内戦国家オートランド
契約を済ませてから、オートランドまでは森林街道を抜けて馬車で丸一日かかった。
その道中、銀髪の少女から色々と国の境遇を聞かされた。
オートランド王国はかつてエルフが治る亜人と人間の共存を目指し、発展していたらしい。
しかし生まれながら魔力量の多い人間が利益を求めてこの地を離れて行った。
そしたら亜人だけの弱小国家の出来上がりってことみたいだ。
だから俺のいた国では差別的な扱いでこの国を見ることが多かった。
「こりゃ酷え国......ていうか村だな」
朝になり、ぽつぽつと民家が見え始めた。
街は破壊されているところもあり、焼け跡なんかも多かった。軽い反乱でもあったのだろうか。
「なあ、あれは図書館かなにかか?」
「何言ってるんですか?あれが王宮ですよ」
近くで見ると、より小ささが実感できた。
「おいおい、下級貴族の邸並しかねえじゃねえか!」
「そんな大声で言ったら王様に失礼ですよ」
そんな会話をしながら、驚いたことに王直々に出迎えてくれた。
「これはこれは、よく来て下さいました。錬金術師様」
(直契錬金術師ってのはこんなに優遇されるもんなのか)
呑気にそんなことを思っていると、王はこう続けた。
「この国には、もう政治の経験のある者も残っておりません。どうか少しでも其方の錬金術で国家をより良く、運営していただきたいのです」
「ってことは俺がこの国の運営全部やるってことですか!?」
「そのつもりだったのですが...」
「......いえ、何でもないです」
銀髪少女の方を向くと口笛を吹きながらそっぽを向いていた。
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「まあまあ、契約書にはサインしてしまったわけですし、一緒に頑張りましょうよ!」
「もういいさ、あれだけ寛大な扱い王様から受けられて、ただで帰れるかよ」
少女は自分の思い通りにことが進んで気分上々な様子だ。マイペースな奴め。
「ところで、あなたまだ錬金術師らしいこと全然してないですけど、何ができるんですか?」
「ふっふっふ...何を隠そう、俺がリストラされる前は暗記だけは得意でな、帝国の調合書は全部覚えてあるんだよ」
「ま、魔力が弱いからリストラされたんだけどな!」
爽やかな笑顔でそう返した。
「それ、何の自慢にもなってませんよ......で、まず何から始めます?」
とりあえずやる事は沢山あると思うが、今一番気になっている事を問うことにした。
「何でこの街はこんな荒れてんだ? 戦争でもしたのか」
「まさか、でも争いは起こってます。隣の集落のユニコーンたちが毎週末になると、襲って来るんです。」
オートランドには色んな種族がいると聞くが、ユニコーンまでいるとは正直驚いた。
「実は......もう次に来られたらひとたまりもないんですよ」
「おいおい、そんな状態で国存続したいって言ってたのか?」
折角雇われた国が消滅してしまっては元も子もない。
「はい、帝国の錬金術師さんなら何か助けになってもらえるかと...」
「言っとくが俺は錬金術師だ、俺が居たところでどうこうできる問題じゃないんだ.....ってまてよ、」
「どうかしたんですか?」
ある一つのアイデアが頭の中に浮かんできた。
「なあ、この国で獲れる資源一覧ってあるか?」