「なななななんて格好ですか!」

 しかし、ショウの言葉に当のエリザは首を傾げた。レンも同じよう様子で、二人とも今のエリザの服装がおかしいとは思っていないのがはっきりと分かるものだった。ショウが助けを求めるようにハナとアイを見れば、ハナもエリザと大して変わらない状態だったのでショウは二人を見ないように手で視界を隠しながら下を見るしかなかった。

「あの、何か粗相をしてしまいましたでしょうか?」

「そうじゃないんだ。ちょっと文化とかそういった物の違いに気付けなかった迂闊さを呪っているだけだから」

 エリザが不安そうに声をかけるものの、ショウはエリザを見る訳にもいかずに下を見たまま力なく答えた。

「マスターはちょっとへたれなだけなんで気にしなくていいですよ~」

 ショウの態度にどうしたものかと悩む少女達であったが、突然扉を開けて入ってきて、しかも全て分かっているという様子の白髪の少女が笑顔で割って入った。服装はメイド服なのだが、どこかキラキラしたものがつけられているというか、純粋な作業用の服ではなかった。

「あなたは?」

「かなしいですね~。私の事を分からないなんて」

 尋ねたハナに対してとてもわざとらしい仕草で悲しみを表現する。それでハナだけでなくエリザも思いだそうとした。しかし、即座にアイが不安そうに問いかけた。

「B2さんですよね? その体がお世話用の体ということであってますか?」

 アイの言葉で悲しそうな仕草を止めると、少女は楽しそうに笑みを浮かべた。

「やっぱりアイさんはいい子ですね~。声は同じなんですからすぐに分かって欲しかったんですけど」

 後半、B2が横目でハナを見る視線は少し冷たかった。しかし、すぐに切り替えると、少女達に向かって手招きした。

「お風呂の準備ができましたから、まずは入浴です。体を綺麗にしたら、着替えと簡易メディカルチェックをしましょう。たちの悪い病気やケガがあったら大変ですからね」

 お風呂という言葉にエリザたちは満面の笑みを浮かべた。冒険者として慣れてはいるものの、少女である。湯あみできるなら喜ばしいのは当然であった。

「さ、この子について行ってくださいね。私は後ろからはぐれないよう見守っていきますから」

 先ほどレンが破壊したのと同型の艦内巡回用ロボットに先導を任せると、B2はショウにだけ聞こえるように近づいてにやっと笑って言った。

「お風呂に入れている間に頭を冷やしておいてくださいね? でも、賢者にならない程度にだけどね」

「お前なぁ……」

 顔を上げたショウに対してひらひらと手を振りながらB2は部屋を出て行った。B2を見送ったショウは苦笑しながら、これからどうするかを考えるのだった。


高貴な姫様系が垂れてたり離れてたりというのはある意味魅力だと思うの。

二次元というファンタジーな世界だからこそ言えるのだけれど。


エリザが鎧の下に着ていた服は、どこぞの空腹系剣士の服をイメージすると分かりやすいかも。魂が宇宙帝国の王女のと宇宙海賊のとどちらでも。

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