帰還した長姉
「だから常々言っていたでしょう。フィンは色ごとに疎すぎます。箱入りも大概になさいと言ったのに言うことを聞かないアル達にも責はありますが、あなたのように世俗に疎い子が未来の王妃だなんて悪夢です。王太子妃はやめておきなさい」
ぴえん。
リリィお姉様厳しい。
でもど正論ですね!!
「……あなたが進んで尊い方を籠絡したわけではないと言うこともわかってはいますよ」
その言葉に思いっきり縦に首を振ると、「淑女の行動ではなくってよ!」と怒られてしまった。しまった。久々にやっちゃった。リリィお姉様はお母様より厳しい。
というかお父様もお母様も、あとお兄様達も基本装備が甘やかしと過保護なのです。それが許されてきた末っ子三女で申し訳ない。
とはいえ、多分教育自体は負けないくらいスパルタにされた。もうなんかあれ王子妃になるの前提だったじゃん。
「このような情勢ゆえ余計にフィンが求められるのはわかっていますけれど、良い気分ではないわね」
「……魔族というものの出現でしょうか?」
「ええ。知ってはいると思うけれど、この国は一番アレらによる被害が少ないのよ。理由の一つがリオンハルト殿下による結界術、そしてもう一つが幼いあなたとレオナールが発見した妖精石なるものの普及です」
そう。レオお兄様と昔に文献をひたすら漁って見つけたあの力は、現在の各国における魔族や彼らの生み出し、操る魔物との戦いにおいて対抗策の一つとして数えられている。
主に数の少ない光の魔法使いの結界や治癒術、闇の魔法使いによる浄化が利用しやすくなり、これによって戦術の一つとして組み込むことが容易となった。
その中で逸早く扱いが可能になった我が国では比較的被害が小さくなっている。
「優秀だけれど偏屈なレオナールもフィンと一緒ならば害が少なく使いやすい。あなたを王子妃として人質に取っていればお父様やアル達の扱いも容易。そういう考えもあるでしょう」
「利用価値、というものはやはりそういうところにもあったのですね」
予想していなかったわけではないけれど。
お父様やお兄様達に対する枷となりたいわけではなかったのにと思ってしまう。
「フィン。常に最悪を想像して動きなさい。今の状況を考えると慎重すぎるくらいが丁度良いでしょう」
真剣にそう言ったお姉様に「はい」と頷くと、優しく抱きしめられた。
やっぱり、私のお姉様はとても優しい。