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目覚め



目が覚めたらお家でした。なぜ?

枕元の呼び鈴を振ると、ドロシーがめちゃくちゃ泣きながら入ってきた。どういうこと。怖い。



「お嬢様!痛いところや苦しいところはございませんかっ!?」

「な、なくってよ」



勢いがすごい。もう一度振って別の人を呼んだ方がいいかしら、と思っていると控えめにドアを叩かれた。それに「入って」と言うとやっぱり思ったより掠れた声が出る。

入ってきたのはバベルだった。



「お嬢様、目が覚められたようで何よりです。旦那様にも使いをやりました。奥様ももうすぐこちらへ来られるそうですのでそれまでゆっくりなさってください。何か必要なものはございますか?」

「そうね。お水を頂ける?」



聞かれたので答えれば、ドロシーが顔も拭かずに走っていった。猛ダッシュである。



「あれはリズベット様にまた怒られるやつですね」

「気持ちは嬉しいのだけどね」



咳をすると、「三日も眠っておられたのです。ご無理はなさいませんよう」と言われて顔を上げる。えっ?みっか?さんにち?



「魔力をあれだけ消費したせいですっからかんになっちゃったの。それで、その回復に三日かかったのよ!」



ベルが頭の上からそう言ってきてなるほど、と納得した。なんか尋常じゃない数の怪我人いたものね。何人かバベルが追い出していたけれど。あれって他の人が治したのかしら?


リズベットの怒った声が聞こえてきて、別のメイドが水を持ってきてくれた。やっぱりか、という顔をしたバベルに苦笑する。

お礼を言って受け取ると、お母様が血相を変えて部屋に入ってきた。



「フィン、怪我は!?気分が悪かったり苦しかったりといった症状はなくって!?」

「お、お母様大丈夫ですわ。わたくしの妖精が言うには、魔力の枯渇で回復に時間がかかったようですの」

「本当?とりあえず医師を呼んでいるけれど」



誘拐以来の取り乱したお母様をなんとか落ち着かせた後、次はお父様が文官たちを引き連れて帰ってきたのが見えた。門のところで氷を張って追い払われた文官たちは肩を落として馬車に戻っていった。途中で馬凍らされなかっただけマシだと思って欲しい…。下手したら、馬が足を怪我して使い物にならなくなるものね。



「相当引き留められていたようですね」

「ギルが居なければ回らないのなら、そんな国は国として機能していないのよ。放っておけば良いわ」



いつになく冷たい声音のお母様の背中をよしよしとさすり続ける。落ち着いて欲しい。娘は一応無事です。



「戻った」

「おかえりなさいませ、旦那様」



目線一つで使用人を下がらせたお父様は、お母様に優しい目を向けた。



「任せてすまなかった」

「いいえ、家の中の事はわたくしの仕事ですわ」



二人並んでる姿が一層尊い。これが実の両親でなければ泣きながら拝んでいると思う。

お父様の意識がこちらに向いて、私と目線を合わせるように座った。



「フィン。三人の王子の中で一番好きなのは誰だい?」

「い、いきなりどうしましたの!?」


「王命が降った」



忌々しげに吐き出された言葉に問いの意味を理解する。

寝ている間に何があったというの。

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