終わらない冬と彼女のいない夏
初挑戦です。感想よろしくお願いします。
この世界から彼女の歌が消えて何度目かの夏が来た。
この世界から彼女の歌が消えたあの日。
街で一番大きな公園の桜並木から最後の花びらが散った夜の匂いを僕は忘れない。
あの花びらが空の何処かに消えた次の日、世界は彼女の歌を失った。
僕はあの花びらを、あの夜を忘れない。
いや、正確には忘れたくない。
これは、一人の普通の女の子の物語。
そして、彼女を忘れないためにと慣れない筆をとった僕の物語だ。
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去年の冬は、寒かった。
どれくらい寒いかといえば、高校生になるまで一度も見ることの無かった雪が十一月末には街を覆いつくすほどに寒い冬だった。
早朝には、薄氷を砕きながら何処かへと向かう人たちの足音がざくざく・・・ざくざくと鳴る。
夜には、深々と降る雪が空気をぴりぴりと鳴らす。
そんな日が何日も続いた。
NEWSは覚えたての言葉みたいに「異常気象」を繰り返し、交通機関は幾日も麻痺を続けていた。
学校も再開の見込みは立たずに、自宅のPCやスマホを使ってのテキストのやり取りがあるだけ。
クラスのSNSのグループチャットは、「退屈」に埋め尽くされて今朝からは通知すら届かない。
みんなそれぞれに誰かが新しい話題を提供してくれるのを待っていた。
僕も、その一人だった。
そんな冬のある日。
彼女の歌が、聴こえた。