トラブルの気配
倒れていたせいで久しぶりの学院にて過ごしたけれど、どうやらそこまで変わりはないみたいだ。
レティシア様はいらっしゃらなかったけれど。
体調を崩して療養のためにトーラス公爵が領地に戻らせたという噂になっている。ちょっとだけだけど、私のことがあるから娘が巻き込まれないように無理やり引っ込ませた、って可能性ない……?
誰だってあの陛下に目をつけられたくはない。陛下が知っているかまでは分からないけれど、あの魔導具を見るにおそらく火の妖精王様から加護を頂いているようだし。
それでいうとクリス様だって愛で子認定されているのですからもうそこら辺満足して欲しいのですけれど。王家に力が集まり過ぎている気もするし。
……三王子共、陛下に好きにされる性格していないな。もしや、その辺りが関係しているのかしら。
お父様曰く、私ってば「捕まえてしまえば逃げられない」から取り込まれようとしているわけだし。
お家に帰ると、知らない馬車が停まっていた。何かしら、と思いながら裏口へ回るように指示を出す。
裏口からこっそりと入ると、「早く御息女を王宮へ」と言う城からの遣いがいた。
え、なんで?と思っていると、お父様が「理由は何かな」と告げる。
「王子妃候補の筆頭である御令嬢を招くことに何の理由が必要なのでしょうか。候補の一人をそちらの御令息が既に娶ってしまったとの事も問題ですよ」
「おかしなことを言うね。彼女は息子の婚約者だ。この不安定な情勢で婚姻が早まるのはおかしなことではないはずだよ」
「しかし……!」
「彼もどれだけ私たちを馬鹿にすればいいのだろうね?娘を強引に寄越せと遣いを出し、息子の婚約者を連れていこうとする。君は自分の子がそうなった時に迷わずあれに差し出せるのだろうねぇ?いやはや、その非人道さ、少し羨ましいな」
こんだけ怒ったお父様早々見ないのだけど。
振り返ると、バベルが難しい顔をしていた。
「この国、一度滅びて作り直した方がまともになるかもしれませんね」
そう呟いた彼の言葉がちょっとだけわかってしまうのが嫌である。何にしても、私の場合は貴族でなくなった場合生きていけるのかに大いに疑問があったりもする。
けれど、もしこの横暴が多くの民にまで大きな被害を齎すものだとしたら、許されざることだろう。
いっそ私が死んでしまえば、王家は我が家に手出しできなくなるのだろうか。
そんな事を少しだけ考えて首を横に振る。
家族が大切にしてくれている命をどうして捨てられようか。
「それにしても、急いで帰って行ったと思えば婚姻まで済ませてしまったなんてヒュバード様はやる事が早くて情熱的でいらっしゃる」
そういえばそんな事言ってた!!
エンディングで言うセリフも何もヒロインもうエンディング迎えちゃった感じじゃん!!