新学期
夏の暑さも落ち着き、私たちも学院に戻ってきた。
暑さもマシになってきたとはいえ、まだ照りつける太陽の暑さはキツい。
朝一番からラブラブオーラを発し続ける我が兄姉もキツい。
「おはようございます!フィーネ様!!」
「おい、走るなセーラ。転んだらどうする」
「まぁ、コリーったらお兄様みたいな事を言うのね?」
「君が少しでも損なわれるなんて俺には耐えられないからね」
朝からカップル軍団絶好調である。胃に重い。
なお、セーラは結局夏期休暇中に婚約した。それからというもの、ゼファード侯爵家で未来の侯爵夫人としてのお勉強をしながらイチャイチャしているらしい。
なんというか、ちょっと居た堪れない気分になる。
とはいえ、恋愛に関していえば私が鈍いのが悪いらしいので口出しも野暮だろう。
にっこり笑って「おはようございます。良い朝ですね」と言った。
「あら、フィーネ様とセーラ様ではありませんか。おはようございます」
「おはようございます、クリス」
優雅に登場した友人にホッとする。クリス様は女生徒(仮)なので婚約することはまずない。イチャイチャを見ることもまずない。
けれど。
(あら、なぜ“ホッとする”のかしら?)
安心する、と言うことであっているのかな?そういうことにしておこうと思う。
連れ立って寮に向かうとクリス様も使用人が入れる寮へと変わっていた。流石にもう女の子と同室はいくらなんでもキツいと気付いたのかもしれない。
いや、私じゃなかったらバレた瞬間婚約決まるもんね。クリス様の責任として。
だいたい陛下のせいらしいのにと考えると非常に可哀想である。あとちょっと?もやっとする、かも。
「どうかしましたか?フィーネ様」
「いいえ」
心配そうにそう聞いてくるクリス様に否定の言葉を返して微笑んだ。
「お前たち、早く行け。いつまでも仲良くここで立ち止まっているのも迷惑だろう」
アルお兄様がレイを伴って呆れたように言う。レイはあの日の表情の豊かさが嘘かと思うほど表情が無である。
こうしてみんなが集まってくると、学校に来たなーって感じがする。
学院生活後期始まりです。