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届かぬ願い

可哀想な表現有り。




「何度も言っていたでしょう!?アルヴィン様は諦め、フィーネ様には手を出すなと!!」

「落ち着け、ミランダ」

「これで落ち着ける時期は遠にすぎておりますわ、旦那様。なんて…なんてこと。わたくしたちがあなたの為を思って必死に取り付けた公爵家からの慈悲を、よりにもよってあなた自身が反故にするなんて」



怒ったり泣いたり忙しいことだ。

お母様を慰めるようにお父様がその背を撫でる。

納得いかないわ。お父様たちが不甲斐ないから娘のわたくしがこんなにも屈辱的な目に遭っているというのに。


夏期休暇で王都のタウンハウスへ戻ろうとすると、お父様の部下や侍女たちが馬車へ押し込めてきて、領地に連れ帰られた。わたくしは夜会でアルヴィン様の隣に立つはずだったのに。あの連中には罰をくれてやらなくては。

見苦しくもやつれた様子の両親は怒るか泣くかしかしなくてうんざり。早くわたくしをアルヴィン様の元へ返してくれないかしら?



「エメルダ。グレイヴ公爵家とアルヴィン様よりお前への苦情が来ている。せめて学院くらい卒業させてやりたかったがこうなっては退学させるしかない。わかるだろう?」

「はい?何故ですの?わたくしほどあの方に相応しい女はおりませんわ。排除するならあの忌々しい子どもでしょう」

「お前がそう呼ぶ女性は、お前が好きだと言う男性の大切な妹だという自覚をなぜまだ持てない。……他国にでも嫁にやれば、と思っていたがそれではもう無理なようだな。ミランダ」

「はい、あなた。覚悟は出来ております」



生意気にもキツい目でわたくしを見る両親を鼻で笑う。

女性として完成された美を持つわたくしがあの小さい小娘以下の存在と比較すること自体が間違っているのよ。



「領地の奥にある修道院へ行け。二度と社交界に戻ることは許さん」

「そんなこと、おばあさまが許すはずが」

「それなら蟄居させた。あれは毒にしかならぬようだったからな」



なんで、と口に出そうとすると机を強く叩かれた。

わたくしが嫁に行かぬのなら、跡取りはわたくしのはず。ハッタリでしょうと睨みつけると、「後継はルヴィアにします」とお母様が言い出した。



「あんな地味で何にも出来ない子が領主になんてなれるわけないじゃない」

「視野が狭いこと。お前が男を追いかけている間にあの子はお前が修める筈だった学問を全て修めています」



妹のくせにわたくしのものに手を出そうなんて、許せないわ!

身の程を弁えさせにいかなくては。


そう考えていると、父の部下がわたくしを囲む。お父様の「連れていけ」という命令でわたくしは即座に修道院へ押し込められた。




領主の娘で次期領主のわたくしに対しても修道院の人間は平民と変わらぬ対応を取る。


わたくしをこんな目に合わせるなんて!

これも全部あの女のせいよ!














自らの身に起きたことを他人のせいにする少女は気が付かない。己の妖精が苦しそうに訴えていることを。

他の妖精が聞けばさぞや悲痛な慟哭を上げていただろうその存在は、段々と黒に染まっていく。


助けて、というようにその近くに行く妖精をエメルダは「邪魔よ!」と叩く。強い力で叩かれた妖精は壁にぶつかってそのまま全身を黒く染め上げた。

その妖精の最期の声は彼女には届かない。



「なにこれ、気持ちが悪い。治るまで近づくんじゃないわよ」



気遣うわけでもなく、エメルダはそう言ってのけた。

それを窓の外から見ていた存在は楽しそうに笑って窓辺に美しい宝石のようなものを置いた。

その日の晩、窓を開けてその存在に気がついたエメルダは美しいそれに気づいて懐に収めたが、数日もすればそれは初めからなかったように消えた。


それと時を同じくして。

グリンディア侯爵領では魔物が増加し出し、それを皮切りに各地に高難易度未踏破ダンジョンや強い魔物、そこには存在しなかったはずの魔物の出現が確認され始めた。



───斯くして、黒き種は撒かれた。

その頃、ミーシャ(男爵令嬢)もキレた親に勘当の上修道院に放り込まれてます。

「こんなはずじゃなかったのにーーー!!」と叫ぶ彼女は教会のベテラン修道女に「うるさいですよ」と拳骨をくらうし紫色の蝶々の妖精がひらひらとその上を飛んでいるし、夜は妖精に向かって泣き言を言っています。

残念な転生者ですが、妖精とはそれなりに仲が良いのと「ここって夢じゃなくて現実なのだものね」と段々と反省してくるので多分ちょっと先の未来で出れます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 反省ができない子のせいで領地が酷いことになってしまった侯爵家と現実が認識できて反省できた彼女の違いですかね。
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