医療班、奮闘
国軍が来たのでさっさと陛下を個室に閉じ込めてもらって、生徒のほとんどはリオン様主導の元学院校舎に帰らせた。
おかげで広間がまるっと使える。
「重傷度で順番をつけてエリアを分けて。重傷者から順にみます」
金を払うから、なんて言うやつも容赦なく該当エリアへ向かってもらう。「後で治すから足を折っても構わないかしら」と呟くと、「そういう時のお嬢様は公爵令嬢だなぁと思います」だなんて言われたけどバベルあなたどういう意味かしら。これってわがままじゃないと思うんだけどな!
「フィン」
「お父様!ご無事ですか!?お怪我は……」
「私は大丈夫だよ。フィンは疲れてはいないかな?」
「大丈夫ですわ!ここにいる治療班がぶっ倒れてでも全員治す覚悟でしてよ!!」
「言葉遣いが荒いよ」
「申し訳ございませんわっ!言うことの聞けない悪い子が思ったより多いんですの!お父様が来てくださったので気分が上がりましたけれどわたくしもそこそこ腹を立てているのですわ」
「……そうか。フィン、言う事を聞かない者は治療しなくて良いよ」
にっこり笑顔でそんな事を言うお父様だけれど、そういうわけにもいかないんじゃないのって思ったら、耳を塞がれた。振り返った顔は見えない。
「バベル」
「はっ」
「フィンの言う事を聞かない者は患者ではない。どんな怪我をしていようと、外がどんな状況だろうと……放り出せ。治療するだけ無駄だ」
ようやく耳から手が離れたと思ったら、周囲の人たちの顔が真っ青だったし、バベルは「しかと拝命いたしました」としれっと口に出した。何を?
「フィン、言う事を聞かないものの扱いはバベルに任せなさい。治療を頼むよ」
「はい!お父様のためですもの!」
お父様カッコいいー!いや正直一番好きなお父様はお母様の隣にいるお父様ですけれど!!末っ子らしくそこそこ甘やかされているのでその分働きますわ!任せてくださいお父様!!
「フィーネ様、重傷者の治療をお願いいたします!」
「はい」
痛そうな傷を見るのはすっごい気が滅入るけど頑張ります。
……ご飯食べれるかな。
必死に治療をこなしていく。流石に欠損部位がある方はもう居ない。
あれを怪我として治すのとっても魔力を持っていかれるのでやめてほしい。なるべく治すけど。
「バベル、魔力ポーションはまだあるかしら!?」
「これが最後になります」
人間としては桁違いの魔力を持っている愛し子の私でも流石に欠損部位を治す治療も含んでいれば魔力が無くなるのを感じる。
受け取ってぐいっといくと涙目になるくらい苦かった。あと臭い。この手のお薬、生きている間に改良したいわ。
そうやって治療を進めていって、最後の患者を見終わった瞬間倒れた。
「ありがとう。よく頑張ってくれた」
お父様の声が聞こえた気がした。眠る前の声としては最高です。