続・学院祭見学
劇はまあまあ盛況に終わったけれど、「フィーネ嬢が大根だったな(意訳)」は納得いかない。なお、クラスメイトはやり切った顔をしていた。
「みんなのフィーネ様の評判を下げるなんてできませんものっ!」
意味がわからなかったし、いつの間に私はそのみんなのフィーネ様になったんだろう。あと、こっちの方が評判を下げていないかしら。
突っ込んでも詮なきことである。
そんなことで出番のなくなった私たちは着替えて再度学院祭を見て回っていた。
今回はクリス様が一緒である。
何かあっても対処はバベルがしてくれるので安心安全だ。私の護衛はいつも優秀である。
髪だけが縦巻きロールのままだけれど、クリス様が「君の髪はどんな髪型にしても美しく映えるね」っていうから良いかなって!ちょろいな、私。
私の髪への拘りは、私よりもお母様の方が強かったりする。「せっかくギルと同じ美しい髪なのですもの」と嬉しそうに笑うので好きにしてもらっている。お父様はストレートだけど私の髪は割と癖っ毛なので色以外似てないと思うんだけどその辺りはスポーンと頭から抜けているのか、色艶が同じならば癖っ毛かストレートかは問題でないのか、どっちだろう。
私は美少女極めてるクリス様の美しさの方がすごいなって思うんだけれど。
学院祭に来る人は多く、気を抜くと流されそうになるけれど、時折クリス様やバベルが手を引いてくれるのでなんとかなっている。
屋台で食べ物を買ったり、もう少し楽しげなところに行きたい気持ちはあるけれど、それは私には許されない。
公爵令嬢だからではない。安全面で不安が大きいからだ。
一緒にいるのがクリス様であるからか今日は特に色々しようとしている連中がいる。クリス様は爵位とかどこの人間かをメモにとらせていたが、その数に辟易していた。
「フィーネ様、敵が多すぎるのではなくって?」
「本意ではありませんわ」
お父様を引き摺り下ろしたいやつと、私を王子妃候補から何をしてでも引き摺り下ろしたいやつと、特殊性癖の連中のこととか知ったことではない。
それはともかくとして、クリス様はこんな格好をしているが王子様なので、やらかした連中から連行されている。誰もついていない、なんてことは当然ないのである。あと普通にバベルたちもいつも通り捕まえ次第突き出している。そろそろ懲りてほしい。
というわけで仲良く展示巡りをしているのだけど結構楽しい。魔法陣の研究なんかはあとでレオお兄様に解説していただきたい気持ちもあったりする。
長期的に持続する魔法の仕組みについては多少の興味があったりするのだ。
「この効果がしっかりと判明すれば、魔物の多い土地の民を守ったり、緊急時に命を救うことのできる民の数を増やせるかもしれませんね」
「特に光魔法使いの結界を各地に展開できれば、有効性は大きいかもしれません。彼らの数はどうしても他の属性よりも少ないので派遣が難しい事もありますしね」
最近は魔物の襲撃が非常に多くなった地域もあると聞く。特に、グリンディア侯爵領は急激な魔物の増加で修道院の一つがのまれたと聞く。そこで働く修道女たちの多くが犠牲となり、凄惨な光景が広がっていたらしい。
そのような土地や、身を守る術の少ない人たちが集まる場所に高出力の結界をはれるようにできれば、きっとそのような事は少なくなるだろう。
「とはいえ、長期的な効果が実証されるまで研究を続けるしかありませんわね」
クリス様の言葉に同意の言葉を返した。
そう、そこまで長い期間持つ魔法陣はまだ少なく、実用に足るほどではない。近年、大分長くなってきたが、使う魔法使いや使用する道具などに左右される場面がまだ多いのだ。
そういった展示を見ながら寮に帰ると、ローズお姉様が先に戻っていた。
「クリスティナ様と話しているところを見たけれど、随分と難しい事を話しているのね」
確かに、色気も何もない会話である。
で、でもいつかどこかで役に立つかもしれませんことよ!!