学院祭開催
いよいよ学院祭だ、と飾り付けられた校舎を見やる。浮かれた空気は前世も今も変わらないように思う。
演劇も出店も、二日のうちどちらかが割り振られていて、私たちは二日目だ。
その次の日に剣術の大会と後夜祭がある。それは、ヒューお兄様とハルヴィン様の重要イベントでもある。ここまでに親愛度が規定量溜まっていればこの二人はヒロインのためにみんなの前で剣を捧げてくれる。ハルヴィン様がサラッと夏季休暇に婚約を白紙にしてきていてゲームやった時に「お前婚約者おったんかい!?」ってなったけれど、今は婚約者といい関係性を築いているのでよかったです。あと、ヒューお兄様は絶対予想の上をいく感じで剣を捧げるのが想像できてしまう。ミーシャさんがんばれ。
学院の見学日が二日に分かれているのは、来客だけでなく私たち生徒も学院祭を回れるようにとの事でそうなっているらしい。貴族が通う学校だけあって警備が大変だと思うけれどありがたい話である。
お姉様を見に行けるものね!!
るんるんとお姉様の教室に行こうとしていると、クラウス殿下とアルお兄様に捕まった。クリス様はそっと離れていった。
「首根っこは酷いと思いますお兄様」
「私たちの顔を見て逃げようとした可愛い妹の顔をよく見てやろうと思っただけだよ」
だってお兄様この間理不尽な怒り方したもの。家であれば頬を膨らませてお父様の後ろに隠れるところだけれど学校なので自重します。私は淑女。
あとクリス様のタイミング完璧すぎた。なぜ私も連れて行ってくださらなかったの…!?
「だが、猫ではないのだから……」
クラウス殿下がそう言って苦笑すると、アルお兄様は「これは子猫のようなものですので」と溜め息を吐いた。子猫のようなものってなんだ。アルお兄様もしかして子猫ちゃんとか言うお色気枠デビューしようとしてる……?お兄様それは全国のお兄様ファンが死んじゃうのでやめとこ?
「何を考えているかは知らないが、お前に心配されるようなことはない」
「そうですか?」
まぁ、アルお兄様もなんでもうまくやるタイプだからいいんだけれど。
お兄様に並ぼうとすると、クラウス殿下が袖を引いてきた。何かな、と振り向くと彼は柔らかく微笑んで「私のクラスの店を見に来ないか?」と言った。
「まさに今から行くところですが……」
「そ、そうか!」
「はい!お姉様の作ったアロマキャンドルはまだ残っているでしょうか?きっとお姉様に相応しい優美な香りがするに違いありませんわ!お姉様のセンスは抜群ですのよ!!」
「……そうか」
トーンが下がった。なぜかしらと首を傾げると、アルお兄様が「ローズに勝てるのなんて父上くらいなものですよ」と言った。えっと。なんの話?好感度?
「あら、フィン。やっぱり来てくれたのね」
ふふ、と微笑むローズお姉様は花の精が如く美しい。私のお姉様イズNo. 1。
「フィンのために置いておいたのよ?」
そう言ってお姉様はアロマキャンドルを3本取り出した。なぜ3本?と思いつつもお取り置きに感謝していると、後ろで「ミーシャ、君を思って作ったんだ」と自作のアロマキャンドルを差し出しているヒューお兄様の姿があった。「ヒュー様、私たち同じクラスよ。知っているしすでに何本か貰っていますよ」とミーシャさんは苦笑しながらそれでも受け取っていた。優しい。
「ヒューはまっすぐよねぇ」
微笑ましげに見るローズお姉様は女神のような美しさである。今日も私の推しが尊い。
「ロザリア嬢に勝てる気がしないんだが」
「それは殿下の頑張り次第では?」
ヒュバードはくっついても押せ押せ。