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幼馴染みは残酷に飴と鞭を使う  作者: 明瀬 うらび
出会い~中学生編
4/79

4、幼馴染みの回想~陽視点~

咲良は本当にかわいい。

俺がラブレター貰ったり、告白されると、涙目になって俺を見る。

日常茶飯事でいい加減慣れるものだと思うのに、毎回同じ反応をする。

「咲良が「俺のこと好きだから誰のものにもならないで」って言うなら全部断るよ。どうする?」と言えば、

咲良は真っ赤な顔で


「陽くんが好き。お願い。誰のものにもならないで」と言ってくる。

真っ赤な咲良の顔を思いだし、部活の休憩時間に、ふと笑いが漏れた。


「綾部。毎回毎回星野をいじめるのはやめろ。可哀想だろ」


神埼は普段俺と咲良のことには口を出さない。いつも傍観しているはずなのに、珍しいこともあるもんだ。


「別にいじめてないよ。変なこと言わないでくれる?神埼。大体俺がいつ咲良をいじめたっていうの?」


「今日の朝とか。他にもいろいろあるだろ。星野が不安になるのは、綾部が星野の気持ちに答えないからだろ。付き合う気がないなら、はっきり星野に言えばいいのに。それもひとつの優しさだろ。」


「何それ?その言い方だと俺が咲良のこと好きじゃないと思ってる?」


「・・・見てたら誰だってそう思うと思うけど。何年も好きって言われてるのに、付き合ってないし。普通星野みたいに可愛い子に告白されたら、グラッとするはずだろ。俺だったら・・・」


「神埼。ストップ。それ以上言うとグラウンド100周させるよ」


100周という言葉にひきつる神埼。笑える。まあ、俺は部長だし、冗談じゃなく勿論本気で言ったけど。部長権限で走らせようと思ったんだけどな。残念。


咲良が可愛いことは、俺だけが知っていればいい。

そして、咲良を誰かに譲る気はない。

咲良を特別に思っているのは、事実なのだ。


咲良が俺の特別になったのは、幼稚園時代に遡る。


いつもヘラヘラ笑って変なやつ。それが咲良の印象。バカだから、傷付けるようなことを言ってもすぐ忘れる。そして、どんなに拒絶しても俺の後をついてくる。正直うんざりしてた。咲良なんて嫌いだった。


ある日のことだった。咲良のお母さんと俺のお母さんが迎えに来るのが遅くて、咲良と2人になった。大嫌いな咲良と2人なんて嫌だった俺は教室の隅で童話を読んでいた。


来るな、来るなと心で思っても、咲良はやっぱり俺の側に来て、

「何読んでるの?」と聞いてきた。


「『うさぎのりこん』って話」


今思うと何で幼稚園にそんな本があったのか謎だが、タイトルの印象とは違い、中の話は子ども向けの優しい話だった。


なぜこんなタイトルの本を取ったのかというと、昨日お父さんとお母さんがケンカして離婚するって言ってたから。

最近は顔を合わせるとすぐにケンカしてる。

前は気を使って、俺の前ではケンカしなかったのに、最近は気を使う余裕がないのか、家の中はギスギスしてた。


「りこんって何?」

無邪気に聞いてくる咲良に腹が立って、やけくそに答えた。


「俺のお父さんとお母さんが別れるってことだよ。」


「別れるって、陽くんのお父さんとお母さんが離ればなれになるってこと?悲しいよ。」

ポロポロ泣く咲良。人の為に泣けるなんてバカな奴って思いながら、少し可愛く感じたんだ。


「なんで陽くんのお父さんとお母さんが別れるの?」


「分からないけど、いつもケンカしてる。離婚だって叫んでる」


「そうだ。ケンカしてるなら仲直りしちゃえばいいんだよ」

ひらめいちゃったと何故かどや顔する咲良。


「・・・どうやって?」


と俺が聞くと、深く考えてなかったのか咲良のどや顔は一瞬にしてなくなった。

うーん、うーんと小さい頭を悩ませる咲良。


「仲直りしてって陽くんからお願いするの。」


俺はため息しかでなかった。

「そんなことで仲直りなんて出来るわけないだろ。」


「じゃあ、陽くんはお父さんお母さんにちゃんと自分の気持ちを伝えたことある?」


「・・・」


「あのね、お父さんが言ってたけど、ケンカした原因ってちょっとした誤解っていうのがあるんだって。とことん話あって、陽くんの気持ちを言えば、きっと大丈夫だよ。」


ニコニコ話す咲良に呆れた。だけど、思い直した。


確かに俺の気持ちなんて言ったことない。いつもケンカしてる2人を見て、これからどっちについていけばいいのか考えてた。


もしかしたら、俺にも出来ることがあるんじゃないか?


その後、俺は子どもの特権を使い、暴れて、叫んで、泣いて、最後にお願いした。

結果、2人は仲直りし、ラブラブな夫婦になった。今までギスギスしていたのが信じられないくらい温かい家庭になった。

1年後、弟が生まれ、俺は念願の兄弟が出来た。


咲良のくせにってムカついたけど、あの日のことは感謝してる。


咲良はあの日から俺にとって特別になった。


ただ残念なのは、俺にとって大切なあの日のことをバカな咲良は覚えていないのだ。




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